色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第52回 昔々……(33) 『天上編 宇宙皇子』スタート

台風接近中であります!

一晩中、ぐぉ〜〜! っと嵐吹き荒れてました東京地方、今朝も荒れておりますね。子供の頃は、こういう天気の時はレインコート(っていうか雨合羽)に長靴という出で立ちで、あえて外に出るってのが好きでしたね(笑)。

最近、雨の日に街や電車で長靴履いてる女性を多く見かけます。

長靴って言ってもね、某社のアウトドア系のちょっとかっこいいヤツ。彼女たち、それをブーツちっくにうまく服に合わせて履いてるんですよ。なんかステキでいいです。で、「これって男が履いたらどうなんだろう?」と。そう、当然自分でも履いてみたくなってます(笑)>アウトドア系長靴

で、メーカーのWebサイトでいろいろ調べてみました。おおっ! ありましたよ、男性用(っていうかユニセックス)のかっこいいヤツ。ふむふむ。思わず頭上にホワワンと浮かぶ妄想モード(笑)。ばっちり決まった自分の姿、妄想中……。よし! 決定!

ところがですよ! 僕の足、実はかなりデカイんですよね。で、サイズを調べてみたワケなんですが、案の定、イチバン大きなサイズになる模様。で……。

ううむ、Webサイトのオンライン・ショップでは在庫切れ。直営のショップでもどうなんだろ? 置いてあるのかな?(汗)

はたして僕は、かっこいいアウトドア系長靴で今年の梅雨を迎撃することができるのでしょうか?(笑)

ところで、本日のこの原稿、どうやら第52回であります。52回ってことは、TVアニメだとちょうど4クール、52週でちょうど1年ですね。まあ、この「色彩設計おぼえがき」の場合、時々、っていうか頻繁に「おやすみ」いただいたりなので、連載開始からはとっくに1年は過ぎてるんですけど、なんとなく「アニメ屋稼業」的には52ってのはいい区切りだなあとか勝手に思って、ひとりでプチお祝いであります(笑)。

さてさて。

『花のあすか組!2 ロンリーキャッツ・バトルロイヤル』『ヴァンパイヤー戦争』そして『Cryingフリーマン4 雄首冬獄』『Cryingフリーマン5 戦場の鬼子母神』。OVAのサイクルに入った1990年からのことをつらつら書いてきましたが、実は平行して大きなお仕事が動いておりました。なんと、OVAのシリーズ! なんと全13話! 『天上編 宇宙皇子(うつのみこ)』であります。

『天上編 宇宙皇子』原作/藤川桂介、キャラクター原案/いのまたむつみ、キャラクターデザイン・総作画監督/山崎展義、美術監督/松本健治、監督/今沢哲夫。製作は角川書店。藤川桂介氏のライフワークとも言うべきSF(?)大河小説「宇宙皇子」シリーズのアニメ化であります。

この前年(1989年)に同じく角川書店製作で劇場版『宇宙皇子』が公開されまして(アニメーション制作はトランスアーツ)、そちらが「地上編」のアニメ化。で、今度は続編にあたる「天上編」のアニメ化、ということなのでした。

OVAと言っても、並行して参加してた東映ビデオ系のOVAとは違って、基本はTVフォーマットの30分モノ。ちょうど13本=1クールのシリーズですので、それこそこのままテレビでオンエアできる、というサイズの作品でありました。

この辺の認識がね、いささか微妙でありまして(笑)、会社(東映動画)としては「TVと同じ尺なんだから、TV作品並のクオリティでサクッと作ればいい」だったのですが、僕ら現場のクリエーターは「OVAなんだし、尺もTV並みに短いから思いっきり手を入れてがんばろう」と(笑)。まあ、至極当然な流れですね(笑)。

確か1話につき2ヶ月くらいの制作期間が割り当てられてたような記憶がありますが、ひょっとしたら僕らががんばりすぎて時間かけすぎて、結果的に2ヶ月かかっちゃったのかもしれません(苦笑)。先行した話数のラッシュなり初号を観た次の話のスタッフが「よおし、がんばってこれ以上の出来を!」とがんばっちゃう、という流れです(笑)。ですので、回を追ってどんどん重厚な画面になっていくのでした。

僕はこのシリーズではキャラクターの色彩デザインと各話の色指定&検査を担当させていただきました。この時期ずっと東映ビデオ系のOVAとダブっての仕事だったのですが、東映ビデオ系のは「リアル路線」の硬めな作品が多かったので、それとはちょっと毛色の違う柔らかなフンイキをまとった印象の作品と感じたこの『天上編 宇宙皇子』とのダブりは、僕としてもバランス的にいい感じでありました。

ただでさえ気持ち入ってのめり込んじゃう傾向の強い僕なのですが、この作品には内容の他に魅力的な事情がありました。それはこの『天上編 宇宙皇子』シリーズ、なんとレーザーディスクで発売されることになってたのです。

今でこそレーザーディスク(以降LDとします)は過去の遺物であるのですが、当時の気分としましては「デジタル」で高画質な媒体でありました。VHSやβのビデオテープでは時間が経てば画像は劣化しちゃうけど、LDに記憶された画像なら半永久的にキレイな状態で再生できる、と。それはもう魅力的なシロモノだったわけですね。

この頃、同じように出てきたのは音楽の録再の新規格、MD(MiniDisk)でありまして、そんな感じで「デジタル」というものがだんだん一般化し始めた頃だったのです。まぁMDはまだ生きてますが、LDが「DVDの台頭」という形でハードウェアごとあっけなく終焉を迎えることになっちゃうとは、まるで思いもしなかったのでした(苦笑)。

さて。

「宇宙皇子」の原作って人気作品だってことは知ってたんですけど、僕自身、全然読んだりしたことがなく、なので制作の実作業に入る前に「まずはひとつ、原作を読破してみようかな?」と無謀にも原作本の文庫版を「どど〜ん!」と全巻一気買いしてみたのです(その時偶然にもその書店で佐藤順一氏とばったり! まとめ買いした文庫本見て「僕はこんな本の買い方するヤツはいまだ見たことがない(笑)」と大笑いされちゃいました)。

で、意気揚々と「地上編」1巻から読み始めたのですが……。

ああ、あえなく挫折(爆)。結局のところ、肝心の「天上編」まで行き着くことはなく、OVA『天上編 宇宙皇子』の日々が始まったのです(笑)。

■第53回へ続く

(08.05.20)