『トップをねらえ!&トップをねらえ2! 合体劇場版!!』をようやく観てきた。ガイナックスの代表作であるOVA『トップをねらえ!』全6話、その続編『トップをねらえ2!』全6話を、それぞれ90分にまとめた総集編の2本立てだ。『トップ!』も『トップ2!』も密度の高い作品で、90分にまとまるのかと心配していたのだけど、仕上がった作品はベラボウに上手く再構成されており、余計な心配をせず、安心して楽しむ事ができた。
『トップ!』の方は第一話から第四話は足早に進めて、第五話、最終話をたっぷり観せる構成。オリジナルはギャグやパロディ、少女マンガ的な照れくささ等でくすぐり、怒濤の感動に向かっていく作品であるのだが、今回の劇場版は愉快な部分は端折られている。ちょっと美化されているわけだが、ファンが『トップ!』を反芻する時、観返すのはガンバスター大活躍の第五話であり、宇宙叙事詩の最終話ではないだろうか。それを考えれば、今回の総集編はファンの気持ちに沿った構成だと言えるはずだ。また、オリジナルを未見の観客に対して、コンパクトなかたちで『トップ!』の魅力を伝えるという意味でも成功しているだろうと思う。唯一、残念だったのがカシワラさんの扱いで、第一話に相当する沖ジョ時代の部分では彼女が登場していないのに、第五話、最終話に相当する部分で「あのカシワラさん」として、大人になった彼女が出てきている。沖ジョ時代でカシワラさんを出すと、1話の部分が膨れあがってしまうし、第五話はともかく、最終話に相当する部分ではドラマ的に彼女が必要だ。ちょっと不自然になるのは、作り手も分かってやっているのだろう。
『トップ!』は今回の劇場版で5.1ch化されており、そのために再アフレコが行われている。ノリコ役の日高のり子、カズミ役の佐久間レイの演技は、オリジナル版と比べて遜色のないもの。コーチ役の若本紀夫は彼の最近の特徴である、節回しのように抑揚をつける芝居になっていて、苦笑した。オリジナル版ではノリコの親友キミコは、女学生時代を渕崎ゆり子が、大人になってからを勝生真沙子が演じていたが、今回は全編通して渕崎ゆり子が演じている。キャリアを積んで芸域が広くなり、主婦やお年を召した女性を演じられるようになったという事なのだろう。特に主婦のキミコが聴きどころだった。勝生さんと言えば、些末な事だけど第五話にあたる部分の地球防衛庁での会議で「しかし、現存する戦力では、万に一つの勝ち目もありません」と言う女性士官の声が彼女でなくなったのが残念。その他の艦内オペーレーターの芝居がオリジナルと随分変わったような気がしたけど、それについてはDVDが出てから再度、確認したい。5.1ch化で音響をやり直しても、選曲は基本的にオリジナルを踏襲しているようだ。これも、安心して観られた理由のひとつだ。保守的な感想だろうか。
読者の皆さんもご存知のとおり、『トップ!』は第一話から第五話が4対3のスタンダードサイズで作られ、最終話のみが亜シネスコサイズ(ビスタとシネスコの中間の画面)だ。しかも、最終話のみがモノクロで制作されている。この部分はどうするのかと思ったら、劇場版でも、最終話に当たる部分になったところで画面が左右に広がり、色がモノクロになる構成になっていた。色に関しては直しようがないが、画角に関しては、元々最終話もスタンダードサイズで制作されているので、全編をスタンダードにする事もできただろうし、あるいは全編をビスタサイズにする事も考えられたはずだ。これも、オリジナルの印象を大事にしたという事なのだろう。ちなみに今回の総集編では、最終話に相当する部分の画角は、亜シネスコサイズではなく、ビスタサイズなのだそうだ。オリジナルよりも少し縦長になっているわけだ。
ちょっと話が長くなりそうなので、この続きは次回に。
■第84回「続・『合体劇場版!!』を観た」に続く
●公式サイト
http://www.top2.jp/movie.html
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