第58回 昔々……(39) 夏休みと「学校のプール」と「テレビマンガ」と
先日、自販機でお茶を買おうとした時のこと。「カンッ! チャリン」入れた100円玉が釣り銭受けに戻ってきてしまいました。「入れ方が悪かったかな?」と、もう一度。「カンッ! チャリン」でもやっぱり戻ってきてしまいます。
「あ〜、なるほど」
この100円玉、ちゃんとホンモノなのですが、表面がかなりすり減ってしまっていて、指で挟んだ感触も「薄い? ……かな?」って感じるくらい。だから自販機に弾かれてしまったんですな。ふと見ると、この100円玉の表面には「昭和49年」と刻まれておりました。昭和49年、僕が小学5年生の年に鋳造された100円玉です。ああ、もう、作られてから三十数年働いてきたんだなあ。
気になって、ポケットの中の他の小銭も調べてみました。すると、なんと、もっと古い小銭たちが。
昭和42年の50円玉、100円玉がひとつずつ、昭和47年の100円玉も。昭和50年の100円もありましたよ。ああ、意外と歳とってるんですね、硬貨って。
で、それら僕のポケットの小銭たちの中にあって、その「昭和49年」の百円玉がイチバンすり減ってくたびれてたんですね。もっと年上の昭和42年の100円玉の方がキレイでシッカリしてて、若々しく新しく見えるのですね。
なんかねえ、人間みたいですよねえ。
すり減った「昭和49年」の100円玉、どんな体験してきたんでしょうね? ちょっと考えてしまいました。
で、その自販機でのお茶、まだ若い「平成3年」の100円玉で買いました(笑)。
さてさて。
もう来週には子供さん学生さんたちは夏休みに突入ですね。
僕がまだ小学生だった、それこそ三十数年昔、夏休みの楽しみのひとつは、他ならぬ「テレビ漫画」でありました。まだ「アニメ」とかっていう言い方はしてなかったですよね? 「アニメ」ではなく「テレビマンガ」。
夏休みの期間、7月の後半から8月いっぱい、東京では10チャンネル——NET(現・テレビ朝日)で、平日の午前中に「テレビマンガ」の放送時間があったのです。「夏休みマンガまつり」とかなんとか、そんな番組タイトルだったでしょうかね? だいたい10時から1時間くらいの枠だったです。
どんなのをやってたかというと『チキチキマシン猛レース』や『キングコング』『親指トム』『スーパースリー』なんかのアメリカ製のアニメたち、それと『魔法使いサリー』や『ぴゅんぴゅん丸』なんかを再放送でやってたんですね。それがもう楽しみでね、むさぼるように観てました。
小学生の僕の夏休みと言えば、まず朝は6時に起きて(起こされて(笑))、近所の中学校の校庭にラジオ体操に行きハンコもらって、朝ご飯食べたあと家の庭掃除の手伝いさせられ、それから少しだけ机に向かって、「テレビマンガ」の時間まで夏休みの宿題の算数のドリルとかやって、と。そんな感じ。午後は虫取り網かついでセミ追いかけて近所を走り回ったり、自転車であてもなく走り回ってたりしていました(笑)。
で、そんな生活に「学校のプール」っていうやっかいなものが入り込んでくるんですよ。日によって午前だったり午後だったり、学年によって予定表が組まれていて、絶対行かなきゃならないってことでもなかったんだけど、ほとんど必ず行って(行かされて)おりました。まあ、行けば誰か友達は来てるわけで、バシャバシャと水に浸かってる分にはそこそこ楽しいこともあったんですが……実は僕、どうにも水泳が苦手だったんですね(苦笑)。
なので、あまり好きでもない「学校のプール」に、楽しみな「テレビマンガ」をあきらめてまで行かなくちゃならないのが、子供心にどうにもね、理不尽でね(苦笑)。いやはや(苦笑)。
当時はまだ夕方の時間帯にもアニメの再放送枠ってのがずいぶんあって、夏休み以外にも普通にたくさんアニメ観てたんですけれども、このね、いつもは学校へ行ってる時間にアニメ観られるってのがよかったんですね(笑)。
しかもこの夏休みの枠では、夕方やってるのとちょっと違った傾向のラインナップだったんですな。『チキチキマシン猛レース』や『ぴゅんぴゅん丸』なんて、夏休みのたびに繰り返しやってて、それが定番的によかったんですよね。考えてみたら、当時ってそんなに再放送できる国産アニメって少なかったのでしょうかね? どうなのでしょうか?
最近はアニメの放送枠もすっかり様変わりしちゃってて、昔では考えられなかった土日の早朝とか、深夜がアニメの時間になったし。それにまず再放送なんてないですしね(あ、深夜に「ガンダム00」とかしてますね(笑))。
でも、いまあらためて「テレビマンガ」が観たいなあ。今の子供たちに『チキチキマシン猛レース』や『親指トム』見せたいなあ。そして、そんなアニメを作りたいですね。
先日、中央線の車内からふと外を見下ろしたら、小学校でプールの授業やってました。はしゃいでる子供たち見て、なんかそんなことを思ったのでした。
東京も梅雨明け間近ですね。
■第59回へ続く
(08.07.15)