第167回 エピソードで振り返る『クリィミーマミ』6
47話「マミのファーストキス」(脚本/島田満 絵コンテ・演出/立場良 作画監督/河内日出夫)は、映画撮影の話だ。マミの次回主演作「ブルーメアリの伝説」では、キスシーンが予定されていた。立花はこの映画で、彼女をラブロマンスも演じられる本格的タレントとして飛躍させたいのだ。優はまだキスの経験がなく、仕事でファーストキスを経験したくないと思い悩む。クライマックスで、撮影中に事故が起きてマミが川に落ちる。それを助けるために俊夫が活躍。ドタバタの中での事故によるものではあるが、マミと俊夫は唇を重ねる。
この話の中盤で、映画でキスする事に不安になっていた優が、夜遅い時間に、ダイニングルームに行く。すると、寝間着姿の哲夫となつめが抱き合って口づけをしていた。それを目撃した優は、夜道を走って俊夫の家まで行き、彼に、やはりファーストキスの相手は好きな人でなくては嫌だと告げる。このシチュエーション自体は、大層面白かったのだけれど、エピソード全体としては、もう一押し欲しかった。「ブルーメアリの伝説」は童話の世界を舞台にしているのか、ドラゴンが登場する。マミが川に落ちた時に使った魔法のために、撮影用の作りもののドラゴンが動きだす。それはいいのだが、肝心のキスの次のカットが、ドラゴンのアップで、ドラゴンが怪獣のようにガオーと鳴くのだ。キスの直後にガオーはないだろうと思う。『クリィミーマミ』は魔法少女ものではあるのが、どこか男の子向け作品のニュアンスがあり、怪獣ネタが多い(特撮セットでの変身、ゴジラの着ぐるみを着たチビ優、オジラ。他にもある)。そういう男の子っぽい照れが出てしまって、キスの直後がガオーになってしまったのだろう。
48話「優とみどりの初デート!」(脚本/伊藤和典 絵コンテ・演出/玉野陽美 作画監督/遠藤麻未)は、如月みどりと優がデートをする話。ここまで一度も名前を出していなかったが、如月みどりは、俊夫の同級生で、1話から登場しているレギャュラーキャラだ。大柄で太っており、のんびり屋と言えば聞こえがいいが、決して利発なタイプではない。優に対して熱烈に片想いしており、また、彼女を神聖視しているところがある。オープニングテーマ「デリケートに好きして」で、女の子にあるのは好きか嫌いだけであり、その間の普通はないと太田貴子が歌っている。好きか嫌いかの二者択一なら、彼は嫌いと言われるタイプだろう。正直言って、あまり他人とは思えないやつだった。
優にとって、彼は恋愛の相手として対象外だった。「優とみどりの初デート!」で、優とデートできる事になったのも、俊夫とケンカした彼女が、あてつけに誘ったようなものだ。みどりは優とデートができるのは嬉しかったが、デートの仕方が分からない。気合い入れすぎでトンチンカンな服を着てくるし、デート中も何を話したらいいのか分からない。心細いので、年下の守に頼んで、ついてきてもらう始末だ。痛い。これは痛い。結局、みどりはデートの途中で、つけてきた俊夫に優をゆずってしまう。デートを通じて、みどりは、優は俊夫が好きなのを確認しただけだった。救いのない話で、何となく釈然としなかった。実はみどりに対する救いは、最終回エピローグに用意されていた。僕は「優とみどりの初デート!」を観て不満を感じたけれど、それはシリーズ構成に乗せられていたわけだ。
46話「私のすてきなピアニスト」でマミの恋を描き、47話「マミのファーストキス」でマミと俊夫が口づけした。48話「優とみどりの初デート!」では、みどりが身を引く事で、優と俊夫とみどりの三角関係が解消される。最終回に向けてイベントを消化し、人間関係を整理しているわけだ。立花家での宝探し騒動を描いた49話「潜入!立花さんちの秘宝」を挟んで、最終回3部作に突入する。
第168回へつづく
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