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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第108回
怖い映画でした

 自分は監督やってる時、極力新しい映画・アニメは観ないみたいで……。それは、今作ってる作品が影響受けないように……とかなカッコイイ理由ではなく、ただただ頭の中に監督作品以外の“ドラマが入ってこない”んです。前にも書いた事ですが、俺にとって作り話は、常に生活の一部にしたいほど、大したエンターテインメントではない! てのと、要するに頭が悪いからでしょう。
 そんな『バスカッシュ!』監督中、放映開始まで1ヶ月に迫った2月末、前から観たかった北野武監督の最新作「アキレスと亀」のDVD買ってしまいました。感想は一言。

 怖かった!

 北野武監督作品、自分は好きですね。撮り方が巧い(と思う)んです。Fix(カメラが動かないカット)の1カットに色〜んな意味を乗っけて、まったくムダがないかと思いきや、実におおらかに遊ばせるカットもあって、何か……やっぱスクリーン上でも芸人なんでしょう、ビートたけしって。しかも1作1作問題作ばかり。

 で、今回のテーマは、芸術家!

 “芸術”っていう得体の知れないモノにのめり込んでゆく夫婦の話。子供の頃に「天才だ!」と褒められて以来、ひたすら芸術を追っかける主人公が、まるで自分と重なって思えました。だから前述のように“ドラマが頭に入ってこない”現象はなかったんでしょう。すんなり観られました。そして、面白かった以上に

 怖かったんです!

 自分も子供の頃、絵を描くたびに褒められました。褒められると図に乗ってまた絵を描く。周りの人たちが喜んでくれるとまた描く……。この繰り返し。ヘタすると俺、この「アキレスと亀」の主人公になっていたかもしれないんです。ただ、自分の場合、第93回で書いたように、かなり早いうちに、パソコンゲームやゴルフクラブ作りという分かりやすい(?)ものに創作の矛先が変わったので救われたというだけで。  でもこれはまったく偶然なんですが、俺が高校生の頃、この「アキレスと亀」に似たマンガを描いた事があるんです。別に「先に俺がやろうとしたネタだ!」なんて言う気はまったくなくて、これ本当の話。言うまでもなく自分で描いたマンガの方はもちろん北野映画みたいに上手くないし、後半はラフのままでペン入れさえされていません(飽きっぽい板垣です……)。そんで自分の方は主人公の芸術家が誰からも認められないまま、ラストで死ぬんです。まったく救われない話でした。ただ、自分の中で考えていたテーマはこの映画に近かった事は間違いありませんでした。

 芸術を追い続けた果てに

 ――って言う。「アキレスと亀」のラスト30分はマジ怖かったです。戦争や殺し合いがある映画でもないのに、ヘタなアクション・バイオレンス映画よりはるかに死の臭いをプンプンさせてて。

 これ劇場で観たら確実に泣いてたな、俺。しかも悲しくて――ではなく、怖くて!

 ところが、最後まで主人公は死ななかったし、奥さんも戻ってくるってのにはヤラれました。そりゃあ、高校生の時の板垣程度では、こうはまとめられません。このラストのおかげで、何度も繰り返し観たい映画になりました、「アキレスと亀」……ってこれ、アニメの話じゃありませんでしたね。


 あ、でも「アキレスと亀」と一緒に『機動戦士Zガンダム ―星を継ぐ者―』も買いました。TVシリーズの『Z』の頃は確か小学5〜6年生で、話はほとんど観てないのと、最初に書いたとおり、監督中で頭にドラマが入ってこないため、話は分からなかったですが面白かったです!



(09.03.05)

 
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