第282回 『魔法のプリンセス ミンキーモモ VS. 魔法の天使 クリィミーマミ』
『魔法のプリンセス ミンキーモモ VS. 魔法の天使 クリィミーマミ』は、2分半ほどの短編だ。OVA『魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢の中の輪舞』と『クリィミーマミ Long Good-bye』が劇場公開された際に、オマケとして制作されたものだ。僕は劇場では観ていないので、どういう順番で上映されたのか知らないのだが、どうやら『夢の中の輪舞』『Long Good-bye』両作のオープニングとして上映されたらしい。公開は1985年8月3日。
タイトルどおり、モモとマミが競演する作品だ。脚本・演出は望月智充。『モモ』側の作画監督を渡辺浩が、『マミ』側の作画監督を後藤真砂子が務めるというゴージャスなスタッフ編成。原画は高木弘樹、高峰由恵、きくちみちたかの3人。音楽は『モモ』のものが使われている。『モモ』と『マミ』は制作プロダクションは違っているが、両作の製作に代理店の読売広告社がかかわっている。本作は読売広告社が中心になって成立させた企画であるようだ。エンディングには、企画・制作として単独で、同社がクレジットされている。タイトルは『魔法のプリンセス ミンキーモモ VS 魔法の天使 クリィミーマミ 劇場の大決戦』と表記される場合が多いが、少なくとも、DVD BOXの特典として収録された映像を見る限り、タイトルに『劇場の大決戦』の文字はない。
話はごく簡単なものだ。モモと優が出会って、最初はにこやかに握手などをしていたが、いきなりライバル意識に火がついて、どういうわけか両者が大人の姿に変身すると、同時に巨大化してしまう。2人とも戦士の姿で、必殺技をぶつけあう! ファンが作ったアニパロ同人誌を、プロのテクニックで映像化したようなフィルムだった。初っ端の「あ〜、モモちゃん。今度、ビデオになったんだってね。おめでとう」「優ちゃんこそ、もう2本目なんでしょ。すごいわねえ」という会話にしても、「ヴィラ星人!」「キュラソ星人!」と、お互いを「ウルトラセブン」の宇宙人の名前で罵り合うあたりも、実にアニパロ的。
必殺技の応酬の部分は、作画もハデハデで、見応えもあった。一部の必殺技の名前が「首藤スパーク」「伊藤フラッシュ」「渡辺カッター」「後藤ブレード」とメインスタッフの名前に因んだものであるのも笑いどころ。さらに言えば、どう見ても渡辺カッターは、刃物を使った技ではないし、後藤ブレードも剣ではない。これは「おいおい、それはブレードじゃないだろう」と突っ込むところだ。クライマックスのショックの表現で、画面に一瞬文字が出るのだが、ビデオでコマ送りすると、担当アニメーターの個人的な独り言。この前後にはよくあった作画の遊びだが、これは特に目立っていた。
非常にバカバカしい作品ではあるけれど、僕はこのショートフィルムを楽しんで観た。今でも好きな作品だ。それまでも『うる星やつら』等のTVアニメで、アニパロ的なギャグはあったけれど、ここまで突き抜けたものは珍しかった。それから、アニメファン的なセンスで作品が作られるのが、まだ新鮮な時代でもあった。
それから、こんな仕事で誉めるのは、かえって本人に対して失礼な気もするが、さすがに望月智充はセンスがいいと思った。劇場作品ではあるのだが、観返すとOVA初期の浮かれた気分を思い出す。
第283回へつづく
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(10.01.08)