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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第100回
よし! 河森さんに会うか!
(後編)

前回からの続き)で、『バスカッシュ!』の監督を正式に受ける前に何回か河森さんと話しにサテライトに通ってたある日、フランスが生んだ天才、ロマン・トマ様を紹介されました。



 そもそも『バスカッシュ!』は河森さんいわくこのロマンさんが

「オリジナルで“ストリート・バスケ”ものをやりたい!」

 って言った企画が発展したモノらしいです。だから河森さんとの共同原作となってるわけ。板垣的に今回の『バスカッシュ!』、河森さんとお近づきになれた事と同じくらい大きな収穫(?)だったのが、ロマンさんと一緒に作品を作れるという事。とにかくロマンさんの絵は凄いです! こう言うと失礼かもしれないけど、自分がいままで関わったどの美術人よりも発想が豊かで、彼の描く建物ひとつ……いや窓枠ひとつ見ただけでも、キャラしか描いてこなかった俺たち日本のアニメーターの比じゃない引き出しの多さに圧倒されます。

「本物の天才アーティストです!!」

 まあロマンさんの話はまた改めて別の回を設けるとして、この時点ではまだ正式に監督を受けていない状態だった板垣に話を戻すとしましょう。
 何回かサテライトの応接室で河森さんとの話し合いを重ねた時、たまりかねた(?)河森さんが俺にキリ出してきました。



「そろそろ(監督を引き受けてくれるかの)返事をしていただけると……(多少苦笑)」

「あ、そりゃそーですね。わかりました。以前言ってた先に話がきた1クールの原作ものの話(第99回)、今週プロデューサーに会って決着つけるので、その後こちらから連絡しますよ」

 ……と俺。

「よい返事、期待してます!」

 ……と河森さん。
 で、それから数日後、河森さんが期待してた(本当に?)返事をしてました。

「『バスカッシュ!』の監督やります!」



 え? 先に話がきた“ラノベ原作の1クールもの”はどーしたって? そりゃ、現時点で他の監督の手により無事アニメ化され放映も終了し、ソフトもそこそこ売れすでに第2期を作るらしいです。よってここでその作品のタイトルや監督名を挙げるわけにも当然いきませんし、挙げたくもありません。そりゃ失礼だし、どちらかというと自分は先方から逆に断られた……というのが正確なとこなんですから。ただ、その断られた時のプロデューサー様の言葉は今でも突き刺さってて忘れる事ができません。つまり、その原作のラノベが俺にとってはかなり“ユル〜い”ものだったので、「このイラストの絵は使いたくない!」をはじめとする“かなり面白くするための板垣的・かなりの改変案”を提示した時のプロデューサー様の一言です。

「この原作はこの“ユルさ”のおかげで6〜7万部売れてるんです。つまりこの絵でこの原作に忠実にアニメ化すればDVDは5〜6千本は堅いんです。僕たちはもうそーゆー商売をするしかないんですよ。もし、それが分からないようなら板垣さんは古い人間だとご自身で思った方がイイですよ」

 ……ま、そんな感じで『バスカッシュ!』の方を監督する事になったのでした。



(09.01.08)

 
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