第1回 色彩設計と色指定って?
はじめまして。辻田邦夫と申します。色彩設計・色指定という仕事をしております。
このたび、アニメスタイルに場をお借りして、いろいろ書かせていただくことになりました。ひとつよろしくお願いします。
アニメーションに関わる人たちの記事とか連載とかって、やはりどうしても演出や脚本、作画や美術が中心になりますね。なかなか色指定や仕上の仕事って取り上げられないもんです。で、ここではそんな仕上や色彩設計・色指定のことなんかを書かせてもらおうと思ってます。……とかいいつつ、どっちの方向に行っちゃうか、まだまだ皆目わかんないですが(笑)。
さてさて。
僕はアニメーションの仕事の中で[仕上]、主に色彩設計と色指定という仕事をやってます。色彩設計? 色指定? なかなか分かんないですよね? 今回はまず、そんな仕事のだいたいのお話から。
アニメーションの画面製作の過程で、[絵コンテ]→[レイアウト]→[原画]→[動画]の順で進んできた画は、次に[仕上]に渡ります。ここではでき上がってきた線画に色を塗って撮影できるように素材を整えるワケなんですが、じゃあ「塗って!」と言われても、その画をいったいどんな色で塗ったらいいのかが分かりません。そこで必要なのが[色指定]という仕事です。
[色指定]はそのお話のすべてのカット(原画・動画)について内容をチェックして、指定を入れていきます。例えば「このキャラはこのカラーモデルで」とか「この岩の色はカラーチャートの○○番の色で」といった内容をひとつひとつシンプルに分かりやすく「指定」を入れていきます。で、その時に、その指定を入れるための大元のカラーモデルや約束事が必要になります。それを作るのが[色彩設計]になるのです。
[色彩設計]の仕事は「キャラクターの基本の色を作る・決める」そして「その作品の色味の方向性を作る・決める」という仕事です。キャラクターデザイナーが描いたキャラの線画に色をつけて行くわけですが、監督(演出)、キャラデザイナー、美術、プロデューサーらと意見交換・打ち合わせしてイメージを構築して、実際の色に置き換えていくわけです。マンガとかの原作があるときは、まずその原作にある色味を参考にしていきます。
そうして決めたキャラクターの色味をベースにして、その作品全体の色味の世界観を作っていくのです。それには今度は[美術]との連携が重要になります。「夜のシーンはどれくらい暗くするのか?」「夕方は西日が強いのか弱いのか?」とか、美術ボード(背景画)に載せながら決めていきます。
そして[色指定]と打ち合わせして、実際の色の指示をお願いします。この[色彩設計]と[色指定]のチームワークは重要ですね。[色彩設計]は作品全体について判断していくのに対して、[色指定]は個々の実際の作画(原画・動画)を見ていくのですから。
こうして決めた色を指定してもらって、[彩色]に塗ってもらって、その塗り上がりを今度は[検査]が正しく塗り上がっているかチェックする。以上がだいたいの[仕上]の工程になります。で、そのOKなセルを[撮影]に渡し、撮ってもらうワケです。
と、まぁ、簡単に説明しちゃいましたが、次からはもうちょっと踏み込んでお話していくことにします。
■第2回へ続く
PROFILE
辻田邦夫 TSUJITA KUNIO
1963年4月19日生まれ。色彩設計・色指定として活躍。代表的な作品に『聖闘士星矢』シリーズ、劇場『DRAGON BALL Z』シリーズ、『おジャ魔女どれみ』シリーズ、『ご近所物語』、『花より男子』等がある。ご本人のHPは「kunion's cafe」(http://www.kunion.com/)。
(07.01.09)