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熱烈再見『ギャートルズ』

第1回 本郷みつる(アニメーション演出者)
『はじめ人間 ギャートルズ』のこと

 私がこの作品を見るのは本放送(1974年)以来の事ですので、30年振りの再会になりました。久しぶりに鑑賞した『ギャートルズ』の印象は意外な程、子供の頃の見て、持っていた印象に近い物でした。簡単に言うと、○シンプルで○不思議で○面白い、になります。
 基本的なストーリーは、原始時代を舞台に「とうちゃん」「かあちゃん」と息子の「ゴン」、ゴンのペット兼友達の「ドテチン」。この3人と1匹が様々な、人や、モノノケや、神様や、天候や、季節や、マンモーや、ヒネモグラに遭遇する物語なのですが、このシンプルな設定が実に上手く機能しているのです。これは勿論、原作の持つ切り口の良さもあるのですが、それ以上に、1974年当時の東京ムービーに拠るところが大きいのです。
 東京ムービーはこの作品の前には『ど根性ガエル』、後には『元祖天才バカボン』という大ヒット作を放ったことからも分かるようにシナリオ、演出、作画が非常に充実していた時期にあたるのです。ムービーと関連する作画スタジオとして、スタジオ・ジュニオ、Aプロダクション、マッドハウス、ムービー社内班と、どのスタジオも脂の乗った勢いのある原画マンが気持ちよく仕事をしているのが画面から伝わってきます。『ど根性ガエル』の無茶苦茶、勢いのあるテンポ感とは180度方向性の違う、ほのぼの、のんびり、まったりした世界の中で、どの原画マンも一人当たり50カット程の原画を描いているのは現在の制作状況を考えると贅沢な話ですし、エンディングを見ると現在も活躍している上手い人達の名前があります(個人的な話で恐縮ですが、私は亜細亜堂という会社でアニメーションのキャリアを始めたのですが、その時、色々教えてくれた恩師達である芝山努さん、小林治さん、河内日出夫さん、山田道代さんの名前が、「この話数の作画は良いなぁ」と思った後にエンディングで見かけると嬉しくなってしまいました)。
 
 自分の本業である演出の部分に関して話すと、普通の人が見てこんなに伝わり易いペーソス・ギャグアニメというのは最近では見かけないし、ここまで完成度が高いものは、これからも作られないと思います。私がチェックした最初の頃ローテーションの主な演出は、吉田茂承、岡部英二、みくりや京助、坂本竜、波多正美、さきまくら、福富博とほぼメンバーが固定して且つ、半パートずつ担当するというやり方になっています。30分丸々1人で担当する作品と較べ、スケジュールが組みやすいので、絵コンテや作画の『ノリ』を早めに出せるという利点があります(それもこれも、スタッフのレベルが高いという前提での話なのですが……)。通常1クールを過ぎないと中々上手くいかない作品のノリを早い時期から反映出来ているのはそういった制作システムにもあると思います。

 といった変な予備知識なしで見て、『普通に面白い』アニメ、それが『はじめ人間 ギャートルズ』です(現代においては癒しの効果をもたらす可能性大です)。

●第2回に続く


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