前回の続き――。
その3 気にしすぎない。反省しすぎない
ま、総括ですね(でも意外とここからが重要かもしれません)。
コンテを描くといろいろあります。「コンテの具合はどーでしょう?」と毎日のように制作様から催促された挙げ句、「ちょっと他の仕事の〆切りが……!」とか「シナリオに不具合が!」と言い訳をして1日また1日と引っぱり、最後には
と、B4サイズのコンテ用紙のせいにしたり(『十兵衛ちゃん2』の時、実話……)、それでも上げたコンテに監督から出来の悪い部分の指摘とともに、お褒めの言葉もいただけた幸せな事(これも『十兵衛ちゃん2』の時、チェック済みコンテに同封されてた大地監督からのメッセージ「冒頭シーンのイマジナリーラインが分かりづらいけど、アクションシーンは震えました!!」――嬉しくて今でも大事にとってあります)もあれば、ボロボロに直されたコンテを目の前に監督と大喧嘩して「こんなツマラナイ修正をするあんた(監督)と連名テロップになるくらいなら俺の名前消してくれ!」と怒鳴った事、さらに自分で処理(演出)しなかったヤツの完成品をTV放映で見て「オイオイ、そりゃあねーだろぉっ!」とコンテの演出意図をまるで理解されずフィルムになってしまったのに深く絶望を感じた事まで……。コンテを提出してからもまだまだドラマは続きます。
それでも、一歩も引いてはいけない! ――それがコンテです!!
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つまり、監督から大直しされても完成フィルムの出来が最悪でも挫けず
のです。監督の直し箇所が納得できるモノであれば謙虚に反省するのもありでしょうが、考え込むのは30分〜1時間くらいにして「今度こそ面白いの描くぞ!」と次のコンテへ……。修正されたコンテが、もとのコンテより面白くなくなってた場合、その監督に喧嘩を売り、2度とその監督のコンテは受けないよう、フリーの人は会社(スタジオ)を出て社員の人は迷わず会社を辞めましょう。会社とは、一度監督に立てちゃった人は、それがどんなダメ監督だとわかっても、まわりのスタッフが次々と辞めていく原因が当の監督本人だと発覚しようとも、
ものです。そんな会社にいたらずっと同じような屈辱を味わい続けるでしょう。そーなるくらいなら自分の腕を信じて別の会社から仕事を取った方がいいです、絶対に。
そもそも、オリジナル(もと)のコンテよりつまらなく修正する監督の作品が面白いハズがありません。コンテ大直しされて納得できず、しかもやっと演出になったばかりで会社を辞める勇気がない方――試しにその監督の作品を一通り見てみましょう。もし「面白くない」と感じたのならば、こう考えてみては?
「自分はこのダメ監督の手柄のためにこの会社で働き続けるのか!?」
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と。ちなみに板垣はそーいったダメ監督にはほとんど出会った事はありませんが……(杉井監督、(佐藤)竜雄監督、大地監督、今石監督――皆様、作品も面白いしチェック箇所も実に的確でしたし、8〜9割そのまま使っていただき幸せでした)。
――って、何か「コンテの描き方」というか「コンテを描きたい新人へのアドバイス」的内容にオーバーラップしてきたみたいなので、最後ははっきり
前回書(描)いた[1]〜[4]のコンテ作法を思い出してください。あれくらい簡単な事を知ってればコンテは誰でも描けるんです、本当! ただそれをヌケヌケとバラされてしまうと、演出家としての権威がグラついてしまって困ってしまう先輩たちだけが、
だの、
「演出(処理)3年やったら俺がコンテ面倒みてやってもいい」
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などと言っては制作進行1年目、動画1年目でコンテを描きたいという人たちの夢をブチ砕いてゆくわけです。だって、その先輩にとっては勉強して勉強して勉強して……やっとの思いでコンテを描かせて「いただける」ようになった立場なのに、今の時代アニメの本数が増えたからといってムヤミヤタラと業界1年目の若造に、演出家になられては困るんですよ。老舗の会社になればなるほどそーゆーくだらない先輩がのさばってる場合が多いので要注意です。本当についていくに値する先輩・師匠とは――
「コンテなんて“イマジナリーライン”と“キャラの方向合わせ”さえ知ってれば誰でも描けますよ」
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とヌケヌケと身も蓋もなく公表した上で、自身で作るフィルムも面白い監督・演出家でしょう。絶対に
「演出(処理)3年やったらコンテの描き方教えてやる」
「映画1000本も見てないヤツにコンテは描けねーよ」
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などとおっしゃる方について演助とか何年もやらないように。「勉強、勉強」言ってる間に人生終わりますよ。
……こーゆー事書くと怒る人いるんだろーけど、要するに
コンテは権威ある人に教わるものではなく、
何本も何本も描いて実戦で失敗、失敗、失敗……たまに成功を繰り返して身につけるもの!
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――って事です。