ある日の帰り、マッドハウスの『大江戸ロケット』班のあるフロアにブラブラ遊びに立ち寄った時、面白いくらい吉松さんしかいなかったのです。――と突然、吉松さんが自分を指さして大笑いして言いました、
……ひどく御機嫌なサムシング様でした。
「白髪(シラガ)か。そー言えば目立ってきたかも……」
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ところで人間は本当に“苦労で白髪が増える”のでしょうか? まあ、マリー・アントワネットもパリに連れ戻される旅の恐怖によって老婆のような白髪(ハクハツ)に変わったと言うし……やはり世間的に“白髪は苦労の象徴”なようです。
最近の苦労? でもこれは自分だけでなくアニメ業界が困ってる事だと思いますが……単純に言うと“人手不足”――今動いている作品本数に対して、スタッフが圧倒的に足りていないのです。アニメを観て育った世代がプロデューサーになって、アニメ商売を次々と拡大してゆく一方で、現場のスタッフ達はあまり育ててこなかった事が問題かと思いますが、自分の実感では3〜4年前よりもさらに状態悪くなってますね、たぶん。
ただ、俺みたいなの(『B.C』に入った頃の板垣はまだ演出歴3年程度でした……)が監督の話をいただけるのも、制作本数が増えたからに他ならないので、悪いとばかりは言えませんが……。とりあえず、
って、コラムの中心で叫んでいたいです。だってコンテ出してから全カットの原画マンが決まるまでとにかく時間がかかるんですよ。なぜって、皆、作品“かけ持ち”してるからでして……。それで全カット埋まる頃には(埋まる前でも)カッティング……半分コンテ撮で、音響さんに頭を下げつつのアフレコを終わらせて落ちついてレイアウトチェックを再開すると、制作がやってきて、
「○○さんがつかまらなくなりまして、一週間連絡がつかないんですよぉ」
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と始まり、めでたく○○さんから引き上げ……。んで、時間がない中、再作打ち。悪くすると、次の原画様は“今回ラフ原まで”で……。つまり、二原さんにまく時、また作打ち……! そんなズルズル状態のままV編(納品日)時まで差し替え続けるのが、今のアニメ作りになっています。……だから、お願いです、
……確かに、アニメーターはなかなか儲かりません。けれど、これだけは自信持って言えます、
白紙に空間を作り上げて、その上でキャラクターに芝居をつける。どう考えても面白い仕事じゃないですか! だって、映画で言うところのカメラマンだけでなく、役者(俳優)にもなれるんですよ。歳とって腹が出て頭のハゲたオッサンになっても、アニメーターっていう役者である限り、美少年になれるわけで……。いや、美少年だけでなく“美少女”にもなれます。そればかりか、人間ではなく動物、はたまた自然物(火や水、風など)にもなれる職業……。
――それがアニメーターだと思います!!
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……ね? 面白そうでしょ? ――とは言うものの……。