第223回 『くりぃむレモン』原画集
今回からの数回はOVAについて触れる。1984年にはロリコンアニメ『くりぃむレモン』シリーズのリリースが始まり、僕達に衝撃を与えた。だが、『くりぃむレモン』本編の話をする前に、僕がお手伝いした『くりぃむレモン』原画集について触れておきたい(念のため断っておくと、18禁作品の話である)。僕にとっての『くりぃむレモン』との出逢いは、ビデオではなく、原画や絵コンテだった。
この年の夏、友人が同人誌で『くりぃむレモン』の原画集を作る事になり、僕は頼まれて原画のキャプション書きを担当した。そんな事は他にもあって、別の友達が『北斗の拳』の原画集を作った時にも、ネーム書きだけを担当した。当時の僕は、別にアニメ雑誌ライター志望だったわけでもないのだが、そういった作業が得意だと思われていたのだろう。
その友達がどうやって原画を手に入れたのかは書かない。偉い人にバレたら怒られてしまうような企画だったが、彼は「こんなアニメは発売されても、すぐに忘れられるだろう。だから、資料を後世に残したいんだ」と言っていた。本を作って売りたいという気持ちもあったのだけれど、資料を残したいというのも本音だったはずだ。それについて僕は共感できた。まさか、美少女ポルノアニメなんてものが軌道に乗るとは思わなかったのだ。
『くりぃむレモン』が当たらないだろうと思ったのには、理由がある。これより前にも『雪の紅化粧/少女薔薇刑』や『仔猫ちゃんのいる店』といったアダルトアニメがリリースされており、いずれもがっかりな出来だった。それらを観ていたので、とてもこのジャンルに未来があるとは思えなかったのだ。
原画集は『美少女アニメ くりぃむレモン パート1 媚・妹・Baby』と『同 パート2 エスカレーション 〜今夜はハードコア〜』の資料を掲載したものだった。同人誌の編集をしている段階では『媚・妹・Baby』も『エスカレーション』も、まだリリースされていなかった。資料を見ると『媚・妹・Baby」が1984年8月5日のリリースで、夏のコミックマーケットの開催が8月19日だ。ビデオがリリースされた直後に、コミケで原画集を出す計画だったのだ。乱暴な話だ。いざ、原画を見てみると、それまでにあったポルノアニメとは比較にならないくらい画が美麗だった。確かにこれは資料を後に残す価値があるかもしれないと思った。ビデオがまだなかったので、絵コンテを読んでキャプションを書く事になった。キャプションの内容は、ストーリー解説のようなものだったと思う。その後、読み返していないので、どんな内容だったのか覚えていないが、かなりいい加減な事を書いていたような気がする(買った人、ごめんなさい!)。
同人誌の編集は、短期決戦であり、別の友人のアパートに集まってやった。その友人はサラリーマンであり、昼間は働いていたので、夜遅くに彼のアパートに集まって、朝まで作業をした。そのアパートには、他にもアニメファンの住人がいて、よく顔を出しにきた。やっているのは美少女ポルノアニメ資料集の編集だったが、今思うと、なんだか青春っぽいノリだった(自分がやっていた同人誌の方は、皆で集まってワイワイやるようなノリではなかった)。
同人誌はきちんと完成した(といっても、当時の事なので、今の原画集に比べたら安っぽい作りだったはずだ。古本屋で見つけても買ったりしないよーに)。本ができた後、同人誌を作ろうと言い出した友達は、制作プロダクションから怒られたらしいが、詳しい事は知らない。怒られたわりには、制作プロダクションのショーウィンドーにその同人誌が飾られていたという噂も聞いた。
その後、『媚・妹・Baby』も『エスカレーション』のビデオを観て驚いたのは、自分が知らないシーンが山ほどあった事だ。具体的に言うと、僕が見たのは、絵コンテも原画も大半が濡れ場だったのだが、完成した作品にはその前に生活描写があった。元々、『くりぃむレモン』シリーズは各話15分程度で、2話で1本のパッケージになる企画だった。それが制作中に生活描写を足して、各話30分とし、1話ごとにパッケージ化する事になったのだ。僕達は最初に予定されていたパートの資料だけで、本を作ってしまったのだった。ビデオを観た時に「ああ、ビデオを観ていれば、もっとちゃんとした原稿が書けたのに」と思った。
第224回へつづく
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カラー/50分/カラー/スタンダード 4:3
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(09.10.06)