アニメ監督以下メイン・スタッフを雲の上から引きずり下ろしたい……!
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って事です。
……いや、こう言うとヤケに過激に聞こえますが言い方を換えると、
俺がなれたくらいだから、皆だって、手さえ挙げりゃあ監督やキャラデになれるよ〜!
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と言いたいんです(……アレ? だいぶニュアンスが変わった?)。
昔話になりますが、俺が7年近く勤めた会社での話を少々……。自分が入った時、その会社は“演出兼作監”みたいな人が10人近く、その他単なる中堅作監みたいな人が数人……なのに常にまわってる作品は海外との合作が1シリーズのみ。つまり、会社的に演出・作監を増やす必要が皆無な状況に就職してしまったわけです。その時思った感想――
「こりゃ、監督はおろか、演出にさえなれねえかも……(ため息)」
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その動画1年目の時ったら、その演出や作監をやってる先輩たちが何の根拠もなく本当に尊敬できたことできたこと……。まあ、右も左も分からない新人というのはそんなもんで、前述のように、動画は動画で楽しく仕事してたわけです。
ところが、動画2年目ぐらいになると――
「あ、この先輩の原画はカッコいいけど、あの先輩の原画はダセェ〜」
「このくらいなら俺でも描けそうだあ」
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とか思いはじめて、さらに――
「何で社員だからってこんな下手な原画、中割りしなきゃなんないんだ!?」
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と本気で思いはじめた頃、原画試験に合格して原画になりました。
(注)もちろん、ちゃんとした原画マンもいましたよ!!
すると今度はレイアウトに入ってくる作監修正に対して、
て言ってトレスしないで原画にして提出したり、
「このコンテ、ダメでない?」
「このカットの前にこのカットの同ポジが要るでしょう?」
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と演出様に突っ込んだら突っ込んだで、
「コンテ描いたの○○さんだから自分で聞きに行って〜」
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って言うんです。業界人でない方のために説明すると、コンテと演出が別々の人の場合、“コンテの意をくんで作打ちをして画面を構築”していく人がいわゆる“演出”としてクレジットされます。現場では“処理”と呼ばれる仕事です。つまり、映画で言うところのカット割りやシーンつなぎなどの最も演出的な作業の手柄はアニメで言うと“コンテ”って事になります(ここ重要!!)。だから現場ではどちらかと言うと、コンテをきらせて(描かせて)もらえないと一人前の演出と認められていない場合が多いでしょう。のちに、杉井ギサブロー監督にはハッキリと、
と言われました。
まあ、話はそれましたが早い話、自分が7年近くいた会社では“コンテきった(描いた)のは僕(私)じゃないから、詳しい演出意図はわかりません”って先輩が平〜ちゃらで“演出様”と呼ばれていたのです。
(注)もちろん、ちゃんとした演出様もいましたよ!!
ちなみに、自分がコンテをきらず(描かず)“演出のみ”をやった場合のみ、平仮名で『いたがき しん』と表記しているのは、“コンテの人を演出だと思ってください”てつもりなんです(『刃牙』の1本目だけ、演出のみでも漢字表記になっているのはただのミスです……)。
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結局、その会社は“年功序列”だったんで重んじるのは実力よりキャリアで、当時の俺が演出や作監に対してギャーギャー喚いたトコで社長からすると、単に“板垣は先輩に対しての礼儀を知らない生意気な若ゾウ”だったに違いありません。しかもその当時の自分はまだギリギリその会社を信用していて……というか、本音を言うと、無理矢理信じようとしてました。
板垣(M)「……なあに。この会社はあの○○ ○監督や○○ ○監督もいたアニメ界の名門だからこそ、そう易々とチャンスがまわってこないだけで、時期がくれば自分にも必ず演出やらせてもらえるはず! チャンスさえもらえれば絶対にあんなダメ演出様より面白いフィルムを作る自信がある。もう少しのガマンだ!!」
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――これがその会社に勤めて6年目のモノローグです。そんな6年目のある日、社長と差しで飲みに行った時の事(社長はよく飲みにつれてってくれました)。
社長「M君もさあ、結婚して子供も産まれたんだからせめて作監くらいやらせねえとなあと思ったから、今度作監やらせてみるんだ」
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……この時です、自分の中で最後の何かがプツンと切れたのは!
その時話題にのぼったMという先輩は俺よりも3年もキャリアが長いくせに、原画の内容も量もたいした事ない原画マンだったんです。自分はその先輩を1ミリも尊敬した瞬間すらなく、その社長の考えを聞いた時、この会社で呼吸するのすら急転直下で馬鹿馬鹿しくなって――
会社辞めさせてください!!
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――て言い出した時はボロボロ泣いてました。