板垣伸のいきあたりバッタリ!

第273回
机の上と散歩

いよいよ次の作品の制作が始まりました!

 まだ発表できない事だらけなので多くは語れないのですが、楽しくて可愛いシリーズになりそうです。とりあえず今現在、昼〜夕方までは先月からこぼれた原画の仕事をスタジオでやり、夜〜明け方まで新シリーズのコンテを自宅で描くという毎日……がしばらく続くでしょう。今年の初めから自宅作業がメインになってたので、スタジオに通うのは久しぶり。バスと電車を乗り継いで、ちょくちょく1駅分前で降りて散歩してスタジオに入ります。だーいぶ前、荻窪に仕事部屋を借りてた時にも、連載で紹介したと思うんですが、俺、散歩が好きなんです。おそらく小学校の頃に読んだ藤子不二雄(A)先生の「まんが道」の影響かと。「まんが道」の主人公・満賀道雄(藤子(A)先生自身がモデル)はマンガのアイデアにつまると散歩に出るんです、やたら。それを見て、当時マンガ家を目指してた自分は、尊敬する藤子(A)先生を真似する事で「俺もマンガ家になれる!」と信じてあてもなく散歩するのが趣味になったんでしょう。ま、結局マンガ家にはなれなかったものの、散歩好きな大人にはなりました(藤子(A)先生ありがとう)。

 実際、1日14時間机にしがみつくより、散歩に限らず間に適度な気分転換をしつつの10時間労働の方が作業も進むもんです。自宅からスタジオへの移動時間が強制的に散歩時間になってる今、凄く気持ちよく仕事できてイイ感じに充実中。ま、でも本当は目的地に向かう時点で「散歩」とは言いがたいですね。
 ところで、自分が好きだった「ちい散歩」の地井武男さんが亡くなられました。非常に残念です。「ちい散歩」は、特に毎日欠かさず観てたわけでもなく、観られるのは早起きした時か逆に徹夜した時だけだし、「今日の散歩コースは〇〇駅から〇〇駅までの3時間」とか言われても、「そんなに散歩する時間がある人ってなかなかいないと思う」などとツッコんだりしてはいたのですが、地井さんの優しさや自由さ、そして子どものような天真爛漫さがホントに好きで、スタジオへ向かう前に観られたりすると、気分よく自宅を後にできたんです。思い出すのは、当時通ってたスタジオの近くにあった旅館が番組で採り上げられた時の事。その旅館は普通の住宅街のド真ん中にあり、自分も散歩で通るたびに「こんなトコにある旅館に客がくるのかな?」とか「すでに潰れた?」などと思ってたんです。ところがその旅館に「ちい散歩」で地井さんがカメラを連れて入ってくれて、その気になる中身がTVを通じて観る事ができ、もう大興奮!! 急いで友人に電話したくらい!

地井武男さん、素敵な番組をありがとうございました! 謹んでご冥福をお祈りします

(12.07.05)