第258回
『ベン・トー』の話(14)
前にもちょっとやった「こぼれ話」……また思い出したので。
若本さんのマネ
皆さんとっくにお気づきのように、#01で病院から出て白粉と登校するシーンで、佐藤(役の下野紘さん)が親父(役の若本規夫さん)のモノマネをしますが、あれは俺が指示したんです。もともと原作のアサウラ先生より「アニメ化の際の配役希望リスト」が委員会に提出されており(と言ってもメインは佐藤の父・母で、その他はあまり明確な希望がなかったと記憶してますが)その中に「佐藤の父/若本規夫」とあったんです。若本さんと言えば、自分も副監督で参加した『砂ぼうず』の雨蜘蛛役でご一緒した事があって、とてもユニークで存在感のある役者さんだと十分すぎるほど分かってたので、俺としては全然異論はなかったんですが、アニメ本編の方では諸事情あって父親エピソードに触れられなかったんです。で、アサウラ先生自身が書かれたドラマCD(「スーパーダッシュ&ゴー!」付録)のみに佐藤の父親が登場し、先生念願の若本規夫さんキャスティングとなったわけ。そのドラマCDの発売(雑誌の発売日)が2011年10月25日だったため、#01の放映時(10月8日)は「あれ、なんで下野さんは若本さんのモノマネしてんの?」と疑問を抱くはずで、その後ドラマCDを聴いた時「あ、なるほど!」と納得する——てのは面白い仕掛けになると思い、アフレコ時に指示。
結果、大当たりでアサウラ先生も大喜びでした。すると今度は音響監督の(明田川)仁さんが「じゃ、こっちの台詞もナース(女性)のモノマネにしたら?」と遊びだして、ああなったわけです。それもこれも芸達者な下野さんのなせる技ですね!(そーいえば『BLACK CAT』の時もトレイン役の近藤隆さんに「ミルクの歌」とかアドリブで歌ってもらったっけ) さらに追加すると、ドラマCDでの若本さんの快(怪)演はホントに最高でした。当然、音のみの作品であるドラマCDの演出は音響監督の仁さんがやるものなので、自分は席を外そうと思ってたら、アサウラ先生が「一緒に聴きましょう!」と誘うので立ち会ったんですが、もう2人で大爆笑でした! だってアサウラ先生が書いた台詞を若本さんがほとんどアドリブで作りかえていくんだもの〜。アサウラ先生自身もそれが楽しそうで楽しそうで。『砂ぼうず』の時を思い出しました。あの時の若本さんはひとつの台詞につき、2〜3とおりアドリブで演じて、こちらでいいのを選んでたくらいでしたから。
あまりにもアドリブが面白いものだから、たまに台本のまま演じてもらえると
って感激してたくらいでした、アサウラ先生が!
白梅のニーソ
学級委員長であり生徒会役員のような優等生がニーソックスっておかしくないでしょうか? やっぱり普通に白か濃紺のハイソックスにした方がいいと思います
これが白梅梅のキャラ表を作る際の委員会からの意見でした。もちろんこの意見は注文や命令などではなく、まさしく「助言」だというのは分かってました。つまり
原作1巻のラストではたしかに白梅はニーソを穿いてるけど、イラストはイラスト。ある1場面を1コマ描くだけなら違和感ないけど、アニメで学校内・教室内の他の生徒の中に立った時、白梅だけニーソだと逆に優等生に見えない!
てわけです。そりゃごもっとも! 「じゃ、ニーソはやめて白のハイソックスで」ってなるかあ!
白梅はニーソだからいいんです! 単なる普通の優等生じゃないトコが白梅の魅力なんだから!
とちゃんと説明した上で、
じゃあ、まわりの女子生徒たちもハイソックス——白でも紺でも黒でも可、そしてニーソも(もちろん白でも黒でも)可——という多少ゆるい校風だという事にしましょう! そーすれば白梅とバランスとれるから
って白梅のニーソを中和する(?)提案も加えて「OK」となりました。だから、佐藤のクラスメイト35〜36人のキャラを俺が描いたわけです。よーく見ると女子の中にニーソもハイソックスも混在してるハズ。その他、1話に出てくる狼たちやスーパーの店内客の参考キャラも描きました。そう、これがすなわち
デザインワークス!!
という役職なわけでした。その他詳しいデザインワークスの仕事についてはまたのちほど……。
(12.03.15)