第60回 夏休み企画 聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編・エリシオン編 完成&放映記念全話おぼえがき(中編)
ここのところ、東京は暑さと雷雨にやられてます。
朝、あんなにいい天気だったのに、気がつくと頭上を黒い雲に覆われて、やがて空全体が光り出し、ゴロゴロと不気味な轟きが迫ります。業界用語で「戦闘空」ってヤツですな(笑)。
で、どばーん! ざっぱーん! と傘もさせないほどの嵐ですよ!
ちょうど夕刻、そろそろ帰れるって時に必ず、スタジオのある大泉近辺は「戦闘空」状態です(笑)。
今日もそろそろゴロゴロという轟きが聞こえてきました。ははは(笑)、狙われてますな(泣)。
さてさて。
前回に続いて「聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編・エリシオン編 完成&放送記念全話おぼえがき」であります。星矢ファンじゃない方々、今回もごめんなさいです(汗)。
『冥界編 後章』第1話 神罰!グレイテスト・エクリップス 演出/勝間田具治
『前章』が終了後、少し置いて『後章』の制作に入ったのですが、『前章』を終えていろいろ考えるところがあって、いくつか「やり方」を変更しました。
そのもっとも大きな変更は聖衣の質感ブラシ。質感ブラシとは、画に材質感を持たせるために、彩色が済んだセルにハイライト的照り返しや自然な影落としなどの処理を手作業で加えていくというものです。この作業は特殊効果班が担当します。
これまでの『星矢』では、ポイントになる画、カットにだけ限定的に質感ブラシを入れていき、あとは彩色したままのセルで撮影に回していました。しかし、やっぱり、質感ブラシの入ってない画はいかにもデジタル彩色な感じでペタッと平板に見えてしまったのでした。とりわけ、白い聖衣の星矢は主人公であるだけに致命的でした。
「やっぱり、全部のカット、全部のキャラに質感ブラシ入れましょう!」これはもう僕のごり押しでいろいろ説得して廻りまして、『後章』からはすべてのカットに質感ブラシの処理をお願いしました。
ということで、彩色上がりのチェック後、すべてのカットは特殊効果班の「『星矢』チーフ」勝岡氏に回され、勝岡氏の統括の下、質感ブラシ処理が加えられていったのでありました。
第1話の最初のラッシュを見て荒木さん、「こんな感じで全部にブラシ入ったらいいねえ」。「全部入れますよ!(笑)」と僕。「じゃあ、作画がんばらなくっちゃねえ!」その時の荒木さんの嬉しそうな顔に僕らも嬉しくなったものです。
『冥界編 後章』第2話 一輝!慟哭の拳 演出/勝間田具治
『前章』で色指定をお願いした小日置さんに逃げられてしまったため(笑)、『後章』はすべて僕が色指定を担当しました。
1話、2話と、「ハーデス瞬」と一輝とパンドラを中心にお話が進みます。正直地味めな展開です(笑)。なので、いろいろ小技使って遊んでます。
そのひとつが、一輝がパンドラにアンドロメダを語るシーン。神話の鎖に繋がれたアンドロメダのイメージに瞬の顔がダブると、それまでオリーブ色だったアンドロメダの髪が瞬の髪色の緑に変わります。撮影指定でオーバーラップさせたりしたのではなく、この色にこの色が重なるとこう見える、ということだけなんですが、ちょっといい感じ(笑)。特に演出指示があったワケではないのですが、こんな感じで時々「色」でアクセント足して遊んでました。こういうのも、自分で色指定やってるとできるんですね(笑)。
『冥界編 後章』第3話 女神!その命をかけて 演出/西沢信孝
アテナによって瞬の身体から追い出されたハーデスの魂、原作ではエクトプラズムそのまんまの白い塊だったので、最初は白い光のように作ってみたのですが、これがどうにもフンイキがうまくあわないのです。「やはり邪悪を感じさせる色にした方がいいね?」と、西沢さん。よって青黒系に赤いハーデスのオーラ、という処理に。
『冥界編 後章』第4話 絶望!嘆きの壁 演出/佐々木憲世
やっとこさコキュートスを脱出した星矢は「嘆きの壁」へ。「嘆きの壁」の前での基本のキャラ色、実は「ハーデスの間」の色味と同じであります。僕自身、この色味のバランスが気に入ってたのと、たまたまその色味の色見本を「嘆きの壁」の美術ボードに載せてみたら、なんとまあピッタリだったのですね(笑)。
あ、コキュートスでの色味もお気に入りでありました。
『冥界編 後章』第5話 終結!黄金聖衣 演出/勝間田具治
やっぱ、ゴールドクロスですよ!(笑)。何をおいても、ゴールドクロスは画面立ちして最高です。
「全カット質感ブラシ」を強行してきた『後章』ですが、さすがにこのあたりまでくると制作スケジュールが押しまくりでピンチでありました。でも、ゴールドクロスに質感入れないわけにはいきません(苦笑)。とりわけラスト2本は特殊効果班がとことん踏ん張ってくれました。もう、感謝です。
『冥界編 後章』第6話 さらば!黄金の聖闘士 演出/西沢信孝
『後章』もいよいよラスト。まさに「さらば!黄金の聖闘士」。……まあ「壁」の前で延々立ち話だったりしますが(苦笑)。ここで『エリシオン編』への橋渡しです。
そして、ここでも真打ち・一輝が最後に登場(笑)。つくづく美味しいヤツです(笑)。
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「声優陣の交代」とか、いろいろあった『冥界編』でありますが、こうしてなんとか走りきったのでした。
■第61回へ続く
(08.08.06)