アニメ様365日[小黒祐一郎]

第198回 『とんがり帽子のメモル』40話、44話、最終話

 38話でサンロアーヌ学院は冬休みになり、そこに至るまでに紆余曲折はあったが、メモルはリルル村に戻り、マリエルとオスカーもそれぞれの山荘に戻った。ここから50話の最終回までは、リルル村での描写も増えて、シリーズ前半の雰囲気に戻る。正直言うと、その38話以降の内容も、全体として焦点が絞りきれてないところはあったのだが、それでもサンロアーヌからメモル達が戻って、僕は一安心した。
 この時期のエピソードで印象的なのは、40話「金の星降ります」(脚本/雪室俊一、作画監督/只野和子、演出/葛西治)。これはリルル村の大人達が大きなボートを作って、マリエルとオスカーをリルル村の星祭りに招待するというもので、挿入歌の使い方も素敵。クリスマス時期の放映に相応しい一編だった。44話「ポピットが家出!?」(脚本/鈴木悦夫、作画監督/名倉靖博、演出/貝沢幸男)はポピットのリルル星への想い、彼のきまじめな人柄を描いた好編。冒頭に、ポピットと父親のフォルテンが朝を迎える場面があるのだが、光の描写も、色遣いも、美術も素晴らしい。貝沢&名倉コンビらしい詩的な場面だ。
 最終回に向かう終盤の展開は、首をひねるところが多かった。45話でグレイスが交通事故に遭い、記憶喪失になってしまう。そして、47話でグレイスの記憶喪失がすでに治っている事が分かり、彼女は、自分が心の底からオスカーの事が好きであると、メモルに打ち明ける。その事を知ったマリエルは身を引き、オスカーはグレイスの気持ちを受け入れてしまう。え? なに? この展開? その後、グレイスが今までとは別人のような、優しい娘になってしまったのにも驚いた。
 改めてDVDで観返してみたが、オスカーは、マリエルとメモルのよき友人ではあるが、マリエルに対して友人以上の感情を抱いていたかというと、実は微妙だ。女の子よりも宇宙人の方が好きな、子どもっぽいところのある少年なのだ。マリエルはオスカーに対して淡い気持ちは抱いていたが、それほど関係が深まっていたわけでもない。だから、オスカーがグレイスを恋人にした事は、物語世界内でのリアリティとしては、おかしくないのかもしれない。ではあるが、ヒロインと二枚目の男の子が仲よくしていれば、いずれくっつくだろうと思うのが人情だ。観ているこちらとしては、やはり納得できない展開だった。
 最終回である50話「さよならメモル」(脚本/雪室俊一、作画監督/野部駿夫、演出/久岡敬史)はさらにガッカリする内容だった、リルル星から迎えが来て、メモル達がリルル村に帰る事になる。メモル達はマリエルに最後のお別れをした。それで旅立っていったかと思ったら、ラストでメモルやポピット達が、ひょっこりとマリエルの山荘に戻ってくる。彼らは具合が悪くなってしまったマリエルを助けるために、地球に残ってしまったのだ。なんでやねん! とブラウン管に突っ込まないわけにはいかなかった。同じ地球に残るにしても、もう少し説得力のあるドラマにしてくれればいいのに。最後のシメのナレーションは、あなたの近くにメモルがいるかもしれませんよ、といった内容のものだった。えっ、メモルはマリエルが元気になった後も、リルル星に帰らなかったの? お母さんには会わなくていいの? なんだかなあ、と呆れるばかりだった。
 シリーズ中、一度もマリエルの前に顔を出さなかった彼女の父親は、最終回になっても登場しなかった。明らかに不自然な扱いで、ひょっとして登場しないのは、何かの伏線なのかと思っていたがそんな事はなかった。シリーズ後半と最終回については、次回、もう少しだけ触れたい。

第199回へつづく

とんがり帽子のメモル DVD-BOX

カラー/11枚組/片面2層/4:3
価格/60900円(税込)
発売元/東映アニメーション、フロンティアワークス
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(09.08.27)