アニメ様365日[小黒祐一郎]

第357回 『CITY HUNTER』の異色作

 印象の話になってしまうが、僕にとって『CITY HUNTER』は「作品」というよりも「番組」だ。実際には各話スタッフの個性が色濃く反映されているのだが、本放映時には、誰が作っているのかなどは、あまり意識しないで観ていた。DVD BOXは購入したのだけれど、この原稿を書くまで、ほとんど再生していなかった。ではあるけれど、CATVでたまたま流れていると、楽しくて、つい最後まで観てしまう。『CITY HUNTER』はそんなタイトルだ。
 振り返ってみると『CITY HUNTER』で印象に残っているエピソードは、異色編が多い。そんな話ばかり記憶しているという事は、僕は正統派の『CITY HUNTER』ファンではないのかもしれない。印象に残っている話のひとつが『CITY HUNTER 2』の24話「必殺 桃色吐息!? 大都会くの一進出物語」(脚本/井上敏樹、絵コンテ・演出/江上潔、作画監督/北原健雄)だ。この話のゲストヒロインは、女忍者のかえで。僚を倒して、裏の世界に名前を轟かせようと考えた彼女は、手下の3人の忍者ともに、彼に迫る。かえで達は超アナクロのズッコケ忍者で、後半の僚とのバトルでは、忍者がしかけてくる忍法に対して、僚も変わり身の術などで対抗。ラストで、僚に負けた3人の忍者は、サラリーマンに転身。背広姿になったものの、忍者アクションで通勤する。一方、かえでは、僚と結婚して子どもを産み、その子を一流ま忍者として育てる事を決意。花嫁衣装を着て、僚に迫る。サブタイトルになっている「桃色吐息」とは、お色気忍法の事だった。徹底したギャグ編で、作画や音響も遊んでいた。
 それと並んで、印象に残っていたのが、同じく『CITY HUNTER 2』の41話「モッコリだらけ! 僚の心と超能力少女(前編)」(構成・絵コンテ/こだま兼嗣、演出/山口美浩、作画監督/北原健雄)、42話「同(後編)」(構成・絵コンテ/こだま兼嗣、演出/江上潔、作画監督/佐藤千春)。タイトルどおり、超能力を使う少女が登場する前後編だ。本放映時は、そのアイデアゆえ、おかしな話だと思ったが、再見してみたらそうでもない。話の流れとしては、『CITY HUNTER』の枠から外れているわけではなかった。ただし、後編クライマックスの超能力表現が、まるでSFアニメのような派手さで、その一点で異彩を放っている。このエピソードでクレジットされている「構成」とは、原作から脚本をおこさずに、直接、原作から絵コンテを描く役職の事だ。そういった作り方は、後の『名探偵コナン』でも踏襲されている。
 小ネタでは『CITY HUNTER '91』10話「今夜だけこの愛を… 都会のシンデレラ物語!」で、数カットだけだが、『YAWARA! a fashionable judo girl!』の猪熊柔が出演。逆光で顔こそ見えないが、髪型も声も同じ。ナンパしてきた僚を、見事な一本背負いで投げ飛ばす。『YAWARA!』も諏訪道彦プロデューサーの作品であり、『CITY HUNTER '91』との当時、放映中だった。柔が登場した事よりも、エンディングのキャスト表記で、その役名とキャストが「裕子 皆口裕子」というわけの分からない表記だった方がインパクトがあった。猪熊柔の名前を出すわけにもいかないので、声優と同じ名前にしたのだろう。同じく『CITY HUNTER '91』の7話「あの伊集院隼人氏の 極めて平穏な一日」は海坊主にスポットをあてたエピソード。この話だけアイキャチが海坊主仕様だったので、ちょっと受けた。こういった遊びができるのも、長寿シリーズの余裕だろう。
 今回は愉快な話ばかりを取り上げてしまったが、僕が『CITY HUNTER』シリーズで一番好きなのは、『CITY HUNTER 2』の49話「さらばハードボイルド・シティー(前編)」、50話「同(後編)」の前後編だ。このエピソードでは感動して泣きそうになった。それについては次回で。

第358回へつづく

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(10.04.28)