アニメ様365日[小黒祐一郎]

第280回 「Newtype」のデザイン

 「Newtype」について、もう少しだけ続ける。「Newtype」はビジュアルに力を入れていた。カラーの特集ページは当然、コラムページも、誌面デザインが洗練されていた。判型は、当時の「アニメージュ」や「ジ・アニメ」よりも少し大きなA4変型(高さはA4で、横幅が広い)。「読ませる」よりも「見せる」のを優先したサイズだった。
 カラーの特集ページに関しては、描き下ろし主義をとっていた。「Newtype」に掲載されたセルイラストは、他の雑誌よりも明らかにクオリティが高かった。「Newtype」の描き下ろし主義は、歴史的に見ると、アニメの画の密度が上がるのを後押したかたちになっている。セルイラストだけの話ではなく、間接的ではあるが、本編の画作りにも影響を与えているはずだ。また、描き下ろしのクオリティが高いだけでなく、画のアイデア(=誌面の構成)についても凝ったものが多かった。誌面をながめていて「こんな記事を作っちゃったぜ」とほくそ笑む編集者の顔が見えるようだった(特に『機甲戦記ドラグナー』の記事が凄かった)。
 細かい話になるが、描き下ろしのセルイラストに関して、描き手の名前をローマ字で表記したのも、当時としては画期的だった。僕はちょっとかっこつけすぎじゃないかと思ったくらいだ。カラーページの記事で、取り上げた作品のタイトル、放映データ、(C)表記を、1ブロックのパターンにまとめていたのも新しかった。つまり、作品データまでも、誌面を飾るためのパーツとして扱っていたのだ。この小技は、数年後に「アニメージュ」も模倣している。
 僕が創刊当時の「Newtype」で一番感心したのが、設定資料を掲載したページのデザインだった。誌面の密度が高く、画の並べ方も巧かった。メカの設定を載せた記事のかっこよさは圧倒的だった。線画の設定を使って、こんなにも見応えのあるページが作れるのかと思ったものだ(僕はここ10年ほど「アニメージュ」で「設定資料FILE」の構成を担当しているが、あの頃の「Newtype」の設定ページのかっこよさを再現したいと思いながらやっている)。
 今では誌面のデザインに関して「Newtype」と他のアニメ雑誌の差はほとんどないが、当時はまるで別物だった。「Newtype」と比べたら、他のアニメ雑誌のデザインは一時代前のものだった。書籍の作り手としての姿勢も、誌面の設計理念もまるで違っていた。僕は1986年くらいから「アニメージュ」で仕事をするようになるのだが、他の若いライターと「アニメージュ」も「Newtype」のように、誌面をかっこよくした方がいいのではないかと話した事がある。僕はその時、誌面がダサくてもいいから、濃い記事を作るべきだと主張したけれど、数年後には「Newtype」を参考にしてページ構成をするようになっていた。「アニメージュ」全体としても、じわじわと「Newtype」的な雑誌になっていった。

第281回へつづく

Newtype(ニュータイプ) 2010年 02月号

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(10.01.06)