第251回
ブラック・ジャック FINAL
うむ! これは『ベン・トー』の話は来週にして、今週はコレについて語らねばなるまいっ! そう、
『ブラック・ジャック FINAL』!
なにしろ「出崎統監督の遺作」となれば俺が観ないわけにはいきません。去年もうすでに発売されてたのに『ベン・トー』の追い込み&自宅の引越しでなかなか手に入れる事ができなくてモジモジ年を越して、こないだたまたま行った秋葉原でやっと買ったんです。で、
いや……これは泣けましたっ!
最初、俺、出崎さんがコンテだけでも描き遺した——そうでなくても、たとえ誰か別な方のコンテでも『エースをねらえ!2』ばりに濃いコンテチェックをなさったんではなかろうか——などと思ってそれなりに「出崎フィルムを観る!」構えでDVDを再生したんです。そしたら全然違ってました。もちろんキャラ・作監は杉野昭夫様で撮影も高橋プロだから、一見出崎アニメはできてます。ただカットの流れ、シーンシーンのつなぎを見れば、コンテに直に出崎さんの筆がほとんど入っていないのは分かります。ただ、KARTE 11の桑原智監督の映像証言(このDVDではなく出崎監督の追悼番組における)では、「出崎さんの意見でセリフが変わった」とおっしゃってるので、コンテの監修は入ってるのではないでしょうか?(憶測) しかし、俺の見る限り「出崎さんなら、ここはもっと寄って次引き、でしょ!」とか「出崎さんはここの段取り端折るのでは?」などと思ってしまうので、やはり修正らしい修正はしてないのでは、と。でも
出崎さんを心から尊敬する方々が作り上げた
出崎版『ブラック・ジャック』!
と見方を変えれば、じゅうぶん感動します。桑原監督(KARTE11)も西田正義監督(KARTE 12)も「出崎版」であるという条件を踏まえた上で、ご自身の監督作品にまとめ上げてて、とても楽しませていただきました。KARTE 11は個人的に「もっと前の巻でやっておけばいいのに……」とずっと思ってたいた「ピノコの過去」の話で、舞踊の映像もとても美しく、ラストの「お姉ちゃん……」のセリフでドキッとしました。KARTE 12はサブタイ表記の頭に「DEZAKI'S FINAL CHAPTER」とあった時点ですでに泣けました、「これが最後なんだ」と。内容はどう見てもあの国がモデルになってる某軍事国家のお話で、アバンで拉致されるBJから全編スリリングで、これも好き! キャストもスゲー豪華です!
でも今回『ブラック・ジャック FINAL』の2本を観て、
今まであれだけ「コンテを切る」事にこだわり続けた出崎監督が、お体を壊し病床に伏したところで初めて他の方のコンテを受け入れた!
逆に言うと、そこまで
コンテに命を懸けていた!
んだと思うと、涙が止まらなかったです。DISK2(特典ディスク)での丸山正雄様(元マッドハウスCCO・現MAPPA代表)や宇田川純男さん(手塚プロ・プロデューサー)と桑原・西田両監督、そして大塚明夫さん(BJ役)、水谷優子さん(ピノコ役)らのインタビューでも「命を削ってコンテ切ってた」「けして諦めない」など、
出崎監督の熱さ!!
が伝わってきてますます震えました。皆さん、ぜひ観てください! 特にアニメ業界人で、創作意欲を失いかけた人は買って観る事をお勧めします。
(12.01.26)