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村濱章司インタビュー
 「プロモーションビデオと競合できる作品を」(2)
小黒 今、G.D.H.グループでは、一方で、クリエーターズ・ドット・コム(注6)という会社を立ち上げて、インターネット上での、Webisode(注7)の配信やクリエイター育成を手がけられようとしていますよね。ああいうものは、村濱さんの中では、アニメ制作と同じフィールドのものなんですか。
村濱 いいえ、あれは全く別の事業と考えてください。ゲームとアニメ、あるいはアニメと漫画ぐらい違うと思ってもらった方がいい。プロデュースしている人間も、ディレクションしている人間もアニメとは違いますから。あれについては、将来性はあると思っているので、これから頑張っていきたい領域です。
小黒 ゆくゆくはああいう映像がアニメと融合して、という事も考えているんでしょうね。
村濱 いや、将来的にああしたショートムービーが、アニメーションの市場と直結するのか、あるいは全く別の市場を作っていくかは、現状ではちょっと分かりません。
小黒 そうなんですか。意外ですね。
村濱 ええ、始まったばかりですからね。もしかすると、独自の進化を遂げて、違った市場を形作るかもしれませんし、商業アニメーションの登竜門のようになるかもしれない。あるいは、漫画原作的な位置づけになるかもしれません。それは今後の頑張り次第だと思ってます。
小黒 なるほど。じゃあ、G.D.H.の今後の目標は。
村濱 やっぱり、ハイティーンから20代の若い人達が観てもいいなと思えるものを狙うと同時に、片方で20代、30代の現役のアニメファンが確実に観てくれるような、そういうものも作っていきたいですね。それから、『ゲートキーパーズ』や『VANDREAD』で、私達を支持してくれたお客さん達にさらに楽しんでいただけるようにしていきたい。 実は今、OVA2本、映画3本くらいの企画が平行して動いているんですよ。TVシリーズの企画も3本くらい進めているんです。
小黒 じゃあ、かなり積極的にビジネスを進めている状態なんですね。
村濱 はい。いつ公開です、とは言えないのがつらいんですけど、期待してください。
小黒 技術的な話をうかがいたいんですが。『ゲートキーパーズ』は、エフェクトやデジタルによる色替え等を多用して、巧い効果を上げていましたよね。さらにシリーズ後半になると、それが洗練されていった印象があります。なるほど、こういうかたちでTVのデジタルアニメーションは成熟していくのかなって思いました。
村濱 ありがとうございます。それは、今までアグレッシブに技術開発していって、ようやく現場にノウハウが溜まってきたという事だと思うんです。単純にアニメーションの制作過程をデジタル化しただけではなくて、デジタル化されたプラットフォームの中で何ができるかという事について、現場の人達が試行錯誤して頑張った成果が、ここにきてようやく出てきたように思います。
小黒 と言うと?
村濱 勿論、一個一個のソフトウェアを使いこなせるようになったという事もあるんですけど、クリエイターのレベルでのコミュニケーションが上がった結果だと思うんです。
小黒 コミュニケーションの成果……。つまり、この技術を使ったからよくなりました、という事ではないわけですね。
村濱 そうです。例えば、素晴らしいエフェクトを生み出すフィルターがあったとしても、誰も知らなければ、宝の持ち腐れですよね。演出家に対して、技術者がこれがどんなに凄いフィルターかという事を伝え切れなければ、画面に採用されないわけです。そのあたりの、応用力とコミュニケーション能力が上がって、いい方向に働いてるんじゃないかと思っているんです。
小黒 なるほど。今は、同じフロアに演出や作画やCGのスタッフがいるわけですか。
村濱 いえ、フロアは違います。ただ、各フロアがLANでつながっていて、メールや社内BBSを使って、色々とやりとりしてます。
小黒 社内BBSですか。それは凄い。具体的には、どんな事がやりとりされているんですか。
村濱 そうですね……。例えば、BBSには、会社への不平不満とかが書いてあります(笑)。
小黒 (笑)作品の内容についてもやりとりされるわけですよね。
村濱 勿論です。あのカットのフィルターはどうしましょうか、というような事がやりとりされています。BBSに書かれてあるフィルターナンバーをクリックすると、リンクが張ってあって、そのフィルターにアクセスできるようになっていたり、そのカットの静止画にアクセスできるようになっていたりするんです。
小黒 ほほお。
村濱 アナログの撮影の熟練した技術っていうのは、伝えるのが難しいと思うんですが、デジタルだと、他のカットの画面作りのノウハウを真似たり応用したりする事が比較的早く確実にできるんです。『ゲートキーパーズ』の後半は、そうした積み重ねが、上手くいった例だと思うんです。
小黒 なるほど、技術だけの問題ではない。
村濱 ええ。コミュニケーションと、技術の応用が大事だと思います。
小黒 ところで、G.D.H.は――あるいはアニメは、でも結構なんですが――今後どういった事をやっていこう、いくべきだ、とお考えでしょうか。
村濱 うーん……。G.D.H.で言うと、みっつありますね。まず、ひとつは、新規の層を開拓するにしろ、既存の人達に向けて作るにしろ、観てくれる人のニーズを確実に捉えていく事ですよね。作品を作ったら、より多くの人に観てもらいたいですから、そうした観てもらえるような仕組みなり、仕掛けを作っていきたい。これはさっきもお話した事ですよね。ふたつめは、それを海外に発展させていきたい。最後に、やっぱりインターネットですかね。今、『ゲートキーパーズ』には「www.gate-keepers.com」というサイトがありますし、『VANDREAD』には「www.vandread.com」というサイトを開いています。そうしたところで、お客さんに対するアフターサービスのような事をやっているんです。これは、作りっぱなしじゃなくて、観ていただいたお客さんに対するフォローアップを一所懸命にやるようにしたいからなんですよ。要するに、既存のアニメファンの方々と、これからアニメファンになっていただく方々のために、どれだけサービスを提供していけるかという事を考えたいんです。既存のアニメーション制作会社っていう枠組みを越えて、そういう事を考えていきたいと思っているんですよ。
小黒 なるほど、言い換えるなら、作りっぱなしではないアニメーション制作をやりたい、という事なんですね。
村濱 そうですね。作るだけではなくて、マーケティングやプロモーションに関しても考えられているような、そんな会社にしたいんです。その上で、将来的には、デジタルコンテンツの総合的なサービスを提供する会社っていうところに脱皮していきたいなって思っています。
小黒 つまり、その一環としてアニメーション制作もある、というかたちにしたい。
村濱 そうです。今は、勿論、それがメインなんですけど。
小黒 ああ、それは新しい。アニメーションとデジタルコンテンツの融合という事をみんな、考えていると思うんですが、ひとつの望ましいかたちを目指しているのかもしれませんね。
村濱 ありがとうございます。私達はお客さんが楽しんでいただければ、TVでも、ケーブルでも、衛星でも、パソコンでも、携帯電話でも、メディアはなんでもいいんです。今までとは、ちょっと違ったメディアの中で、どれだけ自分達のサービスを提供できるか、お客さんに楽しんでいただけるか、という事を考えて、新しい物を生み出していければと思っています。
小黒 メディアにはこだわらないわけですね。……例えば、ちょっと前だと、映画が一番メジャーで、ビデオになるとマイナーという意識があったと思うんですが、村濱さんはどうお考えなんですか。そういう意識はあるんですか。
村濱 ありますよ。今、事実そうですから。ただ、来年や再来年にはメディアの状況がどうなってるかは分からないですよね。だからと言って、将来の事ばかり考えて、むやみやたらに新しいメディアに攻め込むのも問題だと思うんです。かといって何の準備もしないのもいかがなものか、と。だって、発展するのは火を見るより明らかなんですから。
小黒 そうですね。
村濱 だからといって、短期的な戦略を放棄してはいけないと思うんです。ゆくゆくは、インターネットとTVって融合していきますよね。それは間違いない。でも、それがいつになるかは分からない。だから、そういう事に関して準備は常にしています。でも、来年、再来年といった目の前の戦略を疎かにしたら、会社が成り立たない。準備は怠らないし、新しいところに攻め込みたいと思ってます。でも、それが全てではないんです。
小黒 そういう事もあって、当面はビデオ作品なり、劇場作品を中心に考えているというわけですね。
村濱 ええ。ビデオのよさというものもあります。『青6』のような無茶な企画ができる(苦笑)。無茶なコンセプトにとっては、達成するための予算がある程度あって、劇場ほどリスクのない、ビデオというメディアは凄くいいんです。だから、G.D.H.はビデオを常にやり続けると思います。TVはもっとコストの低いもので、エンタテインメントを提供する場でしょう。それから、劇場映画は、ビデオよりは商売として見えるものをやりたいんですね。制作にも資金回収にも長い期間がかかりますよね。ですから、長くやっても飽きられない、古くならないものをやりたい。10年、場合によっては20年は保つようなものを。ビデオはとりあえず無茶でも通しちゃう(笑)。
小黒 なるほど。最後に、GONZOなり、G.D.H.なりのアニメーションのコンセプトを一言で言うと、何でしょうか。
村濱 そうですね。「アグレッシブ」っていう事ですかね。

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(注6) クリエーターズ・ドット・コム
インターネットにおけるクリエイターの発掘、配信、ライセンス管理を目的として作られた会社。
[ http://www.2000creators.com/indexA.html ]
(注7) Webisode
Webとepisodeが合体して生まれた造語。フラッシュやショックウエーブを使ったショートアニメ等、web用のアニメやゲームを指す。詳しくは以下のサイトを参 照
[ https://www.2000creators.com/jp/c-information/webisode.html ]
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