(前回からのつづき)
先々週描きかけだった馬越(嘉彦)様から……(失礼しました。平田(雄三)様とカニ食いに行ってたもので……。しかも先週は祝日で更新もありませんでした(汗))。で、『十兵衛2』7話で憶えているいくつかのエピソードを。
まず一つ目は、演打ち(監督とその話数の担当演出の間で、芝居内容やら画面処理やらの打ち合わせ)で印象的だった大地監督との会話。それは大地監督がチェックした7話のコンテを見て“場面をポンと飛ばす”ために入れたはずの“黒コマ”全てに“×”がうたれていた事に「?」と思って聞いてみた時でした。
板垣「あ、“黒コマ”不要でした?」
大地監督「うん。『チャチャ』の頃とかは竜ちゃん(佐藤竜雄監督)とかと競うように“黒コマ”でポンポン飛ばしてたけど、(今は)もう要らないでしょ!」
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やっぱりフィルムの進化(映画・アニメ問わず演出的見せ方の進化……ね)って、その時代の“観客の理解度”とともにあるものなんですね。確かに『十兵衛2』の時は“黒コマ”は不要でした。杉井さんの時もそうでしたけど、大地さんとももっとじっくり“演出”についてお話ししたかったです(いまだに心残り……)。
次は、作画について。前回書いた分と重なるかもしれませんが、作監の西位(輝実)さんをはじめ原画さんもすこぶる豪華に揃いました。この時期ガイナックスに出入りしていた事もあり、久保田誓様、柴田由香様、そして今石洋之様(2カット……)らに参加していただく事に成功! さらに西位さん方面より佐藤雅将様、玉川達文様、増永計介様らコクピットの方々も(……そうそう、馬越さんもコクピットでした)。マッドハウスさんからは内田眞樹様、村谷貴志様……あと元テレコムの後輩・秦綾子様も、皆様安定した実力者ばかりでした(つまり演出は楽!)。コクピットの佐藤さんの描いたフリーシャ十兵衛がツカツカ歩いて剣を突きつけるシーン(Aパート中盤)もカッコよかったし、その後のフリーシャ十兵衛対喜多歩郎のチャンバラは玉川さん、自由十兵衛対フリーシャ十兵衛の大空中戦は久保田君で最高でした(ありがとう!)。Bパートは一転してドラマシーンで、内田さんや村谷さんも非常に丁寧に芝居を描いてくださいましたし、ラストの温泉での鮎之介が自由を必死で介抱するあたりは正に柴田嬢の本領発揮といったところで、凄く好きなシーンになりました(余談ですが、佐藤さんは『グラップラー刃牙』でローテーション的に板垣演出話数と隣り合わせの話数で作監をされてた方でした。佐藤さんの『刃牙』はメチャクチャカッコよくて大好きだったので、この『十兵衛2』7話で初めて原画を見せていただいた時はあまりの素敵さに感激しました)。
三つ目に思い出すエピソードは、ガイナックスで原画チェックをしていた時の事(同時期に『この醜』もやってたので、『十兵衛2』の原画はガイナックスに持ち込んでチェックしてました)。大きな作業机を陣取って大判のレイアウトと撮影指定をバッサバッサめくっていた俺の目の前に“アニメファンならば知らない人はいないくらいの巨匠”が立ち止まったのです。
巨匠「何やってんの?」
板垣「大地さんの『十兵衛ちゃん2』ですよ。……うーん、こーゆー、枝から枝へとピョンピョン飛びうつるくノ一(御影さん)の、つけPANなんだけど、どう指示するのが分かりやすいのかなあー?」
巨匠「もう(撮影は)デジタルなんだから、タイムシートに、こことここで枝に着地とか書いとけばいいじゃん、合わせられるよ。セル(アナログ撮影)の頃はもっと大変だったろうけど」
板垣「あ、俺、セルの頃の演出ってやった事ないからそーゆー苦労知らないんですよねえ」
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今さら言うまでもなく、この時檄を飛ばした『○ヴァンゲリヲン』の巨匠とは、庵野秀明様と言いました。
そして最後はやっぱりV編。あいかわらず初めて行くところには必ず迷子になる板垣で、案の定キングレコードのV編スタジオに辿り着いた頃には30分遅刻。でも、遅刻した板垣を大地監督はあたたかく迎えてくださって、ガシリ! と握手をされ――
「スッゲーよ! 俺“劇場”かと思っちゃったよ!!(多少オーバー……) 森の中のシーンとか『もの○け姫』かと思っちゃったぁっ!!」
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って、何かよく分からないくらい喜んでくれて、俺の方こそ何かよく分からないくらい嬉しかったです!
そして、オチもV編で……。
大地監督「板垣さん来るまで、プレビュー待ってたんだよ! これは、板垣さん待たなきゃ失礼だっつって!」
板垣「……(感激)。ありがとうございます!」
大地監督「おい、みんな携帯切っとけよ。今回は映画気分で見なきゃなんねーからよ!」
一同「おう!」
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上映開始。