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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第99回 『ザ☆ウルトラマン』と『宇宙戦艦ヤマト』の関係

 少し前に『ザ☆ウルトラマン』のDVD-BOXを入手した。『ザ☆ウルトラマン』は1979年に放映されたTVアニメで、ウルトラシリーズ第8作目。つまり、アニメで作られた「ウルトラマン」である。製作は円谷プロダクションとTBSだが、アニメーション制作は日本サンライズが担当している。
 僕は、この作品についてはあまり詳しくない。本放送でも全話は観ていないはずだ。再放送で数本観たものの、それ以外は再見する機会がなかった。観返したいと思っていた理由はふたつ。ひとつには、2回あるはずのなかむらたかし作画をチェックしたかった。それから、シリーズ中盤に女性ウルトラマンのアミアが登場するのだが、その人間としての姿が、松本零士が描く美女にそっくりだった。なぜ、松本美女に似ていたのかを検証したかった。
 なかむらたかしに関しては、この頃の彼なら、すでに気合いの入った原画を描いているのではないかと思っていた。なかむらさんが原画で参加しているのは、11話「科学警備隊へのチャレンジ!! 機械怪獣ヘクトール登場」と13話「よみがえった湖の悲しい伝説 音波怪獣ガラドラス登場」。ざっと再生してみたところ、13話の湖の中で怪獣が動く場面で、凝りに凝った岩石崩しを1カット発見。まず間違いなく彼の原画だろう。それが確認できただけでも満足。その後も彼らしい原画があった。
 アミアに関してはDVD-BOXがリリースされる前に、業界のある方に「松本キャラに似ているのは湖川さんの作画だったからでしょう」と言われた。「ええっ!」と思って、解説書のスタッフリストを見ると、アミアが初登場する20話「これがウルトラの星だ!! 第2部 凶悪星人バデル族登場」で、原画のトップに駅間我子の名前が。駅間といえば、確かに湖川友謙のペンネームだ。この話には作画監督のクレジットはないが、解説書には、20話の作画監督は彼が担当しているという記述がある。なるほど、『ザ☆ウルトラマン』なら、湖川さんはTV『銀河鉄道999』の作画監修を務めている時期だ。『999』のキャラクターを引っ張ってしまって、松本美女風に描いてしまったのかもしれない。ところが、同じ解説書にアミアのキャラクター設定が掲載されており、それを見るとやっぱり松本美女風。この頃の作品なら、ゲストキャラのデザインを各話作監が担当するという事もありうるが、果たして、この設定を描いたのは誰なのか。
 ウルトラシリーズの専門ムックシリーズ「ウルトラマンAge」で、アミアのデザインが話題になっていると聞いて、早速ネットで取り寄せてみた。2004年に発売されたvol.12だ。こういった本のバックナンバーがすぐに手にはいるのだから、よい時代になったものだ。ネット通販万歳。話題になっているのは、脚本の吉川惣司への取材記事だ。ここで彼は「(前略)これがもう松本零士さんのキャラクターそのままみたいな作画になってて(笑)。せっかく作画監修で二宮(常雄)さんがいるんですから、女の子くらい描いてもらえばいいのに…。これには、激怒しました(笑)。」と語っている。やはりスタッフも松本キャラ的だと思っていたのか。吉川さんの発言からすると、各話の作画スタッフのため松本美女風になったように読み取れるが、これだけでは判断できない。
 アミアのデザインが、メインスタッフの総意である可能性もある。あるいは、プロデューサーの誰かの意図だった可能性がある。『ザ☆ウルトラマン』が放映された1979年は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が大ヒットをした翌年だ。主人公のヒカリ超一郎を、『ヤマト』の古代進でお馴染みの富山敬が、ウルトラマンジョーニアスを、デスラー役の伊武雅之(現・伊武雅刀)が演じている。そして、主題歌は作詞が阿久悠で、歌がささきいさお。エンディング曲のタイトルが「愛の勇者たち」で、いかにも『ヤマト』的なフレーズが出るのは、阿久悠だからなのかもしれないが、このコンビを起用したのは『ヤマト』路線を狙ったためではないのか。その事を知人に話したところ、彼は「ゴンドウキャップとヒカリが軍服風の上着を羽織った姿が『ヤマト』風だ」と指摘した。確かに似ている。
 本放送時も、そのように『ヤマト』的な部分が散見されるのを、不思議に感じていた。「ウルトラ」シリーズで育った身としては居心地が悪かった記憶がある。アミアのデザインを含めたそのような類似が、意図されたものなのか、偶然が重なっただけなのか、機会があったら確認してみたい。
 『ザ☆ウルトラマン』のDVD-BOXでの一番大きな収穫は、なかむらたかし作画でも、アミアの件でもなく、タツノコ系の血の濃さだった。前回で「その話は次回で」と書いてしまったが、次こそ、その話を。

ザ☆ウルトラマン DVDメモリアルボックス
カラー/1224分/(本編1220分+特典4分)/ドルビーデジタル(モノラル)/片面2層×10枚/スタンダード
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■第100回に続く


(08.07.23)

 
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