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002『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』(1995年・劇場)

テキスト担当/岡本敦史

【あらすじ】

 ある朝、野原しんのすけとその家族がいつものように出かける支度に追われていると、飼い犬のシロが突然喋りだした! その声の主は、タイムマシン航行中に何者かに急襲され、不時着地点からシロを遠隔操作するタイムパトロール隊員、リング・スノーストームだった。彼女に助けを乞われた野原一家は、真相究明のため戦国時代へと旅立つことに。そこで一行は少年剣士・吹雪丸と出会い、面妖な手下どもを率いる怪人・雲黒斎との戦いに巻き込まれていく。

【解説】

 今や長寿シリーズとなった『クレヨンしんちゃん』劇場版の第3作。過去にさかのぼって歴史を改変しようとする時間犯罪者の企みを阻止するべく、戦国時代へタイムスリップした野原一家の大冒険が描かれる。ロードムービー形式のストーリーの中に、凛とした少年剣士・吹雪丸(実は美少女)と敵キャラたちの熾烈なバトルを散りばめ、勇壮な城攻めのスペクタクルへと突入していく、娯楽活劇のお手本のような語り口が心地よい。監督の本郷みつる、コンテ・演出の原恵一ら、作り手の時代劇ジャンルに対する憧れとロマンが全編に溢れる傑作である(のちに原恵一が監督した劇場版10作目『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』の原型として観ても興味深い)。
 また、主力アニメーター/デザイナーとして『しんちゃん』シリーズで異才を発揮した湯浅政明による、奇抜で可愛らしいビジュアルの数々も見どころ。特にクライマックス、常軌を逸したデザインセンスが炸裂するパラレルワールドの造形と、そこで展開する強烈にバカバカしい巨大ロボット対決が圧巻だ。同じく湯浅政明が手がけた第4作『ヘンダーランドの大冒険』のクライマックスと並ぶ、シリーズ屈指の名場面である。

【スタッフ】

原作/臼井義人
監督/本郷みつる
脚本・絵コンテ/本郷みつる、原恵一
キャラクターデザイン/原勝徳
作画監督/原勝徳、堤規至
設定デザイン/湯浅政明
美術監督/中村隆、野村可南子
制作/シンエイ動画、ASATSU、テレビ朝日
声の出演/矢島晶子、藤原啓治、ならはしみき、浦和めぐみ

003へつづく

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(12.06.14)