アニメ様365日[小黒祐一郎]

第217回 『GU-GUガンモ』その3 26話B

 7話Bの後も、井上俊之とスタジオジュニオはローテーションで参加し、見どころのあるエピソードを残している。その中でも、作画マニアの注目を集めたのが、26話B「リンダVSブリッコ!! ついにきた 運動会」(作画監督/井上俊之、演出/永丘昭典)だった(注目を集めたと言っても、作画マニアの中でも『GU-GUガンモ』に注目していた人達が、どのくらいいたかは分からない。マニアの中でも多数派ではなかったはずだ。ただ、この作品をチェックしていたマニア達の間で、一番話題になったのがこの話だろう)。
 タイトルどおり、運動会の話であり、リンダ、あゆみ、そして、クラスメイトの松任谷弓子(ニックネームは納豆屋)がメインとなる。あゆみと松任谷はライバル関係にあるのだが、生意気なリンダにギャフンと言わせるために、2人は手を組む事になる(このあたりで、あゆみはすっかり腹黒キャラになっている)。次にリンダが出場するのはミクストレース(二人三脚の障害物競走)だったが、半平太が足をネンザしたために、彼女はガンモと組む事になった。あゆみと松任谷もコンビで、そのレースに参加。そして、その競技のコースには、松任谷が仲間に様々な罠を仕掛けさせていた……というのが粗筋。アクション編であり、あゆみと松任谷を蹴散らす、リンダのパワフルなキャラクターも愉しい。
 作画監督は井上俊之で、彼が大半の原画を描いている。この話の何がよかったといえば、まず、絵が可愛くて、非常によく動いているという事。そして、やたらと楽しい仕上がりだったという事だ。26話Bのキャラクターは、全体に絵柄がコミカルな感じで、頭身もやや低めで、身体つきはムチムチでコロコロ。リンダ、あゆみ、松任谷の3人はずっとブルマ姿で、7話Bに負けないくらい太ももが大変な事になっている。多分、勢いで描くあまりに、鉛筆が走りすぎたのだろうと思うが、身長の半分以上が脚になっているカットもある。崩し顔やコミカルな芝居も多くて、それも楽しい。
 東映動画(現・東映アニメーション)は1話あたり3500枚という、作画枚数の制限があるのだが、この話は枚数制限に挑戦しており、少ない枚数ながら、工夫して動かしまくっている。見どころはやはり、後半のミクストレースの部分で、それぞれのキャラクターが走ったり、障害物を越えたりと、アクションがたっぷり。
 僕が好きなのは、ガンモが缶コーヒーに釣られてコースアウトしそうになった後、怒ったリンダが、ガンモを自分の脚ごと、地面に叩きつけるリピートの動き。これはタイミングが気持ちいい。それから、ぶら下がったパンを囓ろうとして、あゆみと松任谷がピョンピョンと跳ぶカット。凝ったカットではないけれど、動きが可愛いし、太ももが凄い。「まくるぜ!」のセリフの次のカットの、リンダとガンモが猛スピードで追い上げる走りは、走りの勢いもさる事ながら、猛スピードのリンダに引っ張られたガンモが、生き物ではなくて、物体のように扱われている感じに大爆笑。これはシチュエーションもいいのだけど、作画の力で笑えたのだと思う。
 凝った作画も多い。この話の前半で、木の枝に留まっているゴインノウ様一行(珍妙な鳥のキャラクター達)を、ややアオリで撮ったカットがある。彼らの事を怒った半平太達が、怒鳴りながらジャンプするのだが、地面に立っている時は彼はフレームに入らず、ジャンプした瞬間だけ、フレームに入る(計3回フレームインする)というえらくマニアックな構成のカットで、「うわあ、凝った事をやるなあ」と感心した。
 ミクストレース中に、松任谷に引っ張られたあゆみがフレームアウトする動きで、目と髪の一部だけが遅れてフレームアウトするという遊びがあるのだけれど、フレームアウトする髪の形が、少女マンガチックな、非常にエレガントな形状になっている。その凝り方とセンスがよかった。
 僕がこの26話が好きだったのは、この話が久しぶりに登場した「動きが楽しいアニメ」だったからだ。同じように感じたファンもいただろうと思う。勿論、当時も、他に動きに凝った作品、動きに魅力がある作品はあった。ではあるが、26話Bのような、原画枚数の多いリミテッド作画で、楽しく動きまくる作画はなかった(かっこよく動きまくる作画はあった)。さらに言えば、26話の作画は、リミテッドで楽しく動きまくっているうえに、絵柄にも動きにも柔らかさがあった(しかも、なかむらたかし&森本晃司的な、リアルっぽい感じまで入っている)。柔らかさがあるのが、26話Bのポイントだったと思う。
 もう少し自分の事を言えば、26話Bを観て「ああ、やっぱり、リミテッドのギャグ的な作画っていいなあ」と思った。『GU-GUガンモ』の本放映中に、日本テレビで『ど根性ガエル』の再放映が始まり、僕は録画をして『ど根性ガエル』をチェックするようになる。『GU-GUガンモ』の井上俊之の仕事に感化されたのも、『ど根性ガエル』をチェックしようと思った理由のひとつだった。

第218回へつづく

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(09.09.28)