第139回 『四畳半神話大系』色彩設計おぼえがき 第0巻
先週、とある作品の準備のために、某監督以下数名で九州のとある離島へ出かけてきました。飛行機→車→フェリーと乗り継いで4時間ちょっと。こう書いちゃうと割と近そうな気もしますが、これがまたなかなかどうして……。
離島の生活は、ずっと東京で生活してる僕らには、いやはや、かなり目ウロコなほどまるで違っておりました。かと思えば、ある側面については東京なんかよりもずっと進んでたり。まさに「離島を舐めるな!」ってな具合です。素晴らしかった!
それにしても、島でイチバンに感じたのは、その静けさでありました。とにかく静か。人工的な音がなにひとつないくらい。なんと言っても、島内に信号がひとつ、というほどの交通量の少なさで、なにしろ車の音がしないのです。聞こえてくるのは鳥たちの声だけ。
日頃ぼくらはどれだけの騒音の中に暮らしているのかを思い知らされました。慣れっこになっちゃってる雑踏の音も、実はかなりの騒音なんだよな、と。
残念ながら今回の取材旅行は1泊でしたが、たまにはこういうところにゆっくり滞在して、身も心も静けさでリラックスできるといいんだろうな、と思った次第です。
さてさて。
みなさん、お待たせしました!(←なのかどうかは不明ですけどw) 「『四畳半神話大系』色彩設計おぼえがき」であります。DVD&Blu-rayも、今月末には第3巻が発売になります。なので、そろそろやっておくかな? って感じでスタートです!
初夏の頃に一度『四畳半神話大系』の色のお話はさせていただいておりますので(第124回 初夏の番外編 『四畳半神話大系』色指定さんへの注意事項)、全体の大まかなお話はそちらを。で、今回は「各話おぼえがき」ってことではじめます。
今回の各話「色」作業の流れですが、絵コンテが上がってきたところでまず「美術ボード打ち合わせ」というのをやりました。監督、各話演出、美術監督、色彩設計(僕ですね)が集まって、監督、演出からそれぞれのシーンのイメージを聞き、意見を出し合いながらフンイキを固めていきます。そこで実際に美術ボード用に本番の背景を描くため(通称「本番ボード」)にどのカットのレイアウトを優先するのかを決め込みます。で、そのレイアウトを基に美術監督が美術ボードに着手していきます。
できあがった美術ボードは監督と演出さんでチェック。そこで美術の方向はほぼ固まります。次にそれらのボードを基に、今度は担当美術さん、色指定さんも交えて美術打ち合わせ。ここで詳しいシーンの流れやイメージの打ち合わせです。
その打ち合わせを受けて僕が、各シーンごとの色味の設計に入ります。美術ボードの上にそのシーンで登場するキャラクターを載せて、いろいろ弄りながらシーンごとの基本の色彩設計を作り上げます。で、できあがったところで監督、演出チェックです。
その間に並行して、その話の「色彩香盤表」を僕が書きます。香盤表といっても、コンテの裏紙に「だ〜っ!」と細かく鉛筆で書きだしたメモなのですが、実はこれがかなり重要。この「色彩香盤表」とOKもらった「シーン設計」のpsdデータを基に、あらためて色指定さんとの打ち合わせ。
色指定さんは美術打ち合わせにも出てもらっていますので、演出的なポイントも含めて内容をちゃんと理解してくれてます。そこへ「実際のビジュアルがこうなるんだよね」というのをあわせて立体的に説明していく、という打ち合わせをしていきました。
アニメーションの作画は生き物ですから、こうして細かく打ち合わせしていても、実際に上がってくる作画カットは、またひと味違ったテイストになっちゃってたりしますので、それらに対応して色指定さんで色を考えてもらうポイントについての考え方や、一応僕の方でチェックさせてもらいたいカットのデータを回してもらう段取りなんかも決めちゃいます。
加えてその場でそのシーンごとの色指定データの「名前づけ」の打ち合わせとかも。
美術ボードにキャラクターを載せて決め込んだシーンごとの基本の色指定には、それぞれ名前をつけていきました。例えば第1話で言えば、私と明石さんの夕景の回想シーンの色指定は「夕景色A」、五山の夜、賀茂大橋上の雑踏の中のシーンの色指定は「五山色」、いつも占いお婆と遭遇する木屋町の赤いシーンの色指定は「木屋町色」、という感じです。で、その名前を彩色データに反映させるわけですね。「EVA011_Akashi&Watashi_kaisou.tga」ってな具合に。
これを決めておけば、色指定の打ち込み作業の時に便利なのですね。ま、実際には、彩色上がりをさらに色指定さんに加工してもらうことも少なくなかったのですが。
と、まあ、だいたいにおいて、毎回、このような流れで決め込み、打ち合わせを進めていったわけです。
ということで、前置きが長くなっちゃったので、今回はここまで。次回から各話おぼえがきに突入です。
第140回へつづく
(10.10.05)