色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第77回 昔々……(48) まずは「地球の歩き方・フィジー」を買いました

先日、友達に会いにちょっとソウルへ行ってきました。

以前一緒に仕事をした韓国人の友人と、時々こうして会ってるのです。ちなみに若い女性お2人です(笑)。美術館に行ったり、オシャレな界隈を散歩したり、地元なお店でおいしいものをいただいたり、彼女たちのエスコートで普通の観光旅行とはひと味違ったソウルをいつも堪能できてます。

それにしても、ホント、近いです、韓国・ソウル。飛んでる時間は2時間ほど。福岡とかへ行くのとそんなに変わらない距離感で着いちゃいます。で、着くとそこはあんまり日本と変わらない風景。行き交う人たちの肌の色も日本人と変わらないし、先だって出かけた大阪とか博多とかとあんまり変わらない感じです。そうそう、エスカレーターも右側に立つし(笑)。

でも、やっぱり決定的に違うのは街中の看板にあふれてる文字たち。いやあ〜、全く読めません>ハングル(苦笑)。空港から1人で地下鉄に乗ったんですけど、もうね、全然わかんない。ソウルの地下鉄も東京とおなじように駅に「通し番号」振ってあるんですが、それを頼りになんとか目的の駅までたどり着けました。

あ〜! そうか!

東京に来た外国人の人たちも、きっとおんなじなのですね。初めて地下鉄の駅の「通し番号」の重要性に気がついた僕でありました。

さてさて。

原作どおりに「主人公=日本人」で仕切り直しとなった『Coo 遠い海から来たクー』。とりあえず立ち上げたスタッフルームも、まだまだ忙しさにはほど遠い状況でありました。肝心のシナリオ自体がまだ進行中だったし、まだまだ各種設定も取りかかったかな? くらいの状況。僕自身も別の作品(劇場版『ドラゴンボールZ』などなど)とかの方がむしろ忙しい状況でありました。

色指定(色彩設計)的には、つまるところキャラクター設定が出てこないと仕事のやりようがないわけで、とにかく設定が出始めるのを待つしかありません。それでも一応前向きに、原作を読み返してみたり、とか……まあ、それくらいか(苦笑)。

一方監督以下メインなスタッフ(企画PDの田宮氏、作画監督、美術監督)は、物語の舞台となるフィジー、タヒチへロケハンに出かけていきました。

さすがに色指定の僕は連れて行ってもらえませんでした(泣)。残念。あとで監督に聞いたところによれば、めちゃくちゃタイトで余裕のないロケハンだったそうですが、それでも飛行機で上空から眺めた美しい海と珊瑚礁は、それはそれは素晴らしかった、とのことでした。

いいなあ。

実は僕、その当時はまだ海外に出かけたことがありませんでした。パスポートすら持ってなかったのです。きっと今なら「自腹切ってでも一緒にロケハンに行く!」とか言いだしてただろうなあ、と思います(苦笑)。

あ、いや、たしか当時もそんなようなこと言った気が……(苦笑)。

でもまあ、結局のところ、僕は連れて行ってもらえず(実際、西尾監督の劇場版『ドラゴンボールZ』の仕事で行きたくても無理だったのですが)、仕方なく、ポツリポツリとフィジーやタヒチの資料とかを集め始めてました。

まずはヴィジュアル。海外の資料を集めようとか思ったら、まずは書店。写真集とか、その手の書籍を漁る、ということになります。しかし、高い! ちょっとした写真集はさすがにいい値段がついてるのですね。そうそう簡単に手が出せないくらい。その当時はまだ、今のようにインターネットなんていう便利なものもありません。

ロケハンに連れて行ってもらえなかったものだから気ばっかり焦ってるのですが、じゃ、実際どんな資料が自分に必要なのか? と考えたとき、「……(汗)」どうにも自分でもよくわかってなかったのですね(苦笑)。

そんなある日、1冊の本に出会ったのでした。それは『地球の歩き方・フィジー』。

旅行ガイド本には、まさに僕が(たぶん)欲しかった情報がみっちりと載っておりました。今では掲載地域の区分が変わっちゃってるかもなのですが、確かこの本には、フィジー諸島やタヒチの情報がつまっておりました。

皆さんもご存じかと思いますが、この『地球の歩き方』、正直写真はそんなにきれいなわけでもないし、載ってても結構小さいのです。それでも現地のフンイキとかが何となく感じられる気がして、あらゆる情報を頭に入れていきました。

後にも先にも、これほどまでに隅々まで旅行ガイドを読み倒したことはありません。どれくらい読んだかって言うと、もうね、タヒチのパペーテの街の主要部の地図をなんにも見ないで正確に描けるくらい! おすすめの中華レストランの場所までシッカリ頭に入っておりました(笑)。

とっても役に立ったガイド本。僕が生まれて初めて買った、海外旅行のガイド本となりました。しかしながら、実際にこの本で紹介されている場所へは、いまだ行けてない僕なのであります。

■第77回へ続く

(09.01.28)