第193回
『パンスト』と
今石作品への道(2)
前回の続き。『アベノ橋』第3話の原画をやる事になったら間もなく制作さんが今石さんの描いたコンテを届けてくれました。これ読んだ時は本当にビックリで、
何か悔しいくらい文句なく面白かった!
んです。一見大雑把に見えて実はそこにちゃんと笑いの仕組み・計算ができてて「なんて賢い人だ!」とコンテだけ見てそう思いました。で、自分が担当したのは、
前半の宇宙に向かって立ち小便をするシーンと、後半のムネムネ海賊になって再登場
の2シーンで計10数カット(だったっけ?)。後でご本人から聞いた話では「あんとき(『アベノ橋』#3の原画マンの中で)は板垣君と西位(輝実)さんだけ初めてだった」らしく、けしてド派手なアクションシーンは振ってもらえなかったものの、小便を顔にぶっかけたり、あるみのパンツ(の臭い)を嗅いだりとそれまでどこからも描かせてもらえなかったバカバカしさで全然不満はありませんでした。早速作打ちしにガイナックスに向かいました。
別にガイナックスにはビビる要素はなかったし、そもそもその前に平松(禎史)さんの1話でも打ち合わせに来てたわけで。だから「あの鬼才・今石洋之」に会うという緊張感だったわけです。
あの原画でもコンテでも何でもこなすスーパークリエイターだから、きっとものすっごいオシャレでカッコよくて、ずっと向こうの方の望遠ショットの中にいてもひとりだけ広角パースがついてるような人に違いない!
と信じ込んでたもので、正直たぶん怖かったんですね。ま、そんな感じで会議スペースの席に着いたところ、
自分の目前に座ってた4人(たしか)の中には、そんな奇怪なオシャレパース人は見当たらず、「まだここにはいないんか? あっちから来んのかな〜?」と思ってたら、
と打ち合わせを始めたのは、目の前にいたとてもマジメそうな方で、その方が今石洋之さんだったわけです。
想像してたのとずいぶん違ってました……ゴメンナサイ!
そして打ち合わせを始めてみると、これまた見た目以上にマジメな職人気質な方で、なおかつ冗談も上手く、またコンテで受けた印象以上に賢い天才でした。さらにジャンジャン話を進めていくと無駄話も弾みまくり、最後には『元祖天才バカボン』の話とかでゲラゲラ笑ってたった10数カットの作打ちが結果2時間近くしゃべり倒してしまったんです。ちなみに数年後この時の話を今石さんにしたところ「君がひとりで勝手にしゃべり続けたんだ(笑)」——らしいです。
ま、そんなわけで今石さん本人と一度話してみたところで無駄な緊張は一気にぶっ飛び、とてもリラックスして描けたのが『アベノ橋』3話の放尿シーンでしたってトコで。
(10.11.18)