僕が近年のジャパニーズ・アニメをとても高く評価するのは、それらがハリウッドで作られたアニメーションより、ずっと自由に演出家のパーソナルな特質を表現しているからだ。日本ではアニメーションがまさに監督の表現媒体であるのに対して、アメリカの場合はアニメーターのものだという気がするね。ほとんどの長編アニメ映画は、監督が誰であろうが同じような演出法で作られている。主に焦点が当てられているのは、キャラクターの芝居の多様性だ。
それぞれのアプローチには有効な特質があり、学ぶべきものはあると思う。僕は日本のアニメーションを通
じて、カメラワーク、編集、ストーリーボードについて、多くの事を学んだ。多大な影響を受けた監督としては、出崎統、りんたろう、川尻善昭、そして宮崎駿といった人達の名前が挙げられる。それに、庵野秀明監督の『THE
END OF EVANGELION』、幾原邦彦監督の『少女革命ウテナ』の2タイトルも挙げておきたい。どちらもメインストリームの観客向けに商業企画として作られた、とてつもなくパーソナルな作品だ。あんな実験的な作品がアメリカのマーケットから生まれるなんて事は、想像もつかないね。
注1:ビル・ティトラ Bill Tytla(1904〜1968)……本名ウラジミール・ティトラ。ニューヨーク出身のアニメーター・演出家。現役原画マン時代に向学のため渡欧し、パリで絵画や彫刻を学んだ。帰国後、ディズニーの『白雪姫』(1937)に参加し、『ピノキオ』(1940)『ダンボ』(1941)ではアニメーション監督の1人を担当。『ファンタジア』(1940)ではスーパーバイザーを務めた。ディズニーを去った後はTVシリーズ『ポパイ』(1956)の監督や、実写
とアニメをミックスした映画『秘密兵器リンペット』(1964)のアニメ部分監督などを手がけた。
注2:ロッド・スクリブナー Rod Scribner(1910〜1976)……ワーナーブラザーズで活躍したアニメーター。ハイクオリティな作画で知られ、テックス・エイヴリーやボブ・クランペットの作品で気を吐いた。時にオーバーアクトなほど躍動的なキャラクターの動作に、ピーター・チョンとの作画的共通
性も見て取れる。ラルフ・バクシ監督の『フリッツ・ザ・キャット』(1972)にも参加。