第221回 『GU-GUガンモ』その7 48話AB
「第219回 『GU-GUガンモ』その5 6話B」で触れた、スタジオジャイアンツの本作への参加について、読者の方からメールをいただいた(名前を出していいのかどうか分からないので、名前は伏せておく。比較的若いアニメーターの方だ。情報感謝)。そのメールによれば、フジテレビの岡正プロデューサーが『さすがの猿飛』でのスタジオジャイアンツの仕事を評価していた。直接、岡プロデューサーからスタジオジャイアンツに依頼があり、『GU-GUガンモ』に参加する事になったのだそうだ。やるなあ、岡プロデューサー。
シリーズ終盤のスタジオジャイアンツ担当回で、印象的なエピソードと言えば、48話A「春だ!飛び出せ! シェイプアップ大作戦」、B「私がうわさの桃色美人」(作画監督/志田正博、演出/池田裕之)だ。AパートもBパートも、意欲作にして、ちょっとした異色作だ。
Aパートは、ひたすら踊るだけの話。最近、ガンモは運動不足で太り気味だ。彼はリンダに誘われて、ドロシーがインストラクターをやっているジャズダンス教室に行く。やがて、あゆみの家のばあや、半平太、西郷兄妹、カシオと、他のレギュラーキャラも合流。一応、ラストには、あゆみにダンスのセンスがなかったというオチがつくが、物語の展開らしいものはなく、ただ、キャラクター達が踊るだけ。
冒頭にはストーリーと関係なく、リンダがローラーブーツで踊るシーンがあり、劇中でも、ばあやが「フラッシュダンス」のパロディをやったり、カシオが「ウエスト・サイド物語」のパロディをやったり。作画的には健闘。枚数制限があるので、TVアニメの常識の範疇からは逸脱はしていないが、全体によく動いている。ジャイアンツの作画パワーがなければ、成立したなかった内容だろう。全体に、志田正博のシャープで可愛らしいシャープでまとまっており、その中で目立っているのが、中盤でリンダ達がジャズダンスを踊る部分だ。ここの原画担当は摩砂雪で、彼の担当カットは数としては少ないが、リンダの身体が伸び伸びとして、肉感的。なかなか魅力だ。
Bパートは、つくねが主人公。彼女は、学校でNo.1の美形である先輩に片想いしており、その彼に接近。だが、その先輩に純情を踏みにじられてしまい、平手打ちで返す。そういった大筋はあるが、ストーリーはオマケのようなもので、このエピソードの目的は、つくねを可愛らしく描く事だ。なにしろ、12分ほどしかない話の中に、つくねのキャッチーなカットを積み重ねたミュージッククリップを2度も挿入するという、とんでもない構成になっているのだ。
冒頭はつくねが、朝、自分の部屋で目覚めるシーンだ。カメラに背中を向けて、パジャマの上を脱いで、上半身裸になる。そこで、つくねはカメラの目線(視聴者の目線)に気づいて(?)、振り返る。振り返ったところでカットが切り替わり、寄ったアングルになるため、胸は見えない。つくねはカメラに向かって「み〜せないっ!」と言ってウィンク。勿論、胸は見せないの意味だ。今観ると、ちょっとエッチなアイドルビデオみたいだが、とにかくツカミは100点満点。1984年当時のアニメとしては、間違いなく最高レベルのキャッチーさだ。
最初のミュージッククリップには、様々な衣装&表情のつくねのビジュアルを並べた1枚絵を、PANしながら見せるカットがあり、これも衝撃的なくらいのキャッチーさ。勿論、志田正博自身の原画であり、アニメ雑誌の描き下ろしイラストでも観た事がないような凝ったビジュアルだった。ミュージッククリップ以外の部分も、つくねを可愛らしく見せる場面が連続。志田正博の代表作だろう。
Aパートは踊るだけ、Bパートはつくねを可愛く描くだけ。演出も作画も徹底している。両方とも呆れるくらい物語が弱いけれど、楽しい仕上がりだった。あまりに思い切りのいい作りと、スタッフがやり放題やっている事が痛快だった。どうして48話がこういった作りになったのか、ひょっとしたら自分が作った同人誌のインタビューで訊いているかもしけないけれど、手元にその本がないために確認できないのが残念だ。
『GU-GUガンモ』の話題も随分と長くなってしまったが、今回で一段落。スタジオジュニオ担当回、スタジオジャイアンツ担当回以外にも、注目したいポイントはあったが、それはまたの機会に。
第222回へつづく
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(09.10.02)