板垣伸のいきあたりバッタリ!

第264回
ルパン、るぱーん!

 世の中——

内容的にそれほどではないのに「好き」というより「愛着のある」映画

ってありますよね? むしろ俺の場合「好き」「嫌い」で計るより、そっちのタイプ……つまり、どっからどー見ても世間的に賞を獲るような感じでもなく何十億儲かったわけでもなく、ぶっちゃけとても「面白い」とは言いがたいのに自分だけは愛してやまない映画のほうがとても多いんです。その数ある中の1本に、

『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』(1995年)

があります。アニメ誌の番組表などに「コンテ・演出」で記載されてるので問題はないのでしょうが、自分今ルパン(『LUPIN the Third 峰不二子という女』)やってます。というかその佳境!

やりたかったんです、『ルパン』!

で、その『峰不二子〜』を受けた際、何気に……ホント他愛ないほどなんとなく自宅にある『ルパン』シリーズ(といっても1stシリーズと出崎ルパンSPと『くたばれ!ノストラダムス』だけですが)を何年ぶりとかで観返してたんですが、やっぱ『くたばれ!ノストラダムス』は別格なんですよね〜、思い入れが。とにかく板垣の業界デビュー(初動画)になります。実際はジブリの『耳をすませば』の動画と交互に描いてたんですが、スタッフクレジット上、早く載ったのは『くたばれ!〜』の方(『くたばれ!〜』がGWで『耳すま』が夏公開)でした。そしてアニメに携わる者なら誰でも

初スタッフ・クレジット!

は嬉しいものです。何しろ自分の名前が活字になってフィルムに焼き込まれるんですから! そりゃウチの親も会社にパンフレット持ってって自慢したりもしますわな……(『くたばれ!〜』も『耳すま』も両方でコレやったらしいのに、その後親自身も慣れたのか「監督」のクレジットにはさして興味を示してないとか)。
 ま、そんなんで「初クレジット」というだけでも自分にとって特別な映画が『くたばれ!〜』なんです。もちろんそれだけではなくて、今はテレコムを出て大活躍されてる先輩方が、あの当時ギュッと集まってた作品でもあって、入社1年目でそれら凄い方々の原画に触れる事ができたのも思い入れが深い要因のひとつです。なぜなら、当時テレコムは動画の作業を終えるとそのカットを描いた原画マンのところへ自分で見せに行くシステムで、その際綿密に原画マンから良くない中割り(動画の1枚)などを厳しく指摘されてとても勉強になったわけです。今はジブリの田中敦子さんや『サマー・ウォーズ』の青山浩行さん、『鉄コン筋クリート』の西見祥二郎さん、『空の境界』第四章の滝口禎一さんらの原画を割っては皆さんの席まで持って行き指導を受けられたし、そうしたものだから『くたばれ!〜』は各原画さんの担当パートまで結構克明に憶えてて……、さらにラッシュが上がってくると全員で試写観て大判セルがガタらないように皆で祈ってたり。そうそうアフレコも見学させてもらえました。そういった意味で『くたばれ!〜』は数多くある『ルパン三世』シリーズの中でどこに位置する作品か? とか世間的な評価は? などはともかく、誰がなんと言おうと自分にとっては

愛すべき作品!

なんです。
 そして今、ルパンの新シリーズ『峰不二子という女』に参加してる幸せ……

(12.04.26)