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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第68回
板垣的アニメ雑記(1)
アニメとの縁?

 前回舞台の芝居の話にちょっと触れたので今回から数回は

 自分にとってのアニメ

 について書(描)こうかと。まああくまで“板垣にとってのアニメ”についてですが。とりあえず突っ込まれる前に謝っておきます、今回大したオチに辿り着かないかもしれないという事を。でも、

 ま、いつもの事か



 ところで、なぜ今さらヤミクモに“アニメ アニメ アニメ”って書(描)き始めたかというと、この間また

 「アニメーター志望が減った」

 って話題がチラホラ聞こえてきたからです。俺があれほど(コラム第11回とか)言ったのに!! ……うーん、そっかー。このコラムはそんなに影響力がないんだそうですよアニメ様(あたりまえか!)。無理もないですよね、娯楽の歴史なんてこんなもんでしょう。アニメもゆくゆくは枚数ばっかシコタマ使ったアーティスティックな芸術作品だけが残って、一部の作画マニアだけが理解しうる伝統芸能になるんでしょ。そんな事は10年以上前から覚悟してたハズなのに、今ハッキリ言ってもがいてます。自分も20代の頃は

 「アニメで食えなくなったらマンガでも描くさ」

 て、矢吹先生らマンガ家さんたちに大変失礼な事をよく言ってクールを気取ってました(↑なイラストしか描けないとゆーのに……)。そんな俺も30代に突入するとやっぱりアレですね。引っ込みがつかなくなってきました。いよいよ潰しがきかなくなっていく感じ。で、

 「こりゃアニメで食ってくしかないかーっ」

 が今。でも別に惰性とかではなく、とにかくあらゆる事に飽きっぽい俺がこんだけ続いてる“アニメ”。たぶん向いてるかどーかというより、どっかのボクシングマンガのライバル同士が闘う動機づけの“運命”ってやつですか? いややっぱ、“縁”って言った方がいいかな? 縁って言葉は便利ですよね。友達、恋人、職業――大抵のものを、前向きに納得させてくれる、折り返し地点でやり直しがきかなくなった人生に欠かせないアイテムです、“縁”は。そして、俺がアニメをやっていけるのも様々な縁のおかげ。以前書いたと思いますが、中学3年生の時『あしたのジョー』以外のアニメにさほど興味がなかった自分の目の前に「月刊アニメージュ」を突き出し、宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』について熱く語り、「俺、将来アニメ監督になる!」宣言をしてた友人G。そのGに自分が冷やかしで描いたナウシカのイラストを見せるとGはなぜか「自信をなくした」と言って卒業と同時にアニメから遠ざかって行き、逆に板垣の方がアニメ監督をやってるのって、“縁”ですよね、このGとの出会いは(ちなみにGは高校に入ると立派に暴走族を組織し、俺とは離れましたが、20歳の時また再会して以来現在までよいつき合いが続いています)。
 こんなもんです。どこにでもいるよーな凡庸アニメーター板垣のアニメとの出会いは。んで、小さい頃に親が死んだり、親離婚したり、自分に嫌気がさして自殺を図ったりとかいう“陰”な部分がまるでない板垣でも監督とかやらせていただいてるんですよ。なぜこんな事言うかってーと、以前先輩のアニメーターに「自殺も考えた事ないヤツが演出なんてできるわけねー」って言われたからなんですが。そう、俺そーゆー影とか怨念とかまるでないし、影とか怨念で作品なんて作れません。ついでにどこぞの大型監督様が言うように「演出やりたければ大学ぐらい行っておけ」も実行していません。なにせ自分たちの世代は、世にいう第2次ベビーブームと呼ばれる(出生数200万人以上の)年の生まれ。一応バリバリの進学校といわれた高校には入ったものの、そこは中学校さえろくに通わせてもらえなかった両親を見て育った俺が、それほど勉強に熱心になるハズもなく……。信じられない倍率に立ち向かった同級生たちを横目に、大学受験に完全に背を向け通学途中に足繁くビデオレンタルに通う日々でした。しかも『エヴ○』にも参加してません。そんな俺が言う事書く事にまったく権威がないのは充分わかってるし、作品も歴史に残る「芸術アニメ」だったり「映像インテリアニメ」などはなかなか作れないと思います。だから、

 歴史に残らなくても見た人の想い出に残る作品を作りたい!

 って思ってるくらいです、板垣伸って男は。その程度の自分でも、アニメーターやら監督やらをやってられる、とってもおおらかなアニメ業界に入って一旗あげたいと思いませんか、皆さん?

 このなんのためにもならないコラムを読んでくださってるのもなにかの縁。
 アニメを見るのは確かに面白いけど、アニメを作るのはもっと面白いですよ!

 で、次回は普通に“板垣の好きなアニメ制作現場”の話(短くってすみません。これから新作の構成案合宿に行ってきます……)。



(08.05.22)

 
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