アニメ様365日[小黒祐一郎]

第411回 『超神伝説 うろつき童子2 —超神呪殺篇—』

 改めてお断りをする。今日の原稿でも、過激なアダルトアニメの内容について、具体的に記述する。そういった話題が苦手な方は、遠慮してもらった方がいいかもしれない。
 第1作『超神伝説 うろつき童子 —超神誕生編—』はエネルギーに満ちたフィルムだった。作り手の想いがグラグラと煮えたぎっていた。翌年リリースされた『超神伝説 うろつき童子2 —超神呪殺篇—』は、驚いた事に、さらに濃厚な作品に仕上がった。ポルノとしては、『1』の方が充実していたが、ドラマやアクションに関しては『1』を超えていた。
 『2』の主軸となったのは天邪鬼と水角獣の対立だった。水角獣は魔界の男であり、超神を抹殺しようとしている。『2』の冒頭シーンは、大正12年の東京だ。その頃から、天邪鬼と水角獣は対立していた。水角獣は超神らしき人間を殺すために関東大震災を起こし、その直後、天邪鬼は水角獣を倒した。超神の覚醒が近いと思われる現在、水角獣が復活し、天邪鬼の前に立ちふさがる。
 大正時代のシーンは、全編をモノクロ映像として処理。時代浪漫と怪奇色がいい。後半の天邪鬼と水角獣の戦いは、都会を舞台にしたサイキックバトルだ。水、炎などを使ったアクションの組み立ても、画作りも素晴らしい。水角獣役の男性声優の熱演が、さらに盛り上げる。
 もうひとつの主軸になったのが、南雲のクラスメートである仁木のドラマだ。仁木は冴えない男子生徒である。彼は明美に片想いしており、彼女と仲よくなった南雲に嫉妬する。スケバン達にはペニスが小さいことを馬鹿にされ(これは大切なポイント)、奴隷のような扱いを受け、両親も彼を邪険に扱う。仁木はコンプレックスの塊のような男だっだ。ドロドロとしたものが渦巻く彼の内面を、水角獣の手下の魔人が利用する。彼に魔界の力を授けて、南雲を殺すようにしむけたのだ。
 魔力を授ける方法が凄い。仁木に、魔力の源である巨大なペニスを渡して、それを自分のペニスと付け替えるように言ったのだ。彼はまな板の上に自分のペニスを載せて、包丁をあてる。コンプレックスと、それを克服したい想い、そして、ペニスを切断する事への恐怖心が、仁木の内部で錯綜する。葛藤が絶頂に達した瞬間に、自分のペニスを切り落とす。絶叫。そして、痛みと恐怖により、歪んだ顔。
 この場面はキた。凄まじいインパクトだった。背筋が凍った。「これは××には分からないだろう」という言い方は好きではないのだが、こればっかりは女性には分からないだろう。自分で切断するというシチュエーションも大変なものだが、そこにもっていくまで話の組み立てが巧い。作り手が仁木を追い込んでいく。視聴者が彼に感情移入したところで、仁木は包丁で切断する。まるで、我が身が切られたようなショックを感じた。
 僕と同じように思った男性は多かったらしく、『うろつき童子』について話をすると、よく「包丁の場面は凄かったよね」という話になる。勿論、切断して終わりではない。それについては次回で。

第412回へつづく

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(10.07.20)