第256回
『ベン・トー』の話(12)
何か、いろいろ話がとびとびになってて、どこまで書いたのか忘れたので、話題が重複するのを恐れずに進めることにします。「あ、同じ話だぞ、おい!」と思った箇所は適当に読みとばしてください。では……
『ベン・トー』#10はなんと言ってもアクションで、#04に続き「アクション演出」を自分でやりました。っていうか、#10は#04よりも「ほぼ毎日アクション原画を直しに直してた」印象しかありません。何しろ、Bパートのラストまるまる3分間アクションしっぱなし。いや、普通のスポ根モノとかなら、各キャラのド派手な技をバーン! と止め画で見せて、周りの解説キャラ(実況やセコンドなどなど)が「あの技は『〇〇〇パンチ!』——つまりあれは敵の退路を完全に退路を断つトンデモない攻撃で云々」と説明すれば何分でも尺がもつんですが、今作ではアサウラ先生もどこかのインタビューでおっしゃってたとおり、こちらから「必殺技って出しちゃダメですか?」と確認したところ、担当編集さんを通じて「アサウラ先生も、それだけはやめてほしいと言ってます」とストップがかかったんです。実際、アニメの制作に携わるスタッフって考える事は皆同じで、俺自身は「必殺技NG」ってもうすでに確認とった後からでも、会うライターさんやコンテマンなどいろんな方から「もっとアニメにしやすく、例えば必殺技を出すとか」な感じの「監督、もっと現場の事考えてよ」的なコメントを多数いただきました。それに対して毎回「いや、この作品のバトルは基本リアリティベースですから」とたしなめるトコから打ち合わせを始めてたわけです。でも、誤解を招かないよう付け加えますが、「スタッフの負担を軽減する」目的で「必殺技ダメ?」と一応確認はしましたが、俺個人の好みでは、現行のように「黙々と殴る、蹴る」の方が好みなんですよ! リズムも出るし。ただ、「アサウラ先生の要望」を免罪符にして結果的に板垣の好みのアクションスタイルで作れるまではよかったのですが、3分間殴って、走って、蹴って、ジャンプして——は本当に大変で、早い話アニメリズムでは「2秒間で4〜5発」はパンチ・蹴りが出ます。そして丁寧に描こうとするならば、「パンチ(蹴り)1発に対して原画4〜5枚」は必要なわけで、これだけで容易い事ではないんです。しかも#10は、ほぼ海外まき原画を100以上直す(半分以上は全修)わけで。たぶんかなり白髪が増えました。で、ふと、
と、つい物思いに耽ってしまい、ちょっと脱線しますが(またか!)、
思えば俺、いわゆるアクションアニメーターになるつもりってなかったんです
『ベン・トー』最終話のアフレコ後、毎度お馴染み「監督からキャストの皆さんに1人ひとり花束贈呈」の際、沢桔鏡役の堀江由衣さんに「『十兵衛ちゃん2』(堀江さんが主役のシリーズ)の第7話の空中戦、自分がコンテ・演出だったんです」と話したら、
と言っていただきました。そりゃあ周りの人からひとつでも得意分野と認識されるものがあるというのは光栄な事でとても嬉しいわけですが、自分としてはあまりピンとこないんです。最近、コンテ・演出の仕事を振られる時も、制作さんや監督から「板垣がやるならアクション系の話数を」とか気を遣ってくれます。ヘタすると中には「板垣さんに振るようなアクション話はないんですよね」と引かれる事もありました(だからGAINAXの『ダンタリアンの書架』のコンテは楽しかったんです)。
そんなに俺はアクションしか期待されてないの?
と落ち込んだりした時もあったくらいで、実は『ベン・トー』は最初、アクション以外のシーン以外、例えば「可愛い女の子とイチャイチャ」とか「楽しい学校生活」とかのパートを自分で率先して取ろうと目論んでたりもしたんですが、結果アクション話数をメインでコンテ切って、アクションの原画ばっかり描くハメになってしまいました。やっぱり、酷い原画を目にしたら直したくなってしまうんです。
それはおそらく——
(12.03.01)