板垣伸のいきあたりバッタリ!

第165回
メイキング・オブ・
『迷い猫オーバーラン!』

「『迷い猫オーバーラン!』の各話監督リストに板垣さんのお名前があったんですが……」
「え? こないだ言ってた“ラノベ原作のコミカライズ”って『迷い猫』の事だったの?」

 『迷い猫』の監督を受けてから間もなくの矢吹健太朗先生と自分のメールのやりとりです。仕掛人は篠崎真哉プロデューサーのよう。ま、なんにしても『BLACK CAT』以来久々に矢吹さん、篠崎Pと一緒の仕事ができるのは嬉しい事でした(『To LOVEる』は2本原画描いただけだしね……)。

 で、第147回の

につながるわけです。この時の電話が福家日左夫様からでした。ここで最初っから話題にされてたのが「第3話が放映されるまでバラさないでください!」と口止めされてた(公式サイトの“監督交渉中”ってのはそーゆー理由)

各話監督制!

というヤツです。つまり、「1話1話監督が別」って事。コレ、ちょっとアニメに詳しい方なら「昔の『(新)ルパン三世』とか『元祖天才バカボン』などと同じ監督不在の各話演出って事でしょ〜」と言われるでしょうが、ここはハッキリ「違う!」と言っておきます。『ルパン』『元バカ』の各話演出の場合、プロデューサーや文芸の方たちがライター(脚本家)の方とシナリオを作ってきて、演出に渡し「あとはよろしく!」です。
 ところが今回の『迷い猫オーバーラン!』というシリーズは

各監督さんたちがそれぞれ自分の話数のシナリオ作りから関わる

んです。つまり「シナリオをライターさんに指示して書いてもらう(例えば第2話)」も「シナリオを自ら書く」も各監督の判断に任されるわけです。早い話、通常シリーズの監督がやるホン読み(シナリオ会議)を1本だけとはいえ各監督中心で行われるシステム。だから俺は「監督判断」で自らシナリオを書いたって理屈。

ただ!

 福家さんより後日渡された全12話の構成案——原作の割り振りを大まかに書き示した叩き台のようなペラ3〜4枚——を見た時は驚きましたよ!

第1話——(希望・板垣 伸)

 いや、確かに「シナリオ書きたい!」とは言ったけど「第1話ってのは俺がやっていいハズがない!」って事で新宿のとあるホテルの喫茶室に福家さん、篠崎P、ジェネオンの中山Pを呼んで話し合いました。

 だって、どーしても、自分が第1話の監督になるのが納得いかなかったんです。以下の内容をそれこそ必死で熱弁振るいました。

そもそも第1話ってのはどんなアニメでもキャラ紹介でシリーズの土台を作る大事な話数。だからこそ大概のシリーズは第1話を監督自らがコンテ切るんですよ! なのに今回「総監督不在」で俺が第1話のシナリオ・コンテやったら、そのキャラが土台になっちゃうかもしれないし。何しろ今までに自分にお呼びがかかる時はいつもそのシリーズの6話以降——そろそろ変な話数があってもいいかな〜的な時期に1本濃いのを! って依頼ばっかりでしょ!?(『十兵衛2』も『この醜〜』も7話だし、『グレンラガン』も6、7話——しかも中山Pは板垣の『この醜〜』を知ってるハズ……)どー考えても自分よりも向いてる監督がいる!(現に今は明かせませんが、今後の話数でファンの方々がビックリする大物監督がズラリ並んでます。最終回などはなんとあの監督が……!?)

 かいつまむとこんな感じの事言って、何とか後の話数に入れてもらおうと試みたんですが、最終的にP御三方のうちのひとりが(あえて名前は伏せます)

逆にそれだけ色々考えてくれているからこそ板垣さんなんですよ

と言われて、結局第1話の脚本・コンテ・監督を引き受けて帰ったんです。

 ま、そーは言っても重責というのはある意味チャンスでもあるので、ここはもう

目一杯面白く可愛い『迷い猫オーバーラン!』第1話を作る!

事だけ考えようと思いました。たぶん『戦国BASARA』第13話(OVA・こちらも1本監督)のコンテを切ってた頃の話です。

(10.04.22)