(前回からの続き。読んでない方は
前回分からどうぞ……)
世界観は西暦30219年の超未来。
登場人物は基本的には明るいが、幼い頃両親が離婚して片親に育てられたため、ややひねくれた性格のニューハーフ。
理想のビジュアルや映像は、単なる写実的なリアリズムじゃなくキャラの感情にあわせて変幻自在に、時には音を視覚化するなど……。
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――と監督が決めるとどーでしょう? 前回例に出した“現代・バカ・フラット……”より遥かに分かりづらくスタッフ全員が共通のイメージを持てず、世界観・キャラクター・映像作りを“他人に任せられない”監督君が誕生します。そーゆー監督君は、ホン読み(シナリオ打ち)の時はというと台詞の語尾のチェックしかできず(「このキャラは“〜よぉ”とか言わない」とか)、コンテをチェックすりゃ直すのは“絵面”ばっか。全話数全カットのレイアウトを監督チェックしないと成立しない映像を目指したあげく、ヒドイのになると全カットの原画チェックまでやってたり……。間もなくこーなります――。
結局、この監督君はスタッフを誰も信用できずチェックにつぐチェック祭りで、逆にスタッフの方から信用されなくなり、各話演出・作監には1話限りで逃げられ、グロス(外注)を受けてくれる会社すらも皆無になるんです。よくシリーズ後半でやたら監督・助監督・総作監が各話演出・作監のテロップに名を連ねてる作品てあると思うんですが、理由は大概コレです。
こーなる前に……というか実制作に入る前に、監督がもう少し気を遣って“スタッフ全員が遊びやすい世界観・キャラ・映像”にしてあげれば、監督自身も全話全カットのレイアウトチェックなんて小さいところじゃなく、編集やアフレコ、ダビングとか……もっとスケールの大きなところにこだわれるハズ。自分は各話演出の時、上記のような監督君を何人も見、その都度その監督君らに冷ややかな視線を送り続けてきました。じゃ、板垣が提唱するスタッフ全員がイメージを共有できる(比較的共有しやすい)設定――つまり“現代・バカ・フラット……”だったら、監督の仕事はこーなります。
●シナリオ打ち(ホン読み)
●コンテ打ち
●コンテチェック
と、コンテチェックまでが“バカ”というキーワードでこれだけスムーズに流れるわけ(“超未来・ニューハーフ……”ではこー簡単にゃいかないって事は想像に難くないと思います)。すべてがこんなにザバッといくとは限りませんが、板垣監督作はこんな感じに近いです。
●レイアウトチェック
(板垣は各話部分的にレイアウトチェックする事が多いです。50カット前後?)
図1を見てください。板垣はコンテチェックの際(自らきったコンテはなおの事)可能な限り図1のような画を潰して図2の画にします。図2の場合、足もとをフレームから切ってるため、最悪にパースが狂ってるレイアウトが上がってきたとして、さらに最悪な事にレイアウトを直す時間がなかったとしても、キャラをズラしたり背景をボカしたりすりゃなんとかなります。ところが図1で失敗するとどーやっても立ち直れません。いや、たとえ図1の絵が欲しくっても、図2にする事で作画がしやすく(キャラに芝居がさせやすく)なったり背景が楽できたりするなら、図2にするのが自分のやり方です。少なくともTVシリーズはっ! はい、“お前ぇーの演出はユルい!”と言うなら好きなだけ言ってください。俺、図1にこだわって監督の机の上をレイアウトの山にするくらいなら、図2のコンテでレイアウトをし、監督チェックスルーして作画に時間を与えて、アフレコ時に少しでもよい状態で役者さんたちに芝居をしてもらった方が絶対よいフィルムになるという確信してますから!
で、さっきの“現代・バカ・フラット”の作品にコレを応用すると――
こーなり、もはや監督がレイアウトチェックなどする必要なくなります。
多少オーバーに書いてますが、来週も“監督の仕事”の話を――