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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第77回 「この人に話を聞きたい」打ち明け話(6)

第26回 黄瀬和哉
 「この人に話を聞きたい」の初期は、意外とアニメーターの登場が少ない。それは連載が始まった頃、「アニメージュ」には「キャラクターデザイナーの肖像」というアニメーターを取り上げる連載があり、それと内容が重複しないようにしていたためだ。
 黄瀬さんの写真を撮ったのは、Production I.Gの屋上。抜けのいい写真になった。話の内容は、レイアウトについて、劇場版『機動警察パトレイバー』で3コマを基本にした事について、アニメのリアルについて等、マニアックな話題が多く、どちらかと言えば「アニメスタイル」向けの記事になっている。僕にとっては収穫の多い取材だったが、機会があれば黄瀬さんの人柄に迫った記事もやってみたい。

第27回 アミノテツロー
 特に意識してそうしたわけではないけれど、第27回、28回、29回とベテランが続く。単行本化にあたって原稿を読み返して、この流れはなかなかいいと思った。第27回は『疾風! アイアンリーガー』や『爆走兄弟 レッツ&ゴー!!』等を手がけたアミノ監督。彼の作品には「アミノ監督らしさ」を感じるけれど、その「らしさ」を言葉にするのは難しい。その言葉にしづらい「らしさ」を探るのがこの記事のテーマだった。
 この取材は、色々と予習してからのぞんだ。「アミノ作品は、必ず主人公が放浪する」等は、詳しい人に教えてもらったネタだ。お陰で充実した記事になったと思う。『聖ルミナス女学院』等、個々の作品の話も面白かった。最後にアミノさんに、座右の銘について聞いている。この連載としては珍しい質問だったけれど、これがドンピシャリ。
 取材をした場所は『機巧奇傳 ヒヲウ戦記』のアフレコスタジオ。スタジオ内では面白い写真が撮れそうもなかったのだけれど、時間はすでに夜で、外では撮れる写真のバリエーションが少ない。そこでメインの写真はあのようなシチュエーションとなった。

第28回 西沢信孝
 西沢さんはTV『銀河鉄道999』『パタリロ!』、あるいは劇場『マジンガーZ 対 暗黒大将軍』等、数々の作品を手がけてきた演出家。放送中だった『勝負師伝説 哲也』がベテランならではの、しっかりした作りで、その『哲也』をきっかけに取材を申し込んだ。僕は、OVA『湘南爆走族』シリーズも好きで、その話が聞けたのも嬉しかった。
 今回読み返して、印象が変わったのがこの回の記事だった。実は取材をした当時、自分の突っ込みが弱く、もっと上手く話が聞けたのではないかと思っていたのだ。今回読み返してみたら、西沢さんのベテランの風格のようなものが感じられ、自分でも興味深く読む事ができた。あれ? なんでだろう? 時間が経過して、自分でも客観的に読めるようになったのかもしれない。
 取材から何年も経って、東映アニメーションの他の演出家から「西沢さんは作るものも、本人もダンディだ」という話を聞いて「なるほど」と思った。確かに西沢さんはダンディだ。

第29回 浦沢義雄
 ゴーゴーダンサーをやっていたという過去の話、「お芝居が嫌い」というスタンスなど、実にユニークな記事となった。浦沢さんは書くものに負けないくらい、ご本人もユニークな方だったのだ。この時も最後に、座右の銘について聞いたけれど、これも大ヒット。
 僕は、浦沢さんの脚本デビュー作である『ルパン三世[新]』からのファンで、後に彼が手がけた実写ドラマ『ペットントン』や『どきんちょ!ネムリン』等も、マメにチェックしていた。浦沢さんが『ルパン三世[新]』の個々のエピソードについて、細かく覚えていたのが嬉しかった。

第30回 鶴巻和哉
 第15回の今石君の記事は「次回作は『フリクリ』」で終わり、第21回のてんちょさんは『フリクリ』第1巻リリース後の取材。この鶴巻和哉さんの取材は『フリクリ』最終巻のアフレコ直後の取材だ。記事を順に読んでいくと、そういった時間の流れが見えてくるのも長期連載の面白さだろう。
 鶴巻さんはマジメな人で、どんな質問をしてもはぐらかしたりはせず、誠実に答えてくれる。突っ込むのが申し訳なくなるくらい率直に話してくれるのだ。おかげで楽しい記事になった。終わりの方の「ソフトマゾ」の話も楽しい。
 メインの写真はサブカルチックを狙って、ちょっと変わったものを選んでみた。

 ここまでで、「この人に話を聞きたい」の連載についての思い出話はオシマイ。自分がやった記事について解説するなんて、ちょっと厚かましかったかもしれないけれど、これもアニメ雑誌生活20年の記念記事という事で、ご勘弁を。
 単行本「この人に話を聞きたい 2」が出せるかどうかは分からないけど、もしも出るようなら、続きはその時に。

■第78回に続く
 

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(06.10.27)

 
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