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村濱章司インタビュー
「プロモーションビデオと競合できる作品を」(1) |
『青の6号』『メルティランサー The Animation』『ゲートキーパーズ』『VANDREAD』とCGを大胆に取り入れたアニメーションの意欲作を立て続けに生み出しているG.D.H.は、企画制作のGONZO、CG制作のディジメーションのほか、インターネット上のクリエイター輩出を狙ったクリエーターズ・ドット・コム等で構成された、アニメーション制作をコアにしたグループ。来るべきデジタルコンテンツの時代を見据えた進取の気性と、アピール度の高い作品を作ろうとする意欲を兼ね備えた業界のパイオニアである。
今回は、GONZO代表取締役であり、G.D.H.代表取締役CEOである、村濱章司に、G.D.H.グループの現在と今後をうかがってみる事にしよう。
取材/小黒祐一郎
構成/小川びい
2000年11月8日 G・D・H
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村濱章司(Murahama Shoji)
GONZO代表取締役、G.D.H.代表取締役CEO。1964年生。大阪府出身。1987年ガイナックス入社。映画『オネアミスの翼』の制作に参加。『ふしぎの海のナディア』のアニメーション・プロデューサーを経て、ガイナックス退社後、1992年9月、前田真宏、
山口宏、樋口真嗣とともにGONZOを結成。2000年2月にG.D.H.を設立し、代表取締役に就任。
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小黒 G.D.H.グループが、現在どういう仕事をしていて、今後、どういうかたちでアニメに関わっていくのかというお話をうかがえればと思います。
村濱 はい。
小黒 G.D.H.(注1)は、あるいはGONZO(注2)は、今、どういうスタンスでアニメを作ってらっしゃるんでしょうか。技術面と内容面とからお答えいただければと思うんですが。
村濱 まず、技術面から言えば、これまでフルデジタルでアニメを作ってきたわけですが、その技術を核にして、成熟の度合いを増していければと考えています。特に、『青の6号』(注3)で得られた技術を『VANDREAD』(注4)等に応用していく事で、単に今までのアニメをデジタル化するだけではなく、デジタルならではのアニメのスタイルを確立していければと思って、頑張っています。
小黒 内容の面では?
村濱 そうですね、『ゲートキーパーズ』(注5)や『VANDREAD』を観ていただいても分かるように、所謂「なんとかもの」と呼ばれるようなものには、できるだけしないようにしているつもりなんです。
小黒 つまり、ロボットものや魔法少女ものといったようなジャンルものにはしない、と。
村濱 ええ。既存のジャンルの中で作るのは、そうしたジャンルを作られた先輩方にお任せする事にして、我々は我々なりのスタイルで作りたいと思って、模索しているところです。既存のスタイルにはしない、と言うのは、我々が最も重きを置いているところですね。技術の面にしても、内容の面でも。
ただ、逆に目新しさばかりを狙ってしまうと、お客さんから観て、わけの分からないものになってしまいかねないので、そのあたりはあまり先を急がないように、お客さんが何を観たいのか考えながら、企画開発していきたいと思っています。
小黒 今のところは、アニメファン向けを狙ったカテゴリーの作品を作られていますよね。
村濱 そうですね。私としては、観ていただけるお客さんが、既存のアニメファン半分、新規半分となってくれれば、というのが目標です。つまり……既存のアニメファンのためにも作っています。でも、そうじゃない人にも面白く観てもらえる工夫はしていきたいな、と思っているんです。その点について言うと、実は、私達より下の世代というのは、ほぼ全員が、一度はアニメファンだった事があるんじゃないでしょうか。『ポケモン』ブームを見ても分かるように、子供の時にアニメを観て好きだった時期が必ずあるんですね。そういう人達にまた観てもらえるようなフックのある企画が作れれば、と思っているんです。そういう意味では、アニメファンとそれ以外という考え方はしていなくて、今のコアなユーザーと、かつてアニメファンだったけれど離れてしまった人達に向けて作っているつもりです。
小黒 これは『青6』の印象が強いからかもしれませんが、GONZOは、基本的にはアニメやマンガのテイストを残しつつも、どこかアートっぽいというか、イカした方向を目指している、という印象がありますね。
村濱 それは誉め言葉として受け取っていいんですよね?(笑) 基本的にサービス精神は忘れないでいきたいと思っているんです。でも、現場に素晴らしいクリエイターの方々がいるから、それでアーティスティックに見えるんじゃないでしょうか。
小黒 かつてアニメが好きだった人を取り込みたいとおっしゃいましたけど、何か秘訣のようなものはあるんですか。
村濱 今、小黒さんが言われた、ちょっとアーティスティックに、という事もそうなんです。カッコいいな、目新しいな、と思えるところが1ヶ所でもあれば、コアなユーザー以外の方にも観ていただけると思うんです。例えば『青6』ですと、3DCGが入っていると聞けば、かつてアニメファンだった人が、「最近のアニメって変わったんだ」「こういう事をやっているんだ」と思って観てくれる。アニメって、どこかルーチンに見えてしまうところがあるし、特にシリーズ化されると、時として焼き直しにすら見えるところがありますよね。そういうところに飽きて離れていった人も多いと思うんです。そんな人達に向けて、ちょっと気になるなと思ってもらえるような、他とは違うポイントをきちんと出していく事は凄く重要じゃないかと思ってます。 あとは、当たり前ですけど、クオリティが高くて面白いものを、きちんと作っていける、スタッフ編成や体制づくりをやっていく事ですね。
小黒 今、当面の悩みみたいなものはありますか。
村濱 うーん。『青の6号』『ゲートキーパーズ』『VANDREAD』と、それぞれ野心的な企画だったと思うんです。そういうものをやってきて、ある意味、自分達のポジションのようなものができてきたところで、次にアグレッシブな、カッティングエッジ(先鋭的)なものを作ろうとすると、今まで以上にエネルギーが要るんですね。今までは好き勝手にやってきたんですけど、これからは期待もされるんで、そういうプレッシャーがあります。
小黒 これは、悪口だと思わないで欲しいんですが、GONZOの作品というのは、ドラマやテーマよりも、ビジュアル優先という印象がありますね。『青6』の3DCGと従来のアニメとの融合もそうですし、『メルティランサー』のデジタル技術をふんだんに使った特殊効果にしてもそうでしょう。勿論、お話がつまらないという事ではないんです。ただ、グループ自体がビジュアルへの指向性を強く持っているんじゃないかな、と思うんですよ。
村濱 そうですか?
小黒 ビジュアルはそんなに尖っていなくとも、人を感動させる事に重点を置こう、という作り方もあるわけですよね。例えば――技術的にダメだと言っているわけではないんですけど――『ドラえもん』なんかが、その典型ですよね。その対極にあるんじゃないですか。
村濱 確かにサービス満点、って感じですかね(笑)。我々が目指しているのは、ある意味では、プロモーションビデオを観ているような人達なんです。ああいうものと競合できるような作品を作りたい。アニメファンって、『ヤマト』世代、『ガンダム』世代、『マクロス』世代、そして、多分、今『エヴァンゲリオン』世代と縞状に離れてあると思うんです。その人達は、毎年毎年ひとつずつ歳をとって、市場が上の方にスライドしていくわけですよね。その過程で、そこを卒業していく人達がいるわけです。そんな中、私達としては、10代、20代のアニメファンを作っていきたいし、アニメファンになっていただけるといいなって思っているんです。そういう人達をターゲットにするには、プロモーションビデオにも対抗できるように、サービス満点に作っていこうとするところはありますね。
小黒 つまり、音や映像をサービス満点に作っていこうという事ですね。
村濱 ええ。お話に力を入れないわけではないんですが、そういうところは他にもたくさんありますから、それとは違っていてもいいのかな、とは思います(笑)。
小黒 実際にミュージッククリップを作るような事はしていないんですか?
村濱 少しはあります。最近も相川七瀬のプロモーションビデオに関わりました。
●村濱章司インタビュー(2)へ続く
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