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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第22回
やっぱり出崎さん!
〜『D.M.C』情報#02

 出崎統様――!!
 俺が初めて覚えたアニメ・スタッフであり、いまだに一番尊敬する演出家です!

 て、自分が7年近く勤めた会社の先輩たちに言うと、すぐ「お前はどーせ、“3回PAN”とか“入射光”とか“止め絵(ハーモニー)”が好きなんだろう?」と聞かれたもんです。その時は、面倒くさいのもあって「そうそう」と答えてましたが――先輩たち、

 あの時の「そうそう」という答えは、真っ赤なウソです。

 はっきり言って、3回PANも入射光も止め絵も大して興味ありません! 自分で演出・監督した作品でもギャグを盛り上げる時以外使ってないはずだし、『BLACK CAT』の時の入射光で止め絵(自分で描いたイラストのカット)はハッキリ“大人の事情”です。
 7年近く勤めた会社の先輩たちも“出崎演出=映像テクニック”なんて言ってるから、ダメなんですよ! いいですか? 耳の穴をカッポじって……いや、両目見開いて瞬きせずよ〜く読みなさい! このコラムを!
 俺が出崎演出で“良い!”って思うのは、

 登場人物(キャラクター)をまるで実在する人物のごとく動かし、そしてドキュメンタリーのようにその被写体に迫る描き方!

 ――です。それゆえ、出崎作品はほとんどが原作ものなのに、ジョーもひろみもオスカルも原作どおり動いていません。それは他の監督の方たちが、

 「原作が面白くないから変えました」(原作のせい……)
 「理屈からすると、こういう行動をとるはず……」(理論武装)
 「こう変えなきゃ俺が監督やる意味ない!」(ただのわがまま)

 とか言って作った“単に原作を変えました”的な作品とは明らかに違います。現にアニメ誌に載ったコメントやインタビュー記事、あと最近のDVDのオーディオコメンタリーとかで、出崎監督は登場人物たちの事をまるで実際どこかで会ってきたかのように、

 「あいつは○○の事、好きで好きでしょうがなかったんだろうなぁ〜」
 「俺も奴が何を考えてるのかわからねえ」

 とか言ったりしてます。


 生意気ながら、自分もコンテをきる(描く)時の姿勢はいつも出崎監督のようにありたいと自然に思ってて、『BLACK CAT』の時も第6〜7稿まで書いていただいたシナリオを“コンテ時バッサリ……!”て事も少なくなく、ライター様やプロデューサー様、はたまた音響スタッフ様などからも「板垣はシナリオを使わない!」と言われました。  しかし、今回は違いますよ。『Devil May Cry』は!


連載コラム内短期連載! 板垣的・『Devil May Cry』情報 #02

 ……というわけで、6月14日より放送開始された『Devil May Cry』。実は今回、自分に監督の話がきた際、全12本のシリーズ構成とほぼ半分のシナリオが決定稿としてありました。しかも、原作のゲームは知らず(スミマセン、普段ゲームやらないもので……)、今石監督から借りてプレイしてはみたものの難しくて前進できず。
 それゆえ、自分にとっての『Devil〜』の始まりは、“原作ゲームのダンテ”というよりは“シナリオに書かれたダンテ”との出会いだったといえるでしょう。

 丸山様や井上様以下ライターの方たちが納得して進められたシナリオ。そこには、原作には描かれていないダンテ像がありました!

 ――んなわけで、第1話のコンテはまさにダンテという人物を探る作業から始まりました。しかし、CAPCOM小林様よりいただいた資料本でDVDをいくら見ても、諸設定やビジュアル、決め台詞などはわかったんですが、どうしても彼に入っていけませんでした。
 そして、入っていけないまま、ガイナックスでは『グレンラガン』#6のコンテをきってました。そして数週間、『グレン〜』#6のコンテは進んでも『Devil〜』#1のコンテは全然進みませんでした。

 ――ところがある日、あるきっかけがもとで、ダンテに迫る糸口のようなものが見えたのです!

 それは、ガイナックスでの鶴巻(和哉)様との雑談でした。

 板垣「今度、『Devil May Cry』というゲーム原作のアニメを監督する事になったんですけど、シナリオがもうあって……う〜ん、なんて言うか……原作ゲームのアニメ化というより、原作のキャラ3人(ダンテ、レディ、トリッシュ)を使ったオリジナルなんですよね。主人公の横に10歳くらいの女の子がレギュラーで出てたり……」
 鶴巻様「でも、それは正解だと思いますよ」
 板垣「そうですか? このゲームのファンの人たちは、こーゆー女の子キャラなんて望んでないと思うけど……」
 鶴巻様「いや、正しいんですよ、そーゆーキャラの配置は。だって主人公以下どのキャラも“超人”ばっかじゃ視聴者は入っていけないし、やっぱ普通の人の目線がなけりゃ、ドラマなんて成立しませんよ!」
 板垣「なるほど! さすが『フリクリ』の監督!! いい事言いますね〜!」

 “パティ”です!! 一般の視聴者が入りやすい普通の女の子・パティの目線でダンテに迫ろうとこの時思ったのです。いくらダンテが主人公だからって、ダンテの主観で描く必要なんてないと!
 それがわかってからは、パティが自分を引っぱってくれて、物語の流れはスラスラとまとまりました。事務所(“Devil May Cry”)に連れてこられたパティの、ダンテに対しての最初の感情“何、この男?”から、だんだんダンテにひかれていき、最後は“とりあえず、この男についてってみようかな”くらいまで。
 そして完成した第1話。井上(敏樹)様によるシナリオの勢いと阿部(恒)様による美しい作画。原画陣も豪華でした。
 冒頭、ダンテ対悪魔のシーンはマッドハウスの田崎聡様。『獣兵衛』TVの時同様、カッチリとした作画をいただきました。トレーラーに向かって発砲するあたりは、I.Gの江面久様。初めてお仕事させていただきましたが、髪のなびき、血しぶきなど激カッコよかったです!
 続いて、安宿でダンテに語るパティのシーンはガイナックスの柴田由香様。同時期に自分と一緒に『グレン〜』#6作ってました。お疲れ様です! オペラ座のシーンは室井ふみえ様、そえたかずひろ様、本村晃一様。屋敷での悪魔退治シーンは和田高明様! で! ラストの可愛いパティのシーンはまるまる中嶋敦子様!! その他紹介できなかったスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした! まだまだお付き合いください。
 そして

『Devil May Cry』#02 Highway Star
(脚本/菅正太郎 コンテ/板垣伸 演出/川村賢一 作画監督/菊池聡延)

6月21日(木)23:00〜 WOWOW スクランブル枠にて放送!

(この#02より、正規のオープニングがつきます……)

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(07.06.21)

 
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