サンライズは、虫プロダクション系列の制作プロダクションだと言われている。例の「虫プロ系」「東映系」といったプロダクションの流れで、作品やスタッフを分類する話だ。確かに、サンライズ(旧社名:日本サンライズ)は、虫プロから独立したスタッフが興した会社であり、クリエイターも虫プロ出身者が多かったはずだ。だから、サンライズが虫プロ系である事に疑いはない。
だが、サンライズ作品のルーツを考える上で、竜の子プロダクションの存在を忘れてはいけない。特にサンライズの作品傾向を決定した『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』においても、タツノコ系のスタッフの活躍が大きい。『ガンダム』の監督である富野由悠季(当時は喜幸)、キャラクターデザインの安彦良和は虫プロ出身だが、メカニカルデザインの大河原邦男、美術設定の中村光毅は、タツノコ出身だ。続く『イデオン』に富野、中村は引き続き参加。キャラクターデザインの湖川友謙は、タツノコ出身ではないが、タツノコのリアルメカ&ヒーローもので腕を振るっており、タツノコ系アニメーターとして認識されている。
大雑把かつ乱暴に言ってしまえば『ガンダム』『イデオン』に関して、メインスタッフの半分はタツノコ系のクリエイターであるわけだ。富野監督にしても虫プロ出身とはいえ、虫プロ在籍時に監督作はない。いわゆる虫プロ的な演出が、りんたろう、出崎統に代表される表現主義的なスタイルを指すとするならば、作風から言っても、彼は虫プロ演出家の代表選手とは言いがたい。さらに「コンテ千本切りの富野」の異名をもつ彼が、『新造人間キャシャーン』や『ゴワッパー5 ゴーダム』といったタツノコ作品にもコンテで参加している点にも注目したい。
1970年代にメカアニメを得意としていたプロダクションは、『科学忍者隊ガッチャマン』をはじめとするリアルメカ&ヒーローものを制作していたタツノコプロと、『マジンガーZ』等の巨大ロボットものを手がけていた東映アニメーション(旧社名:東映動画)であった。2社のメカアニメを技術的な事に関してだけで比べれば、タツノコプロの方が遥かに先進的であり、同社のリアリティのあるメカ描写は当時、最高水準のものだった。1970年代後半から、リアルメカ&ヒーローものに参加していたスタッフはタツノコを離れ、サンライズや東映の作品に参加するようになっていった。タツノコの遺伝子がアニメ界に散らばったわけだ。東映で言えば『地球へ…』等がタツノコの血が入った作品だ。
そして、サンライズでは『ガンダム』『イデオン』をはじめとする作品に、タツノコの遺伝子が入っている。『新造人間キャシャーン』のツメロボットをデザインしたのが誰なのか知らないが、そのツメロボットに『ガンダム』のザクのルーツを見出す事は容易だ(外見に関しても、量産型であるという意味でも)。『伝説巨神イデオン』のリアルなキャラクター造形を、タツノコ系列のデザインだと言い切ってしまうのは躊躇するが、そこにタツノコの匂いを感じとる事はできる。
僕のアニメ史観でいけば『ガンダム』は虫プロ的な柔らかいキャラクター表現と、タツノコ的なハードなメカ描写が合わさった作品である。『イデオン』は虫プロ色が極端に薄く、タツノコ的リアルアニメの発展形としてとらえる事ができる。勿論、これらはさっきも言ったように、乱暴かつ大雑把な考え方である(例えば『ガンダム』『イデオン』に、当然、虫プロ系でもタツノコ系でもないスタッフも参加している)が、サンライズが他に並ぶプロダクションのない「ロボット大国」になっていく過程で、タツノコ系スタッフの活躍が大きかったのは間違いない。あるいは、サンライズのカラーが確立する上で、タツノコ系スタッフの存在が重要なファクターだったという言い方をしてもいい。
実際にサンライズ側が、どのくらい意識的に、そして、戦略的にタツノコの血を取り入れていったのかが気になっている。機会があったら検証したいと思っているテーマだ。
さて、どうして今回このテーマで書いたのかというと、先日リリースされた『ザ☆ウルトラマン』のDVD-BOXを観たからなのだ。歴代のサンライズ作品の中で、最もタツノコの血が濃いのが『ザ☆ウルトラマン』なのだ。その話は次回で。
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