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■animator interview
和田高明(3) |
小黒 さあ、いよいよ『カレイドスター』の話題に近づいてきました。
和田 確か『おじゃる』の「キスケの角」(第4期 20話)と、『フルバ』の平松(禎史)さんの話数(第八話・・・)をやっている頃に、『カレイド』のプロモを作ったんですよ。
小黒 2000年ぐらいですね。それが、ファンの誰も見た事がないという、謎のプロモーションですね(編注:パイロットフィルム的なもので、現在のところ一般には未公開。作画監督は渡辺はじめ。彼は原画として参加)。そもそも『カレイド』には、どんなかたちで参加する事になったんでしょうか。
和田 勿論、(渡辺)はじめさんから声をかけられたのが、きっかけです。はじめさんから、いきなり一番最初のそらの絵を見せられたのかな。それで「どう?」とか訊かれて。「うん、なんか変わってますね」「うん。今回(自分の)絵柄変えようと思うんだよね。やらない?」とかって。「いいッスよー」みたいな。それだけ。
小黒 なるほど。
和田 「じゃ、空けといて」と言われてから、何年空けてるんだか(笑)。その間は「始まるから、始まるから」と言われていたんで、まとまった仕事が取れない。(『カレイド』のプロモの)後に、単発の仕事がやたら多いのは、そのせいなんですけどね。
小黒 『カレイド』には、具体的にはどういう形で参加する予定だったんですか。
和田 最初から少数精鋭で作りたいみたいな事を言ってたんじゃなかったかな。「レイアウトを切りながら、演出っぽい仕事をやって」みたいな事を言われたような気がする。でも、その後、色々変わってるからね。
小黒 1話(初めての!すごい!ステージ)の原画は、和田さん、渡辺はじめさん、追崎さんの三人でやっていますよね。
和田 そもそも、韓国のスタジオと一緒に作るのが前提だったんですよ。最初はもっと向こうにお任せするはずだったんだけど、途中から第一原画は国内で仕切るというかたちに落ち着いていったように記憶しています。監督の佐藤(順一)さんの方に、微妙なラインを狙うというか、変わった事をしたい雰囲気があって。ある程度、その辺を理解してない人がやらないとダメだろうなというのがあったんじゃないかな。それまで参加していなかった人に、いきなり設定とコンテを渡してやってもらっても、普通のものしか上がってこないだろうから、どこかで(メインの)誰かが押さえた方がいいよ、みたいな考えがあったのかも知れない。それで(シリーズを通じて)一原を大体分かってる人がやるみたいな感じになった。
追崎 あっ、発言してもいいですか。
小黒 どうぞ。
※以下、追崎史敏が再び、取材に参加(國音邦生もちょっとだけ発言)。
追崎 1話の話に戻ると、今回(『カレイド』)は日韓共同制作という未知のスタイルだったので、時間をかけてゆっくり作ろう、という感じで始めました。また、それとは別に、完全オリジナル作品だったので、まずどういう作品かというスタイルを作ろうとしていたような……。
和田 本当は1話も「1ヶ月でやって下さい」って言われていたんだけど、2話のコンテがなかなか上がってこなかった事もあって、ダラダラやってたという気もしなくはない。
小黒 1話は何ヶ月ぐらいやってたんですか。
國音 半年は作画とか仕上げをやっていましたよね。
追崎 完パケまでだと、9ヶ月ぐらい。
和田 うん。結構ずっとやってたような。それから、1話って美術的な設定が何もない状態からやっていたんですよ。とにかく街並みから何から全部、自分達で作っていかなきゃいけなかった。まず、舞台が東海岸なのか西海岸なのかで揉めたからなあ(笑)。
一同 (笑)。
和田 佐藤さんは細かく設定を作り込む事には、あまり興味がないんだよね。どうでもいいわけではないけれど、「好きにすればいいよ」みたいな感じで。だから、レイアウト段階で作っていく感じだったんじゃないかな。時間があったおかげで作り込めたっていうのはあるけど。
追崎 作画作業が始まってから、和田さんの机の上に毎日毎日、アメリカ西海岸の資料が積み上がっていくんですよ。「今から何をやるのかな? この人」と思った(笑)。
和田 だって1話の冒頭でまず空港が出てくるじゃない。だけど、空港の設定がないんだよ(笑)。設定がなくて、「じゃあ、アメリカの西海岸の空港ってどんなんだ」というところからスタートして。「そこにどういう人が立ってるの、街並みはどうなの」とか、そういうところを作っていかなきゃいけなかった。空港から街中へ出てくるんだけど、空港から海岸へ行くまでにどんな街並みがあるのかを考えたんですよ。「きっと、こういう風景なんだろうな」というのを調べながら描かなきゃいけなかった。
追崎 1話のコンテって、芝居はキチンと描かれているんですけど、街並みや風景描写はあんなには描かれてないんですよ。あれはやっぱり全部和田さんが作ったものですね。
小黒 1話でそらが、カレイドステージに着くまでのアメリカの風景ですね。
和田 うん。美術さんに「レイアウトで床に野球の画が描いてあるんですけど、モデルあるんですか」と訊かれて、「一応、イチローがモデルだけど、これ自体の設定はないです。好きにして下さい」って感じ。
小黒 レイアウト描きながら、設定を作るみたいな感じですかね。
和田 設定というか「こういう世界なんだよ」というのを作りながらやっていたから。だから、レイアウト1枚を、すごく悩みながら描いてったような気がする。
小黒 あれはサンフランシスコというわけじゃないんですね。
和田 佐藤さん的に特定の場所に決め込みたくなかったみたいですね。何しろ最終話でいきなり朝日が海から上がってきますからね(笑)。
小黒 あ、そうか。
追崎 そういう制約に縛られない方がいいって事でしょう。
和田 あくまでも画的な面白さを追求するのであって、設定に細かくこだわる方向じゃなかった気がする。その辺は、実際には絵を描く段階で作っていく感じだったから。
小黒 細かい話は後で聞くとして、『カレイド』のお仕事について俯瞰して見ていきたいんですけど。仕事量としては、演出までやった7話、14話、22話、33話、41話が主だった仕事で、それがない時に原画をやってるという感じだったんでしょうか。
和田 多分、スタッフの流れを見ると分かるけど、『カレイド』は結構同じメンバーが繰り返し繰り返しやっているんです。限られた面子をフル活用という感じですよね。今週打ち合わせしたらまた来週打ち合わせね、みたいな。
小黒 特に後半そうですよね。
和田 そうそう。
追崎 それから一原と二原を分けるシステムだったので、国内の原画マンがやるのは一原だけなんです。一原をやるという事は、要はレイアウトを出したら終わりなんです(編注:レイアウトと同時に第一原画を描き、それを作画監督と総作画監督がチェックして、第二原画に回すシステムだった)、だから、原画マンも、レイアウトの戻りを待つ必要なく次の話数に参加できた、というのもあるんです。
和田 そういう特殊な作り方だったので、細かく参加できたというのもあるんだけどね。あとね、22話と33話の間が空いてるのは、ここで『(アニメーション制作進行)くろみちゃん2』が入ったから(笑)。「すまん、『くろみ2』をやんなきゃいけないんだ」と言って一度抜けたんだよ。『カレイド』が始まってからは、極力他の仕事は断っていたんだけど。
小黒 全力投球のお仕事だったわけですね。
和田 うん。そうでないと多分やり切れないだろうなというのが、あったからね。
小黒 どの辺りにやりがいを見出されたんでしょうか。「サーカスもの」というところですか。
和田 まず、話を聞いた時に、他にあんまりないタイプの作品かなと思ったんです。自分の趣味として、結構変わったものに惹かれるというのがあるんで。『カレイド』はそういう匂いが最初からしていて「あ、この作品にはちゃんとやる意味があるかな」というのがあったから。
小黒 『カレイド』は、最初から「ちゃんと動かそう」みたいな方向性は見えていたわけですか。
和田 主人公がスポ根ノリで、段々成長していくっていう部分があるので、むしろ、普通に動かそうとしていたところがあったんじゃないかな。1話は「ま、コイツ主人公だから」というので、ちょっと特別扱いで跳んだり跳ねたりしてるけど。最初は、あんまりアニメ的なハッタリの動きは使わない方向でやってた。要するに、普通の人間の動きの延長で動かそう、みたいな感じ。
小黒 それは皆さんの総意で。
和田 まあ、佐藤さんがそういう方向でやってたし、初めの頃は皆、そういう感じでしたね。動きの爽快感みたいなとこは敢えて抑えて、むしろ、筋肉の重さみたいなものを表現できればいい、というかたちで組み立ててたんだけどね。そうやっていけば、主人公が成長していって、最終的に空飛ぶような事になっても「ここまでがんばったんだから、飛べるよね」みたいなノリになるかなあ(笑)、と思っていたんじゃないかと。
追崎 確かに動きそのものは、普通のアクションでしたよね。
小黒 で、7話(笑わない すごい 少女)のディアボロバトルでしたっけ。あれはアニメ的なダイナミズムで描写されていましたよね。
和田 あれは、シナリオを読んだ時に困ったんです。あの話は2部構成なんですよ。Aパートで「(ロゼッタは)技術はスゴイんだけど、その演技はつまんないよね」というのがあって、それじゃダメなんだよ、というのが分かる。それでBパートで「(ディアボロの)もっと面白い見せ方があるんだよ」という事になる。でもそれを画としてどう見せるんだよというところで、かなり悩んだんです。その結果、Bパートについては、ああいうかたちにしたんですよ。ギミックを色々と考えて、空中ブランコみたいなものに乗ってディアボロをやる、というのも絵コンテ段階で考えたんです。だけど、あとで(ロゼッタが)ブランコ乗れないという設定が出てきて(笑)。
追崎 7話で入場の時に、空中ブランコそのものに乗っていますものね。
和田 「どうすんだよ〜」とか思ったんだけど(笑)。
小黒 なるほど。
和田 どうすれば、見た目に楽しいものになるかなと、色々考えてやった感じですね。
※ここで金子真枝も(何げなく)再び取材に加わる。
金子 和田さんは、ディアボロの技も発明してましたよね。
和田 だって、実際のディアボロは上げるか横に動かすかしかないから、アニメ的には面白くないんだよ。それで実際にはやらないような動きを考えて。
小黒 (ロゼッタのそらへの)「ホッペにチュ」はシナリオにあったんですか。
和田 「ホッペにチュ」はシナリオ上で、あったんです。
小黒 そうなんですか。
和田 シナリオでは、お別れの時に、ちょっと外国のマセた女の子風にチューする感じで終わってたんだけど。「やっぱりここは、盛り上がったところでチューだよな」と思って、あそこへ持って行ったの。最後はむしろ、あっさり別れた方がいいかなと思ったし。その時には、ロゼッタは最終回近くにそらのお手伝いに出てくるくらいで、他に出番はないはずだったので。
追崎 まあ、1ゲストでしたからね。
和田 そう、ただのゲストだった。「ゲストキャラだから、好きにやってもいいよな」みたいな感じだったんですよ。それがよもやクマのぬいぐるみ抱いて現れるとは(笑)。
追崎 それが主人公を食うとは(笑)。
小黒 まさかそれが主人公に……。あ、これはまだ言っちゃだめなのか。
一同 (笑)。
和田 今ではほとんど主人公扱い。この辺はシリーズの面白さですね。TVシリーズって、やっているうちに当初の予定とドンドン変わるんだよね。
小黒 7話は、ご自身でも納得できるものになっているんでしょうか。
和田 どうなんですかね。自分の作品って、いつも後で「2度と見たくねえ、パーン!(と机を叩く仕草)」みたいな感じになっちゃうからな。
小黒 じゃあ、細かく聞きますね。7話はテロップが「演出・作画」になってるんですよね。これはどういう事でしょうか。
和田 プロデューサーの内田(哲夫)さんに「コンテ、演出、作監、原画を全部載せますか」と訊かれたんですよ。『おじゃる』も最初の頃にそんな風に、名前がズラズラと出て、見た目が美しくない感じで。「要領よく、まとめちゃってよ」という事を言ったような気がする。要するに「作画一般を仕切ったから、役職は作画でいいんじゃない?」みたいな話をしたんじゃないかな。そこら辺は、正確に覚えてないけど。
小黒 7話に関しては、一原を全部描いた感じなんですか。
和田 どうだったかな。いつも描こうとして、描き切れなかったりするんだけど。極力時間があれば描く、という感じで。……いや、あのチューのところは、手をいれられなくて、泣く泣くそのまま通したんですよ。DVDの時に描き直したんだけど。
小黒 えっ! 直ってるんですか。
和田 直しましたよ。(TV放映の時は)時間がなくなってシートだけ直してたんですよ。「ちくしょう!」とか言いながら。
小黒 あそこは一原も描いてないんですね。
和田 一原も描いてない。直したかったんだけど、元の人の描いたものがそのまま通って。でも、全部描き切れたっていうのは滅多にないけどね。
小黒 『カレイド』以外で、今まで1話分を描き切れた事ってあるんですか。
和田 『だぁ! だぁ! だぁ!』が1本と『こどものおもちゃ』が1本って感じですかね。『こどものおもちゃ』はさっき言った17話で、『だぁ! だぁ! だぁ!』は宇宙人のおネエちゃんが出てくる話数だったかな(28話「西遠寺にシスター来る」)。
追崎 『カレイド』だったら、33話(汗と涙の すごい ロゼッタ)が和田さんが一番やり切れた回ですよ。原画さんの動きをそのまま使ったカットもあるけど、最後までやり切れたんじゃないですか。
和田 どうだったかな、33話は最後の学校に行ってからのシーンを最後に残していたんだけど、時間がなくなって。
金子 スケジュールがかなり押してましたよね。
和田 時間がなくなって、「バウンドボールなんて、やらなきゃよかった」と思った(笑)(編注:33話に子供達がロゼッタにバウンドボールを習うシーンがあり、これもかなり動いている)。
追崎 でも、ちゃんと手を入れていたじゃないですか。
和田 まあ一応ね。でも、あの辺はちょっと……。今となっては「ま、そんな事もあったよね」みたいな(笑)。
金子 でもあの回は、監督もほとんどコンテを直さなかったですよね。
和田 うん。
小黒 いきなり33話の話になっちゃいましたけど、7話から「ロゼッタ当番」になって現在に至るわけですよね。これは自ら望んだ事なのか、それとも周りが……。
和田 今、そこにやってきた池田プロデューサー(編注:取材中に池田PDが顔を出したのだ)が「ロゼッタって言えば、和田さんだよね」と仕込んでいったような気がするけど(笑)。
追崎 和田さんだって「やるんだったら、ロゼッタかな」みたいな事を言っていたじゃないですか。こっちは、別の話数も振ろうかなと画策したんだけど。
和田 みんなと話してるうちに、そういう感じになっていった、みたいな事はあるけど。
小黒 45話「レオンの すごい 過去」でもロゼッタが、いきなりディアボロを始めるところをお描きでしたよね。
金子 それは自分が進行だったので、「和田さん、40カット、お願いします」って。
和田 そうそう。
小黒 そういうのって、制作進行が決めていいものなの?(笑)
金子 ちょうど41話が終わってて、和田さんの手が空いていたから「お願いします」って。
和田 「ありますよ、これ」とか言われて「やりゃあ、いいんでしょ」みたいな(苦笑)。
金子 「ディアボロは、和田さんしか描けないんで」と言って。
和田 ディアボロ自体、初めての人には説明しなきゃいけないというのがあったんです。説明して理解してもらう手順を踏む時間がないっていうのがあったな。
小黒 ロゼッタのディアボロって、和田さん以外描いた事ないの?
和田 そんな事ないですよ。玉川(達文)さんも描いてますよ。
追崎 でも、主だったものは、全部和田さんですね。
和田 単純に振り回すとかはいいんだけど、長回しでやるのは(慣れてない人だと)無理かな。佐藤さんが、長回し好きなんですよ。5秒間ずっとやってる、とかね。
小黒 各話の話に戻りますね。14話(怪しい すごい サーカス)は演出だけなんですね。
和田 そうですね。まあ、演出といっても『カレイド』の場合は「演出」と書いて「原画」と読むんですけど(笑)。
小黒 あ、そうですか。
※ここで堪らず、池田プロデュサーも取材に参加。ほとんど座談会のノリに。
池田 いやいやいや、まあまあ(苦笑)。まあ、半分合ってますけど。
小黒 和田さんの場合は、そう読むんですね。
和田 『カレイド』では自分だけでなく、演出家が画的なところまで仕切る場合があったんですよ。
金子 14話では、和田さん、酒飲みながらやっていたんですよ。
小黒 何なんですか、酒飲みながらって。
和田 この頃は『カレイド』のペースがなかなかつかめなくてね。今でこそ1週間帰らないとかが普通になったけど(笑)、この頃はまだ慣れてなかったからね。「酒でも飲んで勢いつけるか」みたいな。あるいは「ユンケルを5本空けるか」みたいな。
金子 33話でも、ユンケルいっきに4本飲んでいましたよね。
和田 (笑)。
追崎 「33話は終わらないかもしれない」とか言いながら。
金子 あんなに弱ってる和田さんは初めて見た。
和田 ちょうどその頃、『カレイド』の壁にぶち当たってる感じだったんだよ。スケジュールはないんだけど、佐藤さんの要求がどんどん高くなってきたから。佐藤さんも、スケジュールがキツイからって手を抜くというタイプじゃないんだよね。「やりたい事はやるから」みたいな感じで。だから、こちらは「困ったな、時間ないんだけど。どうしよう」って事になる。その頃はまだ「せめて2日に1回は帰ろう」と思っていたんだけど、33話あたりで「やめた、帰るの」と思ったような気がする(笑)。「いいの、終わるまでここにずっといるから」ってね。着替え一式を持ってきて、完全にここに住み始めた。
小黒 いいんですか、そういう話載せちゃって。
和田 いいんじゃないですか、別に(笑)。
金子 本当にお風呂だけのために家に帰ってましたよね。「ちょっとお風呂入りに帰るから」と言って、何時間後かに戻ってきて。
和田 それと、ビデオのタイマーをセットして戻ってくるんです。
小黒 ここは、この話の泣けるところでしょうか。
和田 いや、「バカだね」と笑って下さい(笑)。
小黒 いえいえ、バカじゃないですよ。多分41話(再出発の すごい 決意)が、集大成じゃないかと思うんですけども。
金子 私もそう思うなあ。
和田 41話が集大成なのかなあ。……というか、41話って何の話だっけ?(笑)
小黒 えー!? そらが日本に帰ってくるところから始まって、カレイドスターの建物の掃除とかをして……。
和田 ああ、あれね。今、俺は52話の事(編注:制作中の『カレイド』の新作OVA)で、頭の中でグルグルしてるから(笑)。まあシリーズ全体としては、話がいよいよラストに向けて動き出すところだから、「力入れなきゃ」みたいなところはあったのかな。
金子 41話は、他の話数よりはスケジュールありましたしね。
和田 うん。それから「正月帰らないから」って初めから決意したしね。
小黒 泣けるなあ。
池田 はじめさんと追崎君は「正月は帰る」って公言してたから(笑)。
和田 俺は正月に帰らないで「正月期間で、なんとかスケジュール調整するから」みたいな感じで。
國音 セブンイレブンのおせちを注文するかしないか、という話をしてましたよね。
金子 あ、そうですよね。
和田 ああ、したした。セブンイレブンの1万円のおせちを買ってね。1人でモシャモシャ食ってた(笑)。
小黒 え、元旦も会社にいたんですか。
和田 ずっといましたよ。
小黒 (金子さんに向かって)君は?
金子 うーん、ちょっと……。
和田 いいよ、別に。そこは責めたりしないから。
金子 最初は「一緒に年越しましょう」とか言ってたんですけど、「自分は、なんか休めるみたいなんで、休んどきます」と言って、実家に帰ってしまった。
和田 「じゃ、またねー」とか言って、スーツケース引っ張りながら君が去っていく後ろ姿は、いまだに瞼に焼きついてるよ。
一同 (笑)。
和田 俺は「いいな。帰るんだ。ふーん」とか言いながら。
小黒 しまった、ここで「一緒に年越しましたよ」という話になって、盛り上がるところだと思ったのに!
金子 ああ、ごめんなさい!
一同 (爆笑)。
和田 41話は年末から正月明けまでフルに使ってやったんですよ。これからのプロットとかシナリオを読んでいるから、後の話の伏線が沢山ある事も分かっていたし、話的にはここで盛り上がらせないでどうするって感じですよね。いきなりレオンがキレるしね。隠しキャラのソフィもここで出てくるから。でも、ソフィ、設定がまだなかったんだよな(苦笑)。
追崎 そうそう。
和田 「出てくるんだけど、設定がないんだよ」とか言われて。「じゃ、とりあえず長髪でスカート長めって事でいいですね」と、はじめさんに訊いたら「いいよ」って言われて。
小黒 で、それに後で渡辺さんの修正が入ったんですか。
和田 いや、この時点では設定は何もないんで、修正も入らなかった。
追崎 その話数は、シルエットしか出てこなかったから……。
和田 「後でショートになっても、俺は知らないよ」と言って描いて。極力フレアーを思いっきりかけてキャラを見せない方向に持っていった。
小黒 作画マニアの間では、41話が評価が高いと思うんですよ。タイミングもシャープになってちょっとリアル系寄りになったと。
和田 要するに、時間があったって事かな。
小黒 そうなんですか(笑)。簡単ですね。
和田 時間があれば、じっくりタイミングを考える時間があるんだけど、ない場合はとりあえず変に見えなきゃいいかなという感じで、パッパッパッと勘でシートをつけちゃうんです。それでちょっと荒くなってしまうんですよ。
追崎 和田さんのやり方って、基本は実写映画なんかを見て、参考になる動きを全部チェックするんです。要するに1枚1枚プリントアウトするんですよ。「見て描くロトスコープ」みたいなノリで。だから動きとか芝居自体がそういう感じになるのかなと。
小黒 ちょっとリアクション多いですよね。多分ね、前からそういうきらいはあったと思うんですけど、よりシャープになったかな、というのが41話で。
和田 まあ、『カレイド』の場合は作品的にそういう方向かなと思って、意識してやってたというのはあるから。
小黒 評論家っぽく言うと、41話の終わりの方の、そらとレオンが転がり落ちていくところなんか、カッティングのスピーディな感じと作画の一体感が素晴らしいな、とかね。ドラマとテクニックがマッチしているし。
一同 (笑)。
和田 あそこを最初に描いたんですよ。あの辺は、レオンがいて、そらがいて、それを横で見ていたメイがいて、別々だった3人がそこで方向性が一緒になる。初めて3人が一緒になったかな、みたいな感じがあったから、「ここは盛り上げよう」と思っていたんだよね。それまですれ違ってばかりだった3人が、最終回に向けて、同じ方向を向き始めた、と。それを強引に画で見せてしまおうという狙いで構成した覚えがある。
●「animator
interview 和田高明(4)」へ続く
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