色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第164回 昔々……103 1995年その22 『ドラゴンクエストVI』アイテムの色指定抱えて年越し!? な12月

諸般の事情により奥さんの実家から我が家にホームステイってことで滞在してる猫の「まお」。おかげさまでお腹の具合はよくなりまして絶好調。前にも増してたくさん食べます。
実はこの猫、以前から肥満傾向にあったため、ちょっと高めなダイエット食を常食としておりました。繊維質多めなカリカリ系ダイエット食。ところが、お腹の具合が最悪になった時に医者からちょっと控えるようにとの指導を受けまして、柔らかめな普通のエサ、ほらテレビとかでCMしてるような猫大喜び系缶詰なエサに切り替えてみたのです。ま、その方がエサに薬混ぜやすかったという事情もあったんですけどね。
ところがこの猫、飛びつかないんですよ、この猫大好き系なエサに。最初は仕方なく食べてたんですが、もうすぐに見向きもしなくなり完全拒否。
なんかね、どうも食感がイヤらしいのです。カリカリしてないとイヤみたいなのです(苦笑)。「俺はまだ若いんだよ。あんな歯ごたえのないフニャフニャした食べ物は嫌だ。男は黙ってカリカリなのだ」と、まさにそんな感じ。
なので早々にカリカリ系ダイエット食に戻ったのですが、それにしてもよく食べる(汗)。いくらダイエット食だからといって食べ過ぎは……。(続く)

さてさて。
スーパーファミコン用ゲームソフト『ドラゴンクエストVI 幻の大地』、カレンダーに続いて攻略本の作業です。本の正式なタイトルは「ドラゴンクエストVI 幻の大地 公式ガイドブック」。それが2冊に分かれていまして、上巻として「世界編」、下巻として「知識編」となっておりました。「世界編」はゲームの中の世界の地図とお話の展開中心な内容で、一方「知識編」はキャラクターたちの職業別能力とか呪文とか武器や鎧をはじめとするアイテム紹介とモンスターたちの図鑑からなっておりました。
「世界編」も「知識編」もどちらも基本はゲームの画面の画像が中心です。僕ら東映動画が担当したのは、まずはゲームキャラクターのカッコイイ画像と再現(?)場面の画像、そしてアイテムの紹介画像などなどでありました。
主人公をはじめ、ハッサン(武闘家)、ミレーユ(踊り子)、バーバラ(魔法使い)、チャモロ(僧侶)、テリー(剣士)といった、主人公と一緒にパーティ組んで旅をしていくいわゆる「メインどころ」のキャラクターたちは、カレンダーの制作の際に、先立って鳥山先生のイラスト画にあわせてテスト塗りして決め込んでありました。で、まずはそれらの立ち姿たち。彼らがワザとか呪文唱えたりしているポーズ画を数点ずつ。彼らが旅の途中で手に入れられるアイテム類を装備した画も数点ずつ。
次は脇役キャラクター。旅の途中で主人公の仲間として行動を共にする勇士やモンスターたち。それから、村や町、お城などで出会う、いろんな情報を持ってたりするキャラクターたちも立ちポーズで決め込みです。商人だとか酒場の娘だとか占い師のばあさんだとか。あ、王様なんかも決め込みました。この辺は特に鳥山先生の原案カラーイラストがあるわけではないので、東映動画で鳥山明っぽく画を作って、それをチェックしてもらって、OK出たら彩色という流れ。色については、ゲーム画面の実際の画面のキャプチャー画像から大体の色を拾いまして、それらしく色指定して作り上げていきました。

次いで彼らが活躍したりしてる場面をスチール画風に作りました。こちらは背景つきの止め画になります。アニメーションのカットのように、レイアウトを起こしてそれにチェックが入って、OK出たら作画して動画にして色指定して彩色して、そのセルを背景とあわせてスチール撮影に回していきます。これが実は結構な点数がありました。普通のアニメーションの制作さながらに、皆カットごとにカット袋使っての作業。止め画だからカット袋自体は薄っぺらいんですが、積み上げていくと結構な威圧感というかプレッシャーでありました。
しかも難しかったのが、呪文やワザのエフェクト表現。ゲームではなんとなくアニメーションがついてたりしてたんだけど、こっちはそれを止め画で作るわけですよ。動きがないのです。なので、まあ当然ブラシやタッチなどの特殊効果つきにはなるんですが、これがねえ、正直微妙(苦笑)。やっぱりね、しょぼくなっちゃうんですよね、どうしたって。先にも書きましたが、こっちはずっと『ドラクエ』やってきてるそこそこ熱いファンなわけで、その基準で考えると辛いカットは載せたくなかったりするんですよねえ。なので僕的にはとうてい不満な出来なカットはたくさんあったんだけど、もうそれは目をつぶって「先方がOKならOKだ」という割り切りでありました。

これらキャラクターと場面カット群が一段落したのが11月。この11月はとにかく劇場版『セーラームーンSuperS』の追い込みとTV『ご近所物語』、そしてまだ触れてないですが次の春公開の劇場作品2本の仕事もかぶってて、もうね、ステキな状況でありました。そんな僕の状況を考慮してくれたのかどうかは不明ですが(←たぶん違う)、後半戦のアイテム関係の作画が遅れまくりだったのです。
そしてドド〜ンと12月。嵐のようにアイテム攻撃(汗)。一気に色指定にアイテムたちが積まれました。武器、防具、装備、道具……。「薬草」から「神秘のよろい」まで、その数はいったい何点くらいあったんでしょうか。とにかく「ドラクエVI」に登場するすべてのアイテムを作画(セル画)にするわけです。これらの色も参考は様々で、前作までに登場したことのあるモノについては、形も色も同じに合わせます。参考に前作の攻略本を手渡されました(笑)。そして今回新登場のモノについては、やはりゲーム画面のキャプチャー画像が参考です。でも中には参考の画像がなく「◯◯っぽくまとめてください」的なメモ書きがついてるだけのものもいくつか。それらは微妙に僕オリジナルな感じになってたりしてるのであります。

まあ基本楽しくって仕方ない「ドラクエVI」のお仕事だったんではありますが、とにかく数が多くて色指定が追いつかない。とりわけキャプチャー画像から色を拾って作る作業は、ただ同じ色になればいいわけでもなく、当然見た目カッコよくならなくちゃならないし、既出のアイテムに似ないようにバランスを考えて配色したりという作業になるので、結構時間がかかるのです。しかも劇場作品の仕事の方をやはり中心にさばいていかなくてならないわけで、ついつい後に回し気味に。結果、このアイテム関係の色指定作業、大晦日までで終わらせられず、正月休みも返上でやりきったワケでありました。

そしてやはり、当のゲーム『ドラゴンクエストVI』は、それらが片づくまでお預けだったのでありました。

第165回へつづく

(11.04.26)