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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第153回
メイキンング・オブ・
『戦国BASARA』#13
(……中編)

 『戦国BASARA』#13、自分に監督依頼があった際、すでにむとうやすゆき様のシナリオは存在してました。そして

“基本”シナリオに沿ってお願いします!

 とハッキリ言われてたので、今のかたちになったんです。誤解のないように! それでなくともシナリオに沿うつもりでした。だって、何しろご覧になられた方は分かってると思いますが、時系列的にはこの13話、

TVシリーズの第11話と第12話の間の話

 だからです。ラストが「魔王(織田)をやっつけろ!」で決まってる以上、勝手に話を作る事はできません。あとは

むとう(やすゆき)さんのシナリオがとてもカッコよく、スキがなかった!

 ってのももちろんな理由。そりゃあ『ガンダムUC』の古橋(一浩)監督が絶大に信頼されてるわけですね!
 ま、そんなこんなでコンテに入る前にむとうさんと小林裕幸さん(CAPCOM)と打ち合わせ。『Devil May Cry』以来久々の新宿・カプコン東京支社。



そこで「ここはあーしてよい?」「自分はこー描きたい!」などの打ち合わせ!

 「絶対こーしろ!」とか「原作はこーだから!」って注意をされるんだろうなあと緊張して向かった会議室で行われた打ち合わせは、予想に反しておおらかで、とても楽しく盛り上がって、最後はむとうさんも小林さんも――

お任せします、板垣さんに!

 と言っていただきました(もちろんNGポイントは明確に言われましたが……)。でも、前述のように“基本はシナリオどおり”が今回のテーマ。個人的には今まで切ったコンテの中で『鉄人28号』#15と同じくらいシナリオに沿いました。

さて、シナリオからコンテにする際が演出の半分以上を占めるんです、アニメは!

 って以前にも何回か話題にした事を改めて切り出してさっさとコンテの話に。一口に「シナリオどおり」とか言うと、いかにも「簡単」で「サッサと描ける」っぽく聞こえがちですが、「アニメの編集話」の回でも書いた内容よりも具体的に言うと

監督(演出家)のテンポって、例えばマンガ家の絵柄の違いと同じくらいの個人差が出る!

 んです。皆さん「なんでシナリオに従ってくれないのか?」とよく言われるんですが、よっぽどクソ真面目に考えれば考えるほど、シナリオどおりに進行しなくなるんです。だって、シナリオの言ってる事を誠実に語ろうとすればするほど「自分の言葉=絵コンテ」で語るしかないんですから。
 よって、今回のコンテはかなりシナリオを読み、咀嚼し、考える、の連続。故に、けっこう引っぱってしまい、すみませんでした、中武様・川島様。
 あと、プロダクションI.G様にコンテを提出するのが初めて、という個人的な理由もあり、いつもよりちょっと(……ほんの気持ち)丁寧に絵を入れたんです。俺、作品ごとに違うスタジオ(会社)で監督させてもらってて、その度1本目は必ず

具体的に思いつくイメージを時間の許す限り描き込む

 ようにしてるんです。スタジオ(会社)に……と言うより、スタッフの皆さんに自分の事を知ってもらうためでもあり――本音を言うとナメられないように(笑)? 故に、コンテ引っぱってしまい、すみませんでした、中武様・川島様。
 で、むとうさんのシナリオを咀嚼したからこそあのバカデッカイ「富嶽」が出たわけです。実はむとうさんのイメージでは、あそこまでデカくなかったんです。コンテ見たむとうさんより

富嶽デケェェェーーーーーーーーッ!!! (゚Д゚;)))

 のメールが送られてきたくらい。打ち合わせでも富嶽のイメージを訊いた際、

毛利と長曾我部が対峙して会話するので、デカイと言っても毛利と立ち位置が同じくらいかなあ?

 と仰ってたむとうさん。でも自分はコンテ切ってると

会話の距離なんて、映画でもアニメでもウソはいくらでもつける。むしろ長曾我部は、見下ろす事でテンションの高さを表し、毛利は、見上げる立場なのに眉ひとつ動かさない、冷たい男を絵面的に表現した方が、絶対にシナリオの意図に沿ってる!

 って思ったんです。だから島サイズな要塞・富嶽が誕生したんですね!

 ――というわけで今週も時間切れ。本当は“後編”のつもりで書き始めたのに……。



(10.01.21)

 
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