板垣伸のいきあたりバッタリ!

第259回
『ベン・トー』の話(15)

そういえば#10、#11用のオープニングの話がまだでした

 ま、沢桔姉妹(オルトロス)が参入して何か変化がほしいという至極単純な理由で作ったOPなんですけど、新作(差し替え)カット数のわりに結構リニューアル感あると思います。そして今回新作部分の制作は、まず橋本裕之君にコンテを切ってもらうとこから始まりました。もともと『ベン・トー』の前に監督したシリーズで、橋本君より「演出をやりたい」と相談を受け、いろいろ話を聞いた上で「じゃ、やってみる?」と演出を任せてみようと思ったんです。橋本君は自分と同世代で同じくアニメーター。アニメーターを長くやってて「自分も演出やってみたい」と思う気持ちも十分分かったし、自分自身でも

俺なんかが監督やらせてもらえてるのは、運がよかっただけなので、その分業界に恩返しする意味でも自分で誰かにチャンスを作ってあげられるならできるだけ協力したい!

と常々思ってもいます。だからハッキリ「やりたい」と意志を示してきた人には制作さんらにOKをもらった上、なるべく演出でも作監でもやれる立場を作るようにしていて、橋本君の場合もそう。ところが前シリーズの時はコンテのチェック・修正まではつきあえたんですが、諸々の事情で処理(演出)までは面倒見てあげられなかった。今回『ベン・トー』をやる時に声をかけたら「ぜひやりたい」と言ってくれて、参加となったわけです。で、#02の時は彼の処理に対してかなり厳しく多めにリテイクを出して、部分的にこっちで直したり……と前シリーズで面倒見きれなかった分、丁寧につきあいました。#04用のOPの処理の話は前にも書いたので割愛します。
 その後がこの#10、#11用のOPのコンテ・演出となります。「江副(仁美)さんと同じ条件だけどやる?」と訊いたら「やりたい」と。そこからはEDと同じく、彼が(新作カットの)コンテを切っては直しの打ち合わせ——


 ——を2〜3回繰り返してできあがったコンテです。だから正直どこまで橋本君で、どこまでが自分が考えたのかほぼ忘れました。それと以下のカット内容の解説は分かりやすくするため、新カット旧カットもすべて順番に並べた上での通し番号をカットナンバーとしました(制作時は新作カットのみを抜き出して通し番号がついてたんです)。したがって、以前ここで(第240回)で記したOP1と同一のカット内容でもカットナンバーがズレてる部分があります、念のため。

C‐1〜3

旧OPのまま!

C‐4

沢桔姉妹登場カット。バックの文字、#10は「KYO(キョウ)」で#11「オルトロス」。#10のOP時点でまだ本編的に「沢桔姉妹=オルトロス」と佐藤たちには知られていない(基本的に視聴者にはバレバレでしょうが、あくまで物語上は)という事でKYO、#11はもう正体がバレたのでオルトロスになってます。原画は板垣が描きました。橋本君の描いたコンテとはかなり内容が変わってます。

C‐5

スーパー店内、陳列棚の間を抜けていくのは旧OPと同じ素材(CG+背景)ですが、今回は棚の送りを逆回しにして、一同が皆弁当を持って次々と駆けてきて、ラストあせびが佐藤に激突! カゴの中から飛び出すのが、#10は半額弁当で、#11はポカリスエット。キャラの動きと合わせるため、先にCGを2コマ打ちに割った連番でプリントアウトしてもらい、その上に原画を描くやり方で、ほとんど目分量で描いた「白粉をさらっていく白梅」が上手くいいタイミングでIN→OUTしてくれて、ホッとしました。このカットもラフ原まで自分で描きました。もしかしてそのままラフ原に直接作監修正のせたのかも(今回、処理は橋本君なので原画チェックしておらず、コンテチェックして自身で数カット原画またはラフ原描いたら、後はお任せなんです)。こーゆー元気なカットのラフ原描くのは楽しいですね。

C‐6

旧OPのまま!

C‐7

旧OPのままですが、メロディに対して合わせる位置をズラしてます。

C‐8

光り輝く夜景。BG(背景)オンリーもリズムにのせればカッコよく決まるんじゃないかと……。

C‐9〜11

槍水・著莪・沢桔姉妹と各ヒロインのブーツ・スニーカー・ニーソの脚。これは橋本君のコンテのままだったと思います。やっぱこの作品のヒロインは脚です脚! だってそれぞれの脚の装いが個性的でしょ?

C‐12

前のカットで臨戦態勢かと思いきや「皆揃っていただきます!」と。それだけではオチとして弱いのでジタバタするあせびちゃん。あせびちゃんが画面下へOUTしかかるようにスライドするのは気に入ってます。

C‐13

振り返る槍水。赤く染まった月にジャンプするカット(C‐6)の続きのイメージで。

C‐14

著莪の寄りから白粉・佐藤・沢桔姉妹へと派手に回り込んでバトル開始のイメージ。原画はもう20年のつきあいになる友人・宮下雄次君。

C‐15、16

割り箸ワイプのウィザードから立ち食い弁当まで旧OPのまま!

C‐17、18

学校の屋上で槍水の寄り・引き。夜空を飛ぶジェット機には誰が乗ってるのか? 両カットともラフ原は俺。

C‐19

ジャンプする槍水のブーツ。旧OPにあったカットのセルだけ使ってBGのみ公園からスーパーの床へ変更してます。

C‐20、21

ベッドで沢桔姉妹。これは橋本君のコンテのまま。これもラフ原は自分で描きました。寄りと引きで姉妹が逆になってるのはわざとです!

C‐22

涙を流す槍水と沢桔姉妹。本当は本編でもこーゆードラマやってみたかった……って感じで、俺がコンテ直し打ちの際に出したラフコンテがもとになってます。

C‐23

シールを貼る半額神(実は松葉菊)の手元。旧OPのまま。

C‐24

旧OPのC‐4をバックの文字「変態」に変えてあとはそのまま。

C‐25

旧OPのラストカットのカット尻「皆弁当の中です!」をズラしてそのまま使用。つまり編集で直しただけ。実はC‐23〜25はコンテ時は確定しておらず、編集で全体の流れを見て「あれとあれを差して!」とアドリブで選んだんです。OP・EDを作る際(結局本編でもそうですが)「編集の時にアドリブで思いついた事は絶対やった方がいい!」が俺の持論で、音と画が合って初めて気づく事ってありますから。だからこのあたりの「ダダダダダダダ♪」は「編集時埋めます」とコンテに書いたかな?(憶えてない)

C‐26

佐藤VS二階堂。旧OPのまま。

C‐27

著莪VSザコ狼たち。旧OPのまま。

C‐28

佐藤・著莪・沢桔姉妹へとカッコよく割り箸ワイプでラスト白粉だけ割り箸失敗でガックリ。橋本君のコンテでは普通にバトルのカットだったのを、こちらで最終チェックでこのカットに変更しました。制作さんから「1カットでもアクション減らしてください。お、重い……」と泣きが入ったので「ゴメン!」と橋本君に謝りつつ、反射的に思いついたカットです。原画は本編でも作監やってくださった浜津武弘さん。

C‐29

着地して振り返ると槍水、汗キラーリ! 旧OPのまま。

C‐30

沢桔姉妹VS槍水のアクション! 橋本君のコンテではかなり曖昧に描いてあったところを原画の東出太さんが強烈にカッコよく描いてくださいました。ラッシュ観た時痺れました、マジ!

C‐31

槍水VSザコ狼たち。旧OPのまま使ってますが、前カットの新作と合わせて偶然東出カットがつながった不思議〜。

C‐32〜36

部室で弁当を食べる佐藤と槍水からスーパーで拳を振り上げる槍水まで、旧OPのまま。

C‐37

——でラスト、メインタイトル画面。佐藤の横にいた白粉が「はっ!」として二階堂にその場を譲るのは、橋本君のコンテのアイデア。お見事です! このカットのラフ原も自分で描きました。キャラ総登場が描けて嬉しかった!

という感じでした。ちなみに歌詞が2番になってるのは、自分が音楽プロデューサーに頼んだからです。#10、11用OPはとにかく自分で原画描けたのが面白かったー!

(12.03.22)