第191回
出崎版『AIR』と旅(2)

 今さらですが、この連載のタイトル「板垣伸のいきあたりバッタリ!」はアニメ様(小黒様)が考えてくださったものです。「どう?」とメールをいただいた時、瞬間で「いいじゃん!」と思ったのは、いきあたりバッタリこそ自分が目指す人生だからです。いや、これはこじつけではなく俺が敬愛してやまない『あしたのジョー2』の第45話での矢吹丈のモノローグ、

「どーだい、なんとかなるじゃねーかよ……。本当によ、なんとかなっちまうもんさ。先の事なんかサッパリわからなくたってよ、格好はついちまうもんさね……。俺は今までそーやってきたんだ! どんな時にもひとりでよ……」

が大好きで、「ひとりで」は寂しいのでできるだけだけなしにしたいんですが、何か道に迷うたびにこの台詞に勇気を貰ったのは確かなんです。

とりあえず先へ進めば何かが変わる、なんとかなる!

と大学受験をやめて専門学校の入学手続き、入寮の申し込みまで勝手に済ませて「あとは東京に行くしかない」状況に自分を追い込むのが両親や友達が呆れるくらい早かったのも出崎『ジョー2』のおかげだし、テレコム辞める時も、そしてこの連載を引き受ける時も! ゆえに「いきあたりバッタリ!」。
 『ジョー』だけではなく『ガンバ』『家なき子』『宝島』『コブラ』——すべての出崎作品一貫したテーマである「旅」はいくどとなく板垣に勇気をくれました。もちろん劇場版『AIR』も。とは言っても出崎監督ご自身が世界中あちこちブラついてるという話はちっとも聞きません。おそらく、

「旅」とは人それぞれの人生そのもの

という観念の問題なのだと思います。だって、単に移動距離が大きいほどエライって話じゃ残念すぎますからね。東京都内だろうと武蔵野市だろうとコンテ上だろうと旅は旅。つまり

出崎監督はコンテで旅をしている!

んです。たとえば旅人がその土地土地でいろんな人と語らい、人から人へ気持ちを伝える事は、コンテ上で人と人の気持ちの流れを追ってゆくのとなんら変わらないハズですから。だから、原作やシナリオという道に沿って進むハズもなく、出崎作品になってゆくわけです。登場人物や時代背景はおろか原作すらすべて違うのに

1作目の『ジョー』から『AIR』も、最新作『Genji』までもすべてひと続きのドラマ

に見えるのもそういう理由だと思うし、そう見えるのは俺だけでしょうか? こんな監督他にいない! カッコよすぎ!! でも自分の方は

とか言われます。しょうがない、これから『ジョー2』の金竜飛戦でも観てダイエットという旅に出るとしよう。

あ、そうだ! 『パンスト』観てくださいましたか!?

(10.11.04)