出崎統監督作品『源氏物語千年紀 Genji』第1巻、買いました!
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ここ最近の出崎さんは本当に凄い! 『白鯨伝説』(1997/1999年)で一度中断した時はいくら出崎ファンの俺もさすがに“大丈夫か出崎監督!?”と思ったもんです(かなり失礼だ、俺……)。
その後、劇場版『とっとこハム太郎』シリーズ(2001〜2004)、劇場版『AIR』(2005)、劇場版『CLANNAD』(2007)と劇場作品の傑作を次々と世に送り出しただけでもありえない事なのに、TVシリーズ『雪の女王』(2005)、『ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008)では続けて全話コンテ。そして今回の『Genji』も。これは――
「いたんだよ、やっぱり。俺の……俺のシルバーが!」
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――ですよ、まったく。いったいあなたは何歳なんですか、出崎さん!
いや、ただ単に“全話コンテ”が凄いってだけじゃありません。監督作品が発表されるペースがもう尋常じゃない上に、さらに全話コンテなのが凄いし素晴らしいんです。次がまた『コブラ』っていうのもスゲー楽しみじゃないですか!
『Genji』の原作である紫式部の「源氏物語」といえば、自分が中学生の頃、杉井ギサブロー監督の『源氏物語』(1987)を思い出します。その感想は
観る者に原作が“古典”である事を意識させる格調高い上品なアニメ映画
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でした。
……のちに杉井監督と一緒に仕事をさせていただいた時(
以前書いた『キャプテン翼』(2001)です)、『源氏物語』のお話を訊く事ができたんですが、長〜くゆ〜っくりな横PANに代表される静寂の演出は、当時相当思い入れがあったらしく、とても楽しそうに話してくださいました。話はそれますが、杉井監督って出崎さんのような“決まったスタイルがない事”こそが杉井スタイルなんですよね(実はよーく観ると画作りの好みはあるんですが……)。本当、作品ごとにいろいろなスタイルを見せてくださる素敵な監督だと思います。
杉井監督の『源氏〜』とは対照的にいつもの――いや、いつもより華麗な出崎節でこちらも俺好み。今回気に入ったのは着物の模様に対するこだわり。
心情描写を着物で表現――本当に巧みです。そう、1990年代に入ってからの出崎監督作品は80年代の頃より……なんて言うんですかね〜、地に足が着いていない……というか画面を構成する上で、天と地を無視してる……いや、間違いなく意図的に壊してるんです。
90年代といえばジブリやI.Gのブランドが確立しつつあったと同時に
「やっぱり、アニメといえど映画を意識してレンズを通したレイアウトじゃなきゃ高尚な映像作品じゃないよね〜」
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て風潮であり、そんなムック本を参考にアニメーターたちがレイアウトを描いてました。あろう事か演出さんまでもがそれに影響されてコンテをきり出しました。俺はいまだに
って考えが理解できません。そんな中、出崎さんは80年代にも増して、流背や3回PAN・TU・TBを使ったし、心情・イメージ優先の画作りを強行したように見えました。まわりからの「今さら3回PANン〜?」などのツッコミに耳を貸す事などなく。
そして2000年代に入ると出崎さんのイメージはそのへんのエセ・リアリティとは違う映像としてすっかり定着した感はあります。そこからの快進撃が30代の自分より数倍パワフルで、本当頼もしいったら!
――ごめん、来週も出崎さんの話書きたいです!