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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第85回
荻窪監督日記 その2
〜監督の仕事(前編)

 本日も荻窪の仕事部屋で書いてる原稿です。もーいっぱいいっぱい。毎日毎日コンテ執筆の日々をおくっております。前々から言ってるとおり、コンテきるのが大好きなのが板垣。苦痛じゃない! 苦痛どころか楽しくて楽しくて仕方がない! ……ハズでも



 ――です。そんでコンテ中いつも考えるのが

 監督って何する仕事か?

 なんです。ま、今自分がきってるのが自らの監督作品のコンテだからですが……。世間的にも「アニメ監督って何する仕事なのか?」と思われがちなので、ちょっと語ってみましょう。でもこれはあくまで

“板垣的”監督の仕事!

 って事で聞いてください。なぜなら、各々の監督によって本当にいろいろやり方があるからです。……いや、そればかりか作品の内容によってもやり方を変えるのも本来でしょうし。
 ちょっとアニメの制作工程に詳しいアニメファンの方々には「作品の面白さは監督の手柄」だと思われがちですがそんな事はありません。確かに監督はシナリオにもケチをつけるし、コンテも直すし、役者さんたちの芝居に注文出すし、音のつけ方にも一言言ったりします。でもそれって極々稀な場合を除き、すべて脚本家やコンテマン、音響監督といった各セクションのプロフェッショナルがいて初めて成立する話ですよね。実写映画の世界でもどこぞの若手監督がその道何十年のベテランカメラマンや照明さんに頭が上がらず指示どおり撮ってもらえない……なんて話があるように、アニメ業界でも、今では海外で映画賞とりまくる某映画監督が初監督の時は編集さんにフィルムすら触らせてもらえなかったって話もあるんです、実際。それ、自分の場合でも一部あてはまる話で……。残念ながらコンテと作画以外はズブの素人なもんで、板垣は。だから俺にはどこかの監督のように全話レイアウトをチェックするだけでなく背景も自分でイジって撮影も自らやったあげく音響監督まで兼任できる天才的仕事はこなせないし、天才にもなりたくありません。
 じゃ、天才じゃない板垣の監督の仕事は何か? それは――

脚本家やキャラデ、美術監督や撮影監督や色彩設計、編集、音響監督……あらゆるプロフェッショナルの“遊び心”で自分の監督作品を作る!

 です。そのためには――

作品の世界観、登場人物の性格づけ、理想のビジュアルや映像とかを、何十人……いや数百人のスタッフで共通認識しやすいものを目指す!!

 事が必要です。分かりやすく説明すると、例えば――

世界観は現代の日本、しかも東京。
登場人物はバカで2頭身。
理想のビジュアルや映像は立体感無視でフラットに。

 と監督が決めれば、どこの誰が描いても、塗っても、撮っても――



 となりますよね。ところが――

世界観は西暦30219年の超未来。
登場人物は基本的には明るいが、幼い頃両親が離婚して片親に育てられたため、ややひねくれた性格のニューハーフ。
理想のビジュアルや映像は、単なる写実的なリアリズムじゃなくキャラの感情にあわせて変幻自在に、時には音を視覚化するなど……。

 と監督が決めてしまうと――で、ゴメンナサイ! 今から『ミチコとハッチン』のラッシュチェックです! また来週〜!!



(08.09.18)

 
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