第220回 『GU-GUガンモ』その6 31話、37話A
『GU-GUガンモ』でのスタジオジャイアンツは、演出の池田裕之と組む事が多く、彼と組んだ回はいずれも切れ味のよい仕上がりとなっている。当時、僕が作ったもの以外にも『GU-GUガンモ』を取り上げているマニア同人誌があり、池田裕之にインタビューしていた。具体的な内容は覚えていないが、確か「アニメと実写で同じスピードで動いたとしても、観客が感じる早さは違う」という話をしていて、それが大層面白かった。彼がこれからどんな作品を作るのかが楽しみだったが、その後、あまり名前を見ない(名前を変えて、東映以外で仕事をはじめたようだが、別名での活動も短時期も短かった)。
シリーズ中盤のスタジオジャイアンツ担当回で、印象的だったのが31話「不幸な子!? カシオのミノ虫地獄!!」(作画監督/志田正博、演出/池田裕之)だ。『GU-GUガンモ』は基本的に各回2本立てだが、これは初の1回1話のエピソード(AパートとBパートで1話)。西郷のために、100点のテストの答案を破られてしまったカシオは、西郷に復讐を誓い、彼に果たし状を叩きつける。成り行きで、ガンモも、自分に西郷がなびかないのに腹を立てていたあゆみも、カシオに荷担。カシオは、西郷の弱点がミノ虫である事を見抜き、あゆみのに協力で大量のミノ虫を手に入れて、それを武器に西郷を追いつめるのだった(手元に原作がないので確認できないが、原作では肥だめの中身を集めて、それで攻撃するという下ネタだったはず)。カシオの攻撃は、爆弾にミノ虫を仕込んだ「ミノ虫爆弾」、ミノ虫と一緒にダイナマイト(だろうと思う)を爆発させる「ダイナマイトミノ虫」とエスカレートする。
この話の見どころは、やはり果たし合いのシーンだ。『GU-GUガンモ』の美術では、夕方の空を、鮮やかな赤系の色で塗るのだが。この場面も、夕焼け空の赤が効いてる。果たし合いの場所に、西郷と妹がやってくるあたりの盛り上げ方も巧いし、カシオのマント姿も格好いい。「ミノ虫爆弾」「ダイナマイトミノ虫」のあたりは、おそらくは摩砂雪原画。彼らしいゴージャスかつ迫力たっぷりの作画で、一気に盛り上がる。果たし合い以外のシーンだと、Aパートでカシオと西郷の妹が、テストの答案をめぐってドタバタやっているあたりの原画が、メリハリが効いていて見応えあり。ここは志田正博自身の原画だろう。
スタジオジャイアンツ担当回で、一番充実した仕上がりだったのが、37話A「何がでるかな? オバケ用心 火の用心!!」(作画監督/志田正博、演出/池田裕之)だ。これも池田裕之とコンビを組んだエピソード。この話に関しては、ストーリーはあってなきがごとし。冒頭でカシオが、火の用心の夜回りをやって、怪奇現象に遭遇。その後で、半平太とガンモ、オマケでついてきたあゆみが夜回りをやって、またまた怪奇現象に遭遇し、最後に「な〜んだ」というオチがついておしまい。ホラータッチの話だけあって、演出も作画もハッタリかましまくり。『GU-GUガンモ』には珍しくこってり味の仕上がりだ。ハッタリ演出、ハッタリ作画がふんだんにあり、初見時には、劇中で起きている怪奇現象なのか、ハッタリなのか、判断できない部分がいくつもあった。
最大の見どころは、摩砂雪が作画を担当したクライマックス。半平太達が怪奇現象に逢って、逃げ出すというシークエンスで、イメージでゴジラが火を吹くわ、バルキリーが爆発するわ、大魔神になった西郷や一つ目小僧になったリンダが登場するわの大パニック。ハーモニーあり、黒地に白トレス線だけのカットあり。凝った背動もあるし、逃げ出したあゆみに手を引っ張られた半平太が、ポリバケツやゴミ箱に突っ込むなんてカットもある。ストーリーとしてはシンプルなのだが、クライマックスで一気にテンションを上げる構成が成功している。
クライマックス以外だと、冒頭のカシオの夜回りシーンが見応えあった。ここも原画の密度が高く、遊びが山ほどあった。ここの原画は志田正博だと思っていたが、ひょっとしたら他の原画マンも描いているかもしれない。
第221回へつづく
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(09.10.01)