第173回
仕事にはいつも感謝です
2010年に入ってアニメ業界、「仕事が減った」だの「仕事がない」だのと聞こえてくるようになりました。これはもう業界人でない方たちにも実感はあると思うんですが、単純な話、世間的にアニメの本数が減ってるからです。ま、ここ数年「本数が減る、本数が減る」と言われ続けてたので、ここへ来て「いよいよか!」てだけなんですが、こういう状況で仕事がいただけてる自分は本当に幸せなんだと思います。
監督だけではありません。原画でもコンテ・演出でも、仕事の依頼をしてくださる方々には本心から感謝してるし、凄くありがたいんです!
あと、今までやってきた仕事でも「やって損した(金額面ではなく)」とか「やらなきゃよかった……」なんて思った事などもありません。——これ綺麗事じゃないですから! そもそも
たとえその仕事がどういう結果(売れ行きとか)で終わろうが「こんなの受けなきゃよかった〜」とか言ってるヤツこそ、本気でそれに取り組んでなかったんですよ、俺に言わせると
だってどんな仕事でも一所懸命やると必ず仲間が増えるし、次の仕事に繋がる! それが「損した」なんて絶対あり得ないでしょう!
それと、仕事を選り好みする事もしませんね。正直、選べる立場でもないし。だからと言って別に卑下してるわけではありません。デタラメに卑下する事はそんな自分に仕事を振ってくださる方たちに対して失礼な事ですから。あとはやっぱり、
自分で仕事を作る。企画——特にオリジナルを考える!
これはもちろん夢だし「何か企画持ってきてよ〜」と言ってくださるプロデューサーさんもいるし、ときどき考えたりもします。でもいつも考えてる最中に次の仕事をいただけて先送りになってしまうんです。その時考えるのは、
オリジナルは後でもできる。それよりも「板垣、これやらない?」と目の前に依頼された仕事は、今、この時やらないとなくなる!
——なんです。自分のオリジナルこそクリエイターとしての最上級、という考え方が世の中的にあるのかもしれないけど、俺の場合は「仕事との出会い」を大事にしたいんですね、たぶん。おそらく、出会うという事は何かの縁。それは、その時の自分に欠落してる部分を補完すべく現れるものなんじゃないでしょうか? 人との出会いもそう思ってます。友人も仕事仲間も……そして恋人も。
それに、仕事をもらうのって面白いんです。これは、監督として企画をいただくといつも思う事で、
あ、俺って周りからこう思われてるんだ〜
と。で、原作なり企画書などを読ませていただくとたいがい好きになってしまい、「あーしたい、こーもしたい!」とプロデューサーさんにガンガン電話する事になるわけ。いろんなプロデューサーさんと喧々諤々やりましたが、幸いな事にたとえ諸事情などでその企画が実現しなくっても、「また何かやりましょう!」と言っていただける方が多いのが嬉しいですね。あ、ちなみにそのプロデューサーさんたちとの喧々諤々の末、その企画から手を引く事になった作品もありますが、それはみんなでお金を出し合って作る仕事(作品+商売)ですから、これもまたお互い納得の上で「手を引きます」ってだけで、その後もそのプロデューサーさんと(の関係は)は続いてますので……あしからず。
で、その幸せな板垣の2010年下半期はコンテ・演出2、3本と次の監督作の準備で、なんか忙しめで、楽しんでます
……だから今回も短い。
(10.06.24)