「燃えつきた バラの肖像」
あっという間に11月も半ば。今年の年末も、お馴染みの「いろんなアニメを観ちゃおう大会」を開催します。日時は12月12日、場所はロフトプラスワン、詳しくはこちら。ただいま、企画を練っているところで、すでに決まっている上映タイトルは「『カレイドスター』和田高明作画名場面」と『ジャックと豆の木』。後者は「アニメ・アート・ビデオ・コレクション」シリーズのひとつで、監督を森本晃司が、絵コンテ・キャラクターデザイン・作画監督を福島敦子が担当した作品です。他の企画も決まり次第、報告します。
今週更新の目玉は「白川大作インタビュー」第2回「手塚治虫と『西遊記』」です。『西遊記』企画の成り立ちと、手塚治虫、石森(石ノ森)章太郎、月岡貞夫がどのように作品に関わったかが語られています。『西遊記』の絵コンテの詳細が僕にとっての一番の収穫でした。
さて、以下が本題。 一生観る機会がないかもしれない、と思っていたアニメを観る事ができました。『ベルサイユのばら』の「燃えつきた バラの肖像」です。今さら説明するまでもなく、TVシリーズ『ベルサイユのばら』は池田理代子の同名原作を、シリーズ前半を長浜忠夫が、後半を出崎統が映像化した歴史ロマンの傑作。1979年から80年までに全40話が放映されていますが、一部地方では24話で打ち切られており、その時に地方版最終回として放映されたのが、この「燃えつきた バラの肖像」なんですね。 このエピソードは、当然、東京地方では流されておらず、後に再放送も、ビデオソフト化もされていない。文字どおり幻の作品だった。その内容は総集編でありナレーションのみが新録音だったという説があり、あるいはメインスタッフと別のチームで作られた新作だという説もあった。僕は今までに何度か『ベルばら』の解説を書く機会があったのですが、そのあたりについては、おっかなぴっくり書いていたわけです。 で、最近、録画マニアの友達がそのビデオを持っている事が発覚したんですよ。ああ、灯台もと暗し。まさか、身近に持っている人がいたとは! 彼はちょうどビデオコレクションの整理中で、四半世紀も前のそのビデオがすぐに出てきた。早速そのビデオを観せてもらったんですが、まあ、これがびっくり、挿入される回想シーン以外は全て新作でした。物語は「首飾り事件」直後から、アニメシリーズの35話「オスカル、今、 巣離れの時」に相当する部分までを駆け足で消化。物語はオスカルとアンドレに焦点を絞っており、フェルゼンやアランは登場しません。アントワネットも冒頭で顔を出すのみ。 平民議員を排除する命令を拒否した事から、オスカルは父親のジャルジェ将軍と対立。アンドレが助けに入り、そこでのやりとりをきっかけにして、オスカルとアンドレが愛を誓う事になるのが、「燃えつきた バラの肖像」のクライマックス。途中にアンドレが無理心中を図り、オスカルに毒入りのワインを飲ませようとする展開もあり、比較的原作に沿ったものではあります。 とはいえ、あくまでダイジェスト的な内容で、ドラマ的には物足りない。また、演出や作画についてもTVシリーズのパワーにはとても及ばないもので、メインスタッフとは別のチームで作られたという説が正解でしょうね。スケジュール的にも、かなり過酷な状況で作られたのでしょう。でも、打ち切られる地方のファンに対して、制作的に無理をしても、主人公達の行く末を見せてやろうとした作り手(この場合はTV局サイドの判断か)の姿勢は、賞賛に値すると思う。 それにしても、このビデオが観られてよかった。次に『ベルばら』の解説を書く事があったら、胸を張って原稿が書けます。今まで僕が書いた「総集編だった」という原稿を読んだ方、ごめんなさい(言い訳をしておくと、一応、その原稿も裏をとって書いたものなんですが……)。ここで訂正します。「燃えつきた バラの肖像」は新作でした。
『ベルばら』つながりで出崎統監督の話題をひとつ。年末公開の『とっとこハム太郎 ハム太郎と ふしぎのオニの絵本塔』、来春公開の『AIR』に続く、出崎監督の新作が動いているようです。次はTVシリーズだそうですよ。詳しくは「出崎統公式ファンクラブ」の「今月の言葉」を。
[出崎統公式ファンクラブ]
http://www.toshima.ne.jp/~styou/
(2004/11/15)
|